--------------------------------------------

それから四日。
ハリーを視界に入れないようにとスネイプは努めていた。
もちろんスネイプの突然の態度にハリーもおかしいと感じてスネイプの行動を一部始終見守ってみた。
 子猫化しているときは無意識に猫っぽい行動をとってしまうことがあるため、丸いものとか子猫が好きそうなものはなるべく目に入れないようにしていた。
 子猫ってなんでこんなに無邪気なんだろう、と身に染みて感じる。
 だからと言って今すぐ人型に戻りたいわけではない。
 気が付けばスネイプの足元にすり寄ってしまったり、ついスネイプのあとを追いかけたり…以前のハリーであれば嫌悪して一日でも早く元に戻りたいと願っていたはずなのに…。
 あの助けられた一件以来妙にスネイプの行動が気になって仕方がない、とハリーはじっと鍋をかき混ぜるスネイプを見つめる。
(あと・・・一週間ぐらいか・・・。って何寂しがっているんだよ僕!!相手はあのスネイプ。そう!あのスネイプだ!!僕が今こんな姿だからこそ保護しているのであって、元に戻ったとたんいつもの数倍嫌味を言われるに決まってる!!)
 ぶんぶんと頭を振るハリーはそう、嫌みを言うにきまっているとそうつぶやくと胸の奥底で何かがちくんと痛んだ。
 
 
 ハリーが足元でじゃれ付くのに気が付いたスネイプは、ハリーははっとなって飛びずさるまでじっと見降ろしていた。
 子猫になると行動もそれ相応になってしまうことはよくわかっているが、じゃれ付くハリーを見た瞬間、猫耳ハリーに見え不埒な妄想をしてしまったため、余計に気まずい。
 丸いものにじゃれ付くハリー。
 こちらをうかがいながらミルクを飲むハリー。
 ミルクで顔を汚したハリー…。
 部屋に残して授業している間も思い出しそうになり、ロングボトムに八つ当たり気味の減点とか、うっかりドラコの出来を誉め忘れたり…調子が出ない、とため息をついていた。
 あれから人型にならないように、寝室にある空を映す天窓の位置を確認したし、驚かせるようなこともないよう注意を払っている。
 もしも今ハリーが人型になったりでもしたら…最後の最後で何とか握りしめたものが飛んでいくと、直感的に確信していた。
 
 「残る材料は明日の朝いちばんに森に採りに行かなくてはならない。ポッター、我輩は明日に備えて早めに休むが…どうする?」
 朝露が必要だということで早めに休むというスネイプにハリーは足元に行くことで寝ることを表現した。
 もともと猫は睡眠時間が長い。
 子猫となればもう少し長い。
 普段ならばスネイプが寝る前にソファーで丸くなっているのを寝室に移されているのだが、今日は違う。
 連日の心の叫びを抑えることにつかれていたスネイプは寝ているハリーを見つけて寝室まで魔法で運ぶという労力もないため、寝台に入るとすぐに寝息をたてた。
 幸い外は曇り。天窓が映す空もどんよりとした空模様で心配することはない。
おとなしくベッドで丸まるふりをするハリーはスネイプが寝息を立てたことを確認してそっと抜け出す。
 昼寝から目が覚めてご飯を食べて…まだ眠くないとハリーは部屋を探索するいい機会だと好奇心にうずうずしていた。
 猫になってよかったと思えるのは暗い部屋でも少しの明かりさえあれば見えるということ。
音を立てないように探索だ、とハリーはクローゼットの戸を開けた。


つまらない
部屋を探索して30分。
ハリーは退屈を感じてベッドに上がっていた。
ベッド、サイドテーブル、本棚、クローゼット。
特に目新しいものはなく、クローゼットに至っては黒い服しかない。
旅行用とか用途が異なる服があるようだが、あまりにも黒一色で違いが猫目線からじゃ全然わからない。
 
 ほんと全部黒い、と振り向くハリーはそうだと目を輝かせた。
 いつもは朝起きてもすでにスネイプはいないし、先に眠るしでこうして寝ている姿を見たことがない。
(そうだ!せっかくスネイプの寝顔が見れるんじゃないか!絶対見てからかってやろ!)
 そうからかうため、と自分に言い聞かせてそっと、向こうを向いたスネイプに近づく。
(いっつもマルフォイばっかりひいきしてさ。たまには褒めてくれたって…。って何考えてるんだよ!スネイプなんて陰険、根暗、ねちっこい…って言いすぎかな…じゃなくて!)
 いったいどうしたんだろう僕、とハリーは頭を抱えていた。
 いつも浮かべていた悪口を思い浮かべてはすぐ否定して…。
 そしてそれに突っ込みを入れてと繰り返す。




BACK≪ ≫NEXT
戻る