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 時間にしてしまえばほんの数十秒だが、ハリーにとっては何時間も悩んだかのように気力を使い果たしていた。
(なんか最近変!元に戻りたくないだの、スネイプの行動を見張るだの…。授業で帰ってこないとき寂しいとか。悪口を思うと胸がチクンって痛くなるし…。)
 
 はぁ〜っと大きくため息をつくハリーはいつからこんなになったんだろうかと思いをめぐらせれば思い当たる節がたった一つ・・・。
 ダイアゴン横丁で助けてもらったときのこと。
 本気で心配そうだったスネイプは今まで見たことがなく、杖を構えた姿にドキリとしたこと。
 その日みた夢では少し顔を動かせば触れる至近距離にスネイプがいて…。
 ほんのちょっとしたいたずら心で顔を動かしたら何かに触れた気がして、はっと目を覚ました。
 だけども、寝室には自分だけしかいなくて…。
 
 その後、夢の中で猫を抱えて猫が好きかどうかを聞いたら…抱きしめられて口づけをした。
 また目を覚ましたら夢が消えそうで、スネイプの口づけに夢中になった。
 こんな夢を見るだなんてまるで僕がスネイプが好きみたいじゃないか、とハリーは首を振る。
一瞬浮かび上がった甘い感情を必死に押し込み、スネイプを見つめた。
偶然天窓から月の光がのぞき、それを鏡が反射する。
 
 
 どきどきと胸が高鳴るハリーは静かに寝息を立てるスネイプをのぞき込む。
いろいろ考えている間に寝返りをうったのか、猫の姿でも乗りかからずに見れそうだと、ハリーはどきどきと高鳴る胸を抑える。
 黙っていれば結構かっこいいかも、とじっくりと見つめた。
 きっとこれまでにいろんな女性と話したりしたんだろうな、とこれまでの嫌いの感情を抜きにしてみて、初めてそんなことを思う。
ナイトシャツに着替えたスネイプはローブ姿とは違い威圧感を放っていない。
 ふと、見たことのないスネイプを見つめていたハリーは眉間に見慣れたものを見つけて思わず小さく噴き出した。
 眉間に寄せわれたしわの名残がおかしくて、やっぱりスネイプだとほっとする。
 
 ふと、唇に目を止めたハリーは夢を思い出す。
 予想以上に柔らかな感触だったなと、ハリーは自分の口に手を当てた。
(ちょっとくらいの悪戯なら…起きないよね。)
 耳元で心臓の音が聞こえるハリーはそっとスネイプの唇に己のを重ねる。
 そこで初めて違和感を抱き、はっと体を抱き込むようにして離れるハリーは何でと考えていた。
 全然人の姿に戻る条件がわからないハリーは自分のした行動に訳が分からず軽くパニックになっていた。
 
 背後で動く気配がして顔を赤らめる。
「ポッター、いったい貴様はいつになったら大人しく寝るのかね?」
 起き上がりながらうめくように言うスネイプにハリーは早く猫に戻れとドキドキが更に高まり、スネイプ聞かれるんじゃないかと冷や汗を流す。
 
「先ほどからバタバタと…。」
 クローゼットを開けたりと騒がしいとスネイプはハリーを見る。
 そのハリーが猫ではなく人型になっていることに気が付き、眠気がどこへと飛んでいく。
「あっあの決してわざとじゃなくて、そのちょっと…。」
 必死に何かに言い訳をするハリーにスネイプは己の口に手を当ててにやりと笑う。
 
「あの…スネイプ先生?」
「全く…最後のかけらまで奪い取ってくれる…。」
 いったい何のことかと首をかしげるハリーは今自分が首輪以外身に着けていないことを思い出し、ベッドから抜けだそうと起き上がる。
 ふと、腕をつかまれ、目の前がくるりと回る。
 戸惑うハリーは背にベッドがあることを感じ、じんわりと痛む腕にスネイプの手がつながっていていることをみる。
 スネイプに覆いかぶさられていることを認識すると顔を赤らめて、ハリーは戸惑う。
「先ほどの贈り物は夢ではなかったというわけか。」
 あの、その、と焦るハリーにスネイプは徐々に…苦しくない程度に身体を密着させていく。
 空いている手で自分のシャツを開けると、直接肌と肌が触れ合う。
 そうなればハリーの心音が聞こえることは確実で、顔を真っ赤にするハリーはどうにか隙間を作ろうとスネイプの胸を押し返す。
 つかまれていなかった手も取られてしまうと、足を挟まれて身動きが取れなくなる。
「スネイプせんっ…。」
 ぐるぐると恥ずかしさで混乱するハリーにスネイプは深く口づけた。
 あの晩自制したものとは違い、食らいつくような口づけに夢が現実になったと、ハリーは目を閉じて受け入れていった。




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