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 食事を終え、就寝までの時間、蛇のささやきにハリーは頷き、ヘドウィグに注文書を渡すと空へと飛ばす。
 二日後、手に入れた薬を手にしたヴォルデモートはハリーから透明マントを受け取ると愛蛇であるナギニを呼び寄せた。
「この薬…本当にナギニ大丈夫?」
 薬を手に取ったハリーは大きな蛇の頭をなでつつ、害はないの?と首をかしげる。
「ノクターン横町で手に入るとはいえ、一応は実験済みの魔法薬で安全性が確認されている。それに今回は誘導後に元に戻り出てきてもらわなくては困るからな。効果は短い物を選んだ。」
 だから大丈夫だというと、必要な材料のメモをみる。
するするとハリーに上るナギニは大丈夫よと笑う。
『大丈夫よハリー。もっと危ない橋渡ったこともあるのよ。それに比べたら全然楽な部類。』
「それではハリー。今夜は談話室か寝てしまうか…とにかく一晩中ハリー・ポッターは仲間たちといた、という事実を残すのだ。」
 ナギニの頭をなで、透明マントは借りておくというとハリーはわかったと頷いた。
 
 
 先に部屋を出るハリーはそのまま寮へと戻ると脱皮を始めたから秘密の場所においてきちゃったという。
 そんなハリーに親友たちはそれなら仕方ないね、と苦笑いを浮かべ久々に3人だけの就寝前の時間を過ごすこととなった。
「一匹にしてきて大丈夫なの?」
 ロンとチェスをするハリーは横で見ていたハーマイオニーの言葉に終ったら僕のところに来るよと返す。
ふと、クルックシャンクスがご機嫌な様子で歩いてきたことにロンは目を向けそういえばさ、という。
「前々から思ってたけど、ペット達って絶対太ったレディを通ってないようだけど…どこを通っているんだろう?」
「あそこ以外に穴があるのかもしれないわね。あの子もどっからか急に出てくるから…」
 首を傾げるロンにハーマイオニーもまた首をかしげる。
クルックシャンクスやトレバーなどふらりと消える動物は多い。
そして構内の別の場所で見かけるなんてこともある。
「ホグワーツはまだまだ私たちの知らないことがたくさんあるってことね。ハリー、そこそこ。」
 ハーマイオニーの言葉にハリーが駒を動かすと、ロンはちょっとハーマイオニーと悲痛な声を上げた。

 廊下を歩くスネイプはハリーが最近蛇に餌を与えるためといいふらふらで歩いていると聞いて姿がどこかにないかと、周囲を見渡す。
ふと、姿は見えないが誰かが足早に歩く音が聞こえ、そちらへと目を移した。
 どうやら透明マントを使っているらしい人物はそのまま校庭に出るとどこかへと歩き去っていく。
 校内で透明マントを持っているのはハリーだけ。ならば、と何か引っかかるものを感じつつスネイプは慎重にあとをつけていった。
 ふと、前方で暴れ柳が動き、急に動きを止めたことから叫び屋敷か、と最近のうわさを思い出し歩く速度を速める。
 噂ではハリーの密会場所は叫び屋敷だという。
ならばその相手にこれから会うのかもしれない、と中の気配を探り、そっと戸を開く。
 だが、そこにはだれもおらず、うっすらと埃の積もった後に足跡だけが残されている。
いぶかしんで中へと滑りこむと扉がばたりと閉じ、鍵がかかる。
 はっと振り向くスネイプは部屋をぐるりと見渡し、蛇の通ったような後を見つけると扉を解錠して自身の薬草庫へと走って行った。
 以前とは逆だが、これが陽動ならばと真っ先に地下へと駆け込む。
 
「ハリーの仕業…ではないな…。」
 荒らされた薬草庫に舌打ちをするスネイプは手早く片づけを行うと何が盗まれたのかを慎重に調べた。
「…ユニコーンの血、人魚の涙…フェニックスの羽毛…。まだ後いくつか足りないが…もっとも貴重なものはこれか…。」
 もっとも強力な魔法薬の本に書かれた何かを生成しているのでは、と考えるスネイプはダンブルドアに報告すべきかまだ迷っていた。
 今年に入ってから忙しいらしく、神出鬼没なダンブルドアでさえホグワーツにいる時間が短い。
それに報告すれば間違いなくハリーは疑われ、問い詰められる。
 それにしても、とスネイプはハリーの恋人といわれるのが誰なのか、本当に本と材料を盗んだのがその人物なのか…眉を寄せていた。
 もっとも強力な魔法薬に記載されている魔法薬の中には他の本に記載があるものもある。
最も気になるユニコーンの血と人魚の涙を使った魔法薬だ。
ユニコーンの血に関しては以前、森で命をつなぐため啜っていたものがいた。
 そして、とスネイプは左腕を軽く押さえる。なぜだかずっと軽い痛みが闇の印から伝わっている。
それもハリーとの距離が近ければ近いほど…痛みが強くなる。
ハリーと行動を共にしているあの蛇に何かあるのではとそう考えつつもとなれば…言いようのない怒りに拳を握りしめた。


