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「来年度からになるのじゃが、以前から検討していた職員の待遇改善のために、休暇の取得を取りやすくしようと思っておったのじゃ。ルーピン先生が毎月満月の前後の体調不良による休講の懸念を払拭すべく、代理を探して居ったのじゃが開校以来の秀才であるト……仕方ないの……ヴォルデモート=……ゴーントを迎える。それと、先日の記事で先に公表したのじゃが、ヴォルデモートの抑止力としてゲラート=グリンデルバルドを校長補佐としてはいることとなった」
ダンブルドアの声が響く大広間。ハリーとヴォルはいない。ヴォルデモートもしぶしぶといった風に来たが、早く戻りたそうに出したい口を閉ざしているようだ。グリンデルバルドは彼の所業を知らない、マグル出身や魔法史でまだ習っていない下級生にとってはちょっと危険な雰囲気のするイケオジに見えるのか、無害そうに微笑む姿にひそひそと話す姿すら見える。
その“無害そうな微笑み”が一番危険なんだな、と魔法史でグリンデルバルドについてを習っていた生徒や、祖父母世代に被害があったと聞いている生徒は男の本性を垣間見て引いている。
魔法界の受け取りはおおむね反対や拒絶だったが、それはファッジに向きダンブルドアらにはほとんど来ていない。ハリーを批判するような手紙は屋敷しもべ妖精らが勢力を上げて回収しているため、まだ届いていない……はずだ。届こうものならば命が危ない。
「ハリー……大丈夫かしら」
「最後の見たのっておとといの集まりの時?」
スキーターが記事を書き終わったあと、ハリーはダブルヴォルに連れていかれてから会っていない。ヴォルはキッチンにいたが、すぐにどこかに消えた。とっても上機嫌だったというのでなお心配だ。
様々な感情が渦巻く中、大広間から出るハーマイオニーはいつの間にか姿のないヴォルデモートにあーとため息を零した。ヴォルがアニメーガスを習得しているということは、彼も習得していることとなる。そこにつまらなさそうなナギニが一匹で這っている姿を見つけ、ロンがどうしたんだいと声をかけた。
言葉が通じないが、ロンに近づくナギニはどこか不機嫌で、なんとなくその原因を察する。
「君のご主人……残念イケメン過ぎるよな」
なんだなんだと覗き込むシェーマスがそう呟くとナギニは同意するようにこくこくと首を縦に振った。もうすっかり慣れているルームメイトらはハリーがいない原因も、あのヴォルデモートがすぐ消えた理由もなんとなく察している。ただし、ヴォルとヴォルデモートが親子だと考えているため、更にしょうもなさが増しているらしい。
「親子まとめて掌握しているハリーも大分すごいよな」
ディーンの言葉に正体を知っているロンは乾いた笑いがこぼれる。親子じゃなくて同一人物なんだよなーと考え……どっちもどっちか、と頭をかいた。一応首輪?が付いているということは安全といえば安全か?と囁く声が聞こえ、ハーマイオニーは何も変わらないのよね、とため息を零した。
一応……箒の落下事故や危険な魔法の事故など……近年では減ったというが過去には死亡事故や重大事故もあったことを考えれば、危険な魔法を封じられている闇の魔法使いがいる程度危険度に変化はない気がする。そう、本当に僅差だ。
残念過ぎる闇の魔法使いの末路を目の当たりにすれば、誰もそういった道の踏み外し方はしないんじゃないかしら、とダンブルドアにぴったり寄り添うグリンデルバルドにまたため息を零した。ベクトルの若干違う二人だからこそ、結託する心配もなく、飴さえあればおとなしいし……これが一番平和な解決方法ね、と最後まで抗議していたシリウスを思い出す。
シリウスはヴォルデモートが証言したトム=リドルの墓があるリトル・ハングルトンの墓所で掴まったピーターの尋問のためいない。従姉のベラトリックスの再逮捕などもあり引っ張られる形で連れていかれた。
平和の代償がハリーの貞操というのはとんでもない天秤だが、本人らがそれを承諾しているのも魔法省の頭を悩ませる。グリンデルバルドに至ってはそれがダンブルドアだ。大いなる善の為にと画策し、世界を混沌に巻き込んだグリンデルバルドを抑えるのに必要な人員はダンブルドア一人。イギリスの魔法界を恐怖に陥れた闇の帝王の欲望を抑えるのに必要な人員はハリー一人。
どちらの闇の陣営も付き従う相手を見誤ったな、と事情を知る者たちはその理解できない天秤に、さじを全力で投げた。
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