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27:白いイタチ
尻尾爆発スクリュートというトンデモ生物にそういやこれだったな、と考えるヘンリーは世話のために触れようとして、マルフォイに止められる。こんな生物、ヘンリーが触れるのは危険だということらしい。大丈夫だよ、と笑うヘンリーだが、自業自得とはいえ去年の怪我がよほどこたえたのかもしれない。
「なんの役に立つんだかね、こんな生き物」
クラッブとゴイルに世話を任せるマルフォイは、まともな授業はできないのかとつぶやく。声を潜めるでもないその言葉にハグリッドがうろたえるが、お構いなしだ。有効利用については次の授業というが、そもそも教える側が知らない生物を育てること自体まずいのでは?とヘンリーはじっとスクリュートを観察することにした。
ルーナが言っていた、魔法生物の権威である男性……確か教科書を作った人に聞くか、その人でさえ知らないのであれば世話をすること自体が間違いな気もする。
闇払いとして標的となった相手の家に乗り込んだ際、危険生物が仕掛けられたりしていることもあり……標的が逆に襲われている場面も数多く見てきた。上司がこんな魔法生物誰がすきこんで育てるんだ、と駆除しながら文句を言っていたこともあり、ハグリッド実は結構危ない人では?と半巨人ならではの危険を好む思想に接点が少なくなったこともあって、手紙のやり取りすら減っていた。
「魔法生物学ってあまり役に立つ情報が少ない気がするな」
思わずぼろ、と出た言葉にドラコが賛同し、聞こえていたらしいハリーが睨んでくる。だって、本当にそう思うんだよ、と口に出さないヘンリーは尻尾が爆発したことに驚くパンジーを見る。その前にディーンが襲ってきたと言っていたあたり、確かに手を出すのは危険で、パンジーは速やかに離れていた。
「あ、夏に練習で作った薬でやけどのあるよ。魔法薬のことでスネイプ先生にこの後持っていくところだったから……あぁあったあった」
カバンの中に入れていたはず、と探るヘンリーが小瓶を取り出すと、パンジーの指先に一滴垂らす。しゅわっという音ともにやけどが消え、ありがとうとパンジーが手を握る。
「女の子の手に傷遺すわけにいかないからね」
役に立ててよかった、というとますますハリーらからの視線が痛い。
「夏休み中も製薬していたのか。それにしてもこういう時にでさえ、治療も加点もできないなんて、ほんとお粗末な授業だ」
ヘンリーが薬を自ら作れるようにとしていることはスリザリンでは知られていることで、スネイプとの仲の良さも知っているだけにスリザリン側はさすがとしか言えないという。
ほんと去年から何も変わっていないというドラコに、ハグリッドははっとしたように慌てて2点をあげようという。当然だ、という顔のドラコは鐘が鳴るとさっさと昼食に行くぞ、とヘンリーを連れて行ってしまう。
数占い学でたまたまハーマイオニーの隣に座ることとなったヘンリーは渡された手紙をちらりと見ると、羊皮紙の切れ端に返事を書いて終了間際に渡す。一瞬あった視線で笑いあうとヘンリーは少し用事があるとどこかに消えていった。
もともとの行き先が同じであっても、一緒に行動するわけにはいかないヘンリーなりの気遣いに、ハーマイオニーは小さく息を吐いて大広間に向かった。
ハリー達がげんなりしている顔を見て、課題なんて出されなかったわと言い、ハリーにこれと言って手紙の返事を渡す。大広間に入るための列を待っていると、預言者新聞を手にしたドラコがロンの一家について馬鹿にしだし……カッとなったロンと口論になる。
ぐるりと遠回りしてきたヘンリーが玄関ホールに入ると、ちょうど魔法を外したドラコがいて、ムーディが杖を振った。
「卑怯者め!」
そういいながらドラコ……白いケナガイタチを持ち上げては叩きつけるムーディにヘンリーははっとして、残りの階段を駆け下りる。騒ぎを聞きつけたマクゴナガルが現れムーディがこともなげに言う横からヘンリーが滑り込み、バウンドするイタチをつかむ。
地面に当たらないように抱き込むヘンリーだが、持ち上げられた際に一緒に浮いてしまい、ヘンリーに気が付いたドラコが何かと訴えるようにキーキーと鳴く。マクゴナガルが慌てて変身術を解くと一緒に浮かす呪文の切れたのか、塊になって床に落ちた。うわぁと折り重なるヘンリーとドラコに、あぁセブルスすみませんね、とマクゴナガルが頭を抱える。
ヘンリーに乗っかる状態のドラコは顔を真っ赤にして、後ずさりして座り込み口元を抑えた。その様子にハリーの口から声にならない叫びが零れ落ち、ハーマイオニーが大きくため息を吐いた。
「いたたた……。ドラコ、だいじょうぶだったかい?」
顔がぶつかってちょっと唇切れたかも、というヘンリーは立ち上がるとまだ座ったままのドラコに手を差し伸べる。様々な衝撃からまだ戻っていないドラコの手をつかむと引っ張り起こして杖で埃を掃った。
知らない私は何にも見ていない、という風のマクゴナガルは元凶のムーディに罰則は生徒が属する寮監に話すものだと言い渡す。
「ちょうどおまえにもスネイプにも話したいことがあったんだ。いいか、お前の親父殿に言うがいい。わしがお前の息子を見張っているとな。ではお前たちの寮監スネイプのもとに行こうではないか」
さぁ来いと言いながらドラコを引っ張るムーディの魔法の目がヘンリーに向くが、ヘンリーはそれに気が付いていないふりをして唇をぬぐってやっぱり切れているとつぶやく。その様子にもしやセブルス以外の異性にはまるで無頓着なのでは、と義母の頭がズキズキと痛みだした。
そしてその日の夕食、終わりごろにやってきたスネイプはネビルが怖気づいてひっくり返るほどの不機嫌さをまとっていた。女子生徒が持っていた唇が切れた時用のクリームを塗ってすっかり治ったヘンリーは同じころに入ってきたドラコの疲れ切った様子に首を傾げ、いつもとは逆にこっちだよ、と確保していた隣を勧める。
その様子をぎろりと睨むスネイプに幾人かが悲鳴を上げ、スリザリン寮のテーブルはいつも以上に静かに残りの時間を過ごすこととなった。
そうだ、魔法薬について聞きに行くんだった、と寮に戻る途中思い出したヘンリーは薬の効力時間を考えながらスネイプの私室へと向かう。さっと食べて消えたため、もうもどっているはずだ。
ノックしようとしたところで突然扉が開き、まるで大イカが根城にしている穴に獲物を入れるがごとくヘンリーの手をつかみ、あっというまに引き込むと荒々しく閉じた。
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