 土曜日になり、朝起きたハリーのそばにはいつもいる蛇の姿はない。
小さくため息を吐くが、枕元に一枚の紙を見つけ、小さく微笑んだ。
 ロンとハーマイオニーとホグズミートに行ったハリーは、クリスマスに向けて売り出されているお菓子やグッズを眺めていた。
「ハリーは恋人に何か買うの?」
 ハーマイオニーの言葉にどきりと振り返るハリーは頷く。
「もちろん。でも…ほしいものは自分で大体手に入れちゃうから…。何がいいかなぁって。」
 今欲しい薬も冬休み頃にはできると言っていた。
何がいいかなぁと考えるハリーにハーマイオニーは笑う。
「何でもハリーがあげたいって思えるものでいいと思うわよ。ねぇロンもそうでしょ?」
「え?あっうん。そっそうだね。好きな人にもらえたら何でもうれしいと思うよ。」
 急に話を振られたロンは手に持っていた手のひらサイズのスノーボールを落としかけ、慌てて棚へと戻す。
「そっそんなハーマイオニーこそ、なんかほしい物とかないわけ?」
「私?そうね…今欲しいのはしいて言えば栞かしら。前にラベンダーが使っていたちょっとおしゃれな栞みて、いいなぁって。ここに来るたびに探してはいるんだけど…あぁだめ、まだ売り切れのままだわ。ハンドメイドらしくてなかなか出回らないのよ。」
 ロンに聞き返されたハーマイオニーは商品の一角を見上げ、入荷待ちの札に首を振る。
 
 つられて棚の札を見つめるロンは入荷待ちの札に隠れている値札を覗きみて何か考えていた。
「ハリーは?」
 そう返されうーんと唸る。
特に浮かぶ物はない。ほしいと言えば何でもくれそうだが欲しかったものはもう手に入れた。
「あ、一つだけ欲しい物あった。」
 ふと頭の中を緑色がよぎり、あれがあったと微笑む。
「え?何?何ほしいんだよ。」
「内緒。今度彼に聞いてみる。」
 ロンの言葉にハリーは笑うとそろそろ戻ろうかと、3人はホグワーツに足を向けた。
寒さに降参し、バタービールでもと思ったが団体客が入っていくのが見え早く城に帰ろうとしていたのだ。
 
「あ!ごめ、ちょっと買い忘れてた!ええっとジミーに頼まれてたんだ。先もどってて!」
 境目に来たところでロンは思い出したように声を上げ、ハリーたちが止める間もなく先言ってて、と走り去ってしまう。
 まったくもう、というハーマイオニーは不意に何かを思い出したのか、ポケットに手を入れ何かを探しだす。
「さっきのお店で買った物、受け取り忘れちゃったわ!ごめんハリー、先戻ってて。落としてはないはずだから…。」
 ロンと商品を見ている間に何かを買っていたハーマイオニーはラッピングをお願いして、そのままお店を出てしまったらしい。
 もう、と言って走り去る姿に2人ともどうしたんだろう、と首をかしげ、手紙を思い浮かべる。
 2人と出かけるときはローブを持っては怪しまれると持ってはいない。
だから取りに行かなきゃ、とこちらも走って城に戻ると黒いローブと透明マントを手にとった。
今は必要ないとローブを手にとり、マントだけを羽織ると少し暗くなった中を暴れ柳に向かって走っていく。
 中に滑り込み、叫び屋敷に行くと朝の手紙通り目元だけ隠す仮面が置いてあった。
 
 
 透明マントを脱ぎ、ローブをすっぽりと頭からかぶると仮面を手に取る。
不意に体が浮き上がる感覚に包まれ、どこかの壊れた家の前に来るとその仮面をそのまま顔に装着する。
いぶされた銀のような鈍い色の仮面をつけたハリーは家の周りをぐるりと回るがナギニがいるだけでヴォルデモートの姿はない。
「ヴォル?」
 ハリーの言葉に反応するかのようにバーンという音が響き、家が崩れる。
がれきとなった家の中から現れた姿にハリーはそっと笑う。
「来ちゃった。」
「あぁ、ちょうど終ったところだ。」
 ハリーのそばにやってきたヴォルデモートは仮面で隠れていない口に口づけを落とすと、ハリーは両腕をヴォルデモートに回した。
「マグル?」
「あぁ、ペテン師のな。死喰い人の一人がこの家の男に騙され、俺様にたてついた。元々嘘つきだった奴だ。この瓦礫に一緒に埋もれている。」
 首をかしげるハリーにヴォルデモートはあぁ、というともう一度口づけを落とす。
「ねぇ、ヴォル。闇の印の呪文…僕が唱えてもいい?」
「あぁ。いいだろう。」
 すがりつくハリーにヴォルデモートは頷き、耳元で呪文を伝える。
「モースモードル」
 ハリーの杖から蛇をのぞかせる髑髏が空に向かって放たれ、緑色の光を辺りに降り注いだ。
「ホグズミードまでおくろう。透明マントは?」
「叫び屋敷の中。いいよ、裏口からとりに入るから。」
 ハリーを抱き上げ、ナギニを肩にのせたヴォルデモートはバチン、という音共に姿くらましをした。
印を見て駆けつける魔法省の人間は誰もいなくなったころにようやくたどり着いたが、誰の痕跡も見えず、闇の勢力に恐れをなしたのであった。


