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「今回のことについては既に記事にされていることを含め、一部を秘匿しつつ公表するつもりじゃ」
「そこに隠れている小娘。私が添削してやろう。今ここで記事を書くか、踏みつぶされるか……決めるがいい」

 当事者であるはずの3人を放置し、話を進めるダンブルドアにだれも止めることはない。ハリーはともかく、あの二人は聞いているだろうという全員の解釈が一致し、ダンブルドアに視線が集まる。公表するというダンブルドアにちょうどいい虫がいた、とグリンデルバルドは立ち上がり、静かに誰もいない一角に歩いていく。

「飛べば叩き落してやろう。逃げようとしても無駄だ。この場に入ることを許した時点で君の選択肢はなくなったのだ。ここに入るか、否か。その選択肢を誤ったのだ、覚悟はできているだろう?」
 グリンデルバルドの視線の先には先ほど転がったコガネムシ。あー……とヴォルから聞いていた全員は追い詰められた記者がいることに気が付き、呆れたような目を向けた。コガネムシはたじろいだようにして飛ぼうと羽を出し……すごすごと羽をしまう。

 じろりと見降ろすグリンデルバルドと、自分に迫っていた手に下がるコガネムシは逃げ腰なスキーターになり、脅迫しようたってそうはいかないわ、と声をあげた。

「脅迫とは人聞きの悪い……。脅迫とは思うように操り、意に添わぬことを強要することだ。だが、私が提示しているのは、一大事件に関することを書いて欲しい、という“依頼”だ。その対価が己の命であるということだけが少々特殊なだけでね。……記者なのだろう?自分の命くらいチップと同価値ではないか?」
 ベットか、この世からのフォールドか。静かな問いかけにスキーターはぐっと息をのむと眼鏡を手で押さえつけた。

「わかりましたわ!ええ、ええこんな一大スクープ、確かに逃すのは惜しいですわね!」
 カバンから羽ペンと羊皮紙を取り出すスキーターは怒りに体を震わせ、絶対にダンブルドアの暴露本を書いてやる、と唸るようにつぶやく。本当にこいつ自由にして大丈夫なの?という空気の中、グリンデルバルドは懐から羽ペンを取り出し、君のペンは信用できない、と静かに差し出した。

「あぁそれと。アルバスの暴露本を書く際、私との関係について当事者らの話が欲しいだろう。その際はいくらでも話をしようではないか」
 最初の一冊さえくれればいい、と物腰柔らかそうにいうグリンデルバルドに、スキーターはあらそれはいいことを聞きましたわ、と上機嫌になりペンを受け取った。

 ギャングが二人と詐欺師が一人。ふいにハーマイオニーの脳裏にそんなフレーズがよぎり、なんとなくシリウスに目を向ける。冤罪とはいえ13年間収容されていた人……。学び舎にこんなにもいろいろなものがある人が集まって大丈夫かしら、と頭痛がしてきて思わずため息を零す。
 すっと椅子が飛んできて、ハーマイオニーは驚いて顔を上げた。

「私のアルバスの目論見はさぞ混乱するだろう。無理をせず腰を下ろすといい」
 ふっと微笑むグリンデルバルドに促され、えぇっとありがとう、と戸惑いながらハーマイオニーが腰を下ろす。長年の幽閉でやせこけてはいるが、元が良いのだろう。自身の素材の良さを存分に発揮するような微笑みにハーマイオニーはぞくりと背筋を震わせた。この詐欺師こわい!と組んだ指を握り締め合わせる。


「それでは……まず発端については後程改めて話すとしよう。あまり長くとるとハリーを解放してくれなくなるかもしれんしの。かつてヴォルデモートのもとに集まっていた、闇の陣営の信仰者達が秘術を使い、彼の魔力がこめられた品々からヴォルデモート卿復活をもくろんでいたようじゃ。そこにおるヴォル=セルパンの体に封じられていたヴォルデモート卿の記憶を使うべく、アラスターと入れ替わっていたクラウチJr.が画策していった。どうにか記憶を手に入れ、秘術に必要なものを集めたのじゃが……手違いが発生したらしい」

 すらすらと話し出すダンブルドアの言葉と、それを書き留めるスキーターのペンの音が響く。ダンブルドアの嘘を織り交ぜた話を聞き、スネイプとロン、ハーマイオニーはあれ詐欺師が二人?と額に手を当てた。

「セルパンの記憶を確認もせず突かった結果、見ての通り肉体はヴォルデモートじゃが、中身はセルパン、そのものとなったのじゃ。おまけに、どうやら二人の血を儀式に欲したようじゃが、それにより、ハリーにかけられていた守りの呪文をヴォルデモートが担う役割となり、ヴォルデモートがハリーの安全の担保となった。万が一にハリーに危険が迫ることがあっても、その守りの呪文により傷つけることはできないじゃろう。もくろんだものの命は……この二人が許すか否かで決まるじゃろうな」

 ようやくするとじゃな、とダンブルドアは杖を振る。ハリーを包む守りの効果をヴォルデモートが担う……つまりはハリーを害そうとするのであれば先にヴォルデモートを倒さねばならなくなったと。ヴォルデモートにはもともとハリーとの予言でどちらかがどちらかを倒すというものがあるため、ヴォルデモートを倒すにはハリーの協力が必須と。肝心のヴォルデモートはヴォルとのつながりもできてしまったために、ヴォルもそれに加わり……。

「嫌な三角形ですわね!」
 冗談じゃない、と言い放つスキーターに本当にそう、とつまらないのかまたハリーをからかいだす二人とそれは面倒だなとまるっきり他人事の男……と大変だろうとニコニコする偉大な魔法使い以外の心が一致する。どこまでが本当かわからないが、嫌なパズルだ。
 
 




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