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「ハリー!やっと元に戻れたんだね!」
昼食の席に二週間ぶりとなるハリーが顔を出すと、原因をつくってしまった当事者であるロンは嬉しさのあまり叫ぶようにしていう。
ぶんぶんと振られる手に苦笑するハリーは視線を感じてちらりとスリザリンのテーブルを見ると、そこにはどういう態度をとればと悩む様な、謝りたいのか、何かいいたいのか、そんな顔のマルフォイと目が合う。
ぷいっと横を向いたマルフォイになんだかおかしくなってロンにもう大丈夫だよと笑いながら告げた。
「うん。今朝薬が完成して…様子を見てもう大丈夫だからって、出てきたんだ。」
「本当によかったよ。ハーマイオニーが調べたら一時的に人の姿になることもあるってあったらしいけど、一生猫の姿のままだったらどうしようかと…。」
「似たような呪いがたまたま上級者向けの魔法が載った文献にあったのよ。でもそれだと後遺症があるって書いてあったから本当に心配で…。」
その場合だと耳とか尻尾が猫になっちゃうってと続けるハーマイオニーにハリーはどきりとしつつも、ずっと猫の姿だったよという。
そこへスネイプが教員席に姿を現し、いかにも不機嫌というオーラをかもしながら席に着くと、反射的に目で追っていたハリーと視線がからみ、ハリーはあわてて視線を外す。
「ハリーの外見とか何にも変わってなくてよかったよ。僕のせいでハリーがおかしくなっちゃったら…考えるのも恐ろしいから。」
「大丈夫だってロン。もう猫には戻らないよ。」
心配しすぎだよ、と背を叩くハリーにロンはこれでやっと御飯が喉を通るよとミートパイを頬張る。
「何言ってるのよ。食欲旺盛だったじゃない。まぁ…ハリーが猫になってから三日間は罰則の事もあって食べられなさそうだったけど…。」
まったくもう、とため息をつくハーマイオニーにロンは思い出させないでと耳をふさいで目もつぶる。
からかうハーマイオニーとやめてと言うロンにハリーは笑うと再び教員席を見る。
ずっと見ていたのか、再び視線がからむ。今度は視線をそらさない。
ロンとマルフォイのお陰で酷い目に会ったが、それと同時にいがみ合ったいた筈の関係が大きく変わった。
それもいい方に。
スネイプがハリーにしかわからないような笑みを浮かべると、ハリーは顔を赤くして再び顔をそむける。
一瞬襟元から見える首筋にはもう赤い首輪はない。
その代わりに真新しい印が首輪を同じ色で刻まれてあった。
―FIN
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