 ナギニを一度隠れ家に持っていくというヴォルデモートはハリーを置いて消え、ハリーは何食わぬ顔で叫び屋敷の裏口から入り、透明マントを手に取る。
 ふと、そういえばロンたちは戻ったかなと考え、そのままホグズミードへと戻った。
 声が聞こえたような気がしたハリーは三本の箒に入ると奥にいるハーマイオニーを見つけ、プレゼントが見つかったか聞こうとし、足をとめた。
 どこか楽しげなロンと共にバタービールを飲む親友2人。
元々ロンはハーマイオニーに気があるようだったのは知っていたからプレゼントを探しに行ったのかなと思っていた。
だが、もしかしたらと眉を寄せ、踵を返す。
 
 先ほど村に戻ったのは偶然だったのか。
もしかしたら自分が邪魔で、二人っきりで話したくて…それで結託して置いて行ったのか…。
言ってくれればついていきはしなかった。
 最近蛇の世話といっていないことが多かったからとりあえず声をかけただけで、本当は二人っきりで回りたかったんじゃないか。
だから用事があると言ってバラバラに別れて…。
 
 
 言いようのない怒りが頭をめぐり、必要の部屋へとやってきた。
ソファーに突っ伏し、うつぶせになるハリーは楽しげな親友と、忘れ物をと言って走り去った姿を思い浮かべぎりっと歯を鳴らした。
 そこに一匹の蛇がやってくるとソファーにうつぶせになる姿を目に入れ、そっと覆いかぶさる。
「傷越しに感じたが…何に怒っている?ハリー。」
「ロンとハーマイオニーに嘘つかれたの。信じてたのに…。僕が一番信じられるのはヴォルだけになっちゃった。」
 背後から抱き締めるようにするヴォルデモートにハリーは膨れたままさみしそうに言う。
「ねぇヴォル…。クリスマス何かあげたいんだ。何がほしい?何でも僕…やってみせるよ。僕もヴォルにほしい物あるから。」
 くるりと向きを変え、向かい合うハリーは自分でネクタイをほどき、ヴォルデモートに口づける。
「あぁ、そういう行事があったな。そうだな…ハリー…。俺様が今手に入れられないのは予言くらいだ。だが、あれは魔法省の神秘部が管理し、関係者以外は手に入れることができない。そんな危険なこと…流石に任せられないな。」
 自分でボタンを外すハリーをとどめ、首元に口づけを落としながら下るヴォルデモートはちらりとハリーを見つめた。
「予言か…。僕は…ヴォルの…あなたの役に立ちたい。やってみるよ…。というよりもやらせて。代わりに…僕に闇の印をつけてほしいな。腕だとばれちゃうから…どこか。ヴォルがつけたいところどこでもいいから。」
 それならいい?と上がる息を押し殺し、首をかしげるハリーにヴォルデモートは少し考えるように手を止め、ハリーの額に口づける。
 
「無茶はするな。入り方は後で教えよう。それよりハリー。あれは俺様のしもべの印だ。それをハリーの体に記すというのは…。」
「だから普通の死喰い人には絶対つけない場所に。僕がヴォルのものだってわかる印として。そしたらヴォルがそばにいなくても不安にならないもの。」
 ハリーの白い肌をなで、額をなでるとこれ以上の傷は付けたくはないな、という。
そんなヴォルデモートにハリーは微笑むと、緩やかにヴォルデモートの首に腕を回し、ヴォルデモートを抱き寄せる。
 
「わかった。ただし通常の印とは違うものにしなければな。あれは様々な呪文をからませている。それでハリーを傷つけたくはない。」
「ありがとう。それじゃあ冬休み…決行だね。僕も予言でヴォルとどう結ばれているのか…知りたい。」
 額の傷に口づけを落とし、至近距離で見つめあうと深く口づけ、部屋の空気をつやめいたものへと変えていった。









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