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引っ張られる感覚にセドリックはハリーの体を抱え、どこかの墓地へとたどり着く。
「あー……ここかぁ」
周囲を見渡すヴォルの嫌悪感を含んだ声にハリーは知っているの?と首をかしげる。まぁ、と口を濁すセドリックだが、反射的に盾を作るとハリーと自分を包む。バチン、という音ともに緑の光線が弾かれ、ひぃ、という情けない声が奥の茂みから聞こえる。この声はピーターか、ちらりと時計を確認すればもうじきにポリジュースがきれる頃合いだ。
いきなり緑色の呪文……死の呪文を唱えられて思わず足をすくませるハリーだが、すぐに気を取り直して杖を握る。ヒュン、という音がハリーの背後で微かに聞こえ、振り返る前に縛り上げられる。
「ハリー!」
盾を構えたまま次の呪文を消すセドリックは背後で聞こえた小さな悲鳴に反応しようとして、飛んで来たアバダを防ぐ。縛られたハリーが引っ張られそのまま墓石に縛り上げられると周囲を囲うフード姿の男たちが姿を現した。
「俺様が来ることも当然わかってのことか」
ポリジュースがきれて元の姿になるヴォルがにらみを利かせると、フードの男たちは震えて近いものと視線を交わす。その中から進み出たのは一人の魔女だ。
「ベラか。騒ぎにはなっていなかったが、ファッジめ……」
脱獄したことをかん口令をひいたのか、と舌打ちをするヴォルにベラと呼ばれた女性は腕に布の塊のようなものを抱え、あなたは闇の帝王様ではない、と鋭い睨みを返す。警戒していたというのに、ヴォルの足かせになってしまったことが悔しいハリーはどうにか縄をほどこうとするも動かない。
「ごめん、ヴォル」
しょんぼりとしたハリーにヴォルは振り返ると大丈夫だと頷く。うん、と頷き返すハリーから視線を外し、ベラの腕に抱えられた塊に視線を向ける。
「ハッフルパフのカップ、スリザリンのロケット、ペベレルの指輪……。分霊箱から魂を取り出したのか」
ご苦労なことだ、と杖を下さないヴォルに布がうごめく。赤ん坊ほどの大きさではあるがちらりと見えた“手”は下手な人が粘土で作った人の手のようなほど歪で、赤く爛れているように見え……ハリーは不安げにヴォルを見つめた。
分霊箱から無理やり魂を引っ張り出しそしてこねて作った人形に入れた、という風のそれは不安をあおり、ハリーはどうにも落ち着かない。うごくな、とベラは杖を向けたままヴォルをけん制し、数人がかりで運んで来た大きな鍋の隣へと立つ。
うごめく布の塊を鍋に入れると水面が泡立ち、嫌な音が墓地に響く。
「いっ!」
「ぐぁ!」
突然聞こえたハリーの小さな悲鳴に、すぐに反応したヴォルは失神呪文を唱えてハリーの肌に傷をつけたフードの男を弾き飛ばした。
「あ、あなたがご主人様であられても、わっ我らを導かない、あ、あんたはいらない!」
震える声の男が気絶した男からナイフを奪うと、ハリーの喉元へと突き立てる。ハリーを盾にするような位置取りにヴォルがブチギレそうな顔をするも、男はひけ切った腰のままその姿勢を維持してナイフをハリーに向ける。そのナイフにはハリーの血がすでについていて、それがヴォルの怒りを積み上げていく。
「その腕の血をこの布に染み込ませてもらおうか」
両手が開いたベラが布をヴォルへと飛ばし、受け取ったヴォルが忌々しそうな顔で腕の血を布に吸わせる。その布をそのままハリーへと飛ばすとナイフの血を拭い、ベラは勝ち誇ったようにその布を鍋へと入れた。一層激しくなる煙にヴォルは呆れ、てぇい!と縄から抜けたハリーが男を倒してヴォルに駆け寄るのを抱き留める。多少の作戦の違いはあれど大体想定内だ。
「エピスキー。大丈夫かハリー」
「真っ先に掴まってごめんヴォル」
想定していたとはいえできればそうなりたくない、と思っていたハリーを慰めるように頭を撫でる。震えるピーターがしもべの肉と言ってしなびた手を切り落とし、別の男が袋の中からきらきらとしたものを鍋へと入れる。
「分霊箱の魂を使い、俺様を複製するということか。なるほど、俺様の血とハリーの血、しもべの肉とカスの骨……そして記憶を使うと」
何が目的か。それが分からないためにわざとここまでするしかなく、様子を見ていたとはいえ、ヴォルは本当の愚か者だ、とかつての腹心の部下を残念なものを見る目で見る。
「ねぇヴォル。あの記憶ってあれだよね」
問いかけるハリーにヴォルはそうだな、と頷き泡立つ鍋に視線を移した。出てきたらすぐに殺してやろう、とじっと見つめるヴォルだが、ハリーはこっちを見てという風に腕をつかむ。
「記憶の穴埋めのための記憶だろうけど、今のヴォルの記憶を持ったらヴォルとどう違うの?」
どう思う?と小首をかしげるハリーに死喰い人らの視線が集まり、鍋が覆い隠されるほどの煙に歓喜の声を上げていたベラは壊れた人形のように振り向き、だんだんと目を見開いていった。
「あ……」
言われてみれば確かに、とヴォルは鍋から目を離してハリーを見つめ、小さく声を漏らす。あぁあ!と慌てた声が死喰い人らから上がり、ベラは絶句したまま動かない。もしかしたら石化してしまったのかもしれない、と固唾を飲む中鍋から人影が現れた。
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