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 ホグズミードからの帰る道をハリーは腰とお尻が痛いと、文句を呟きつつ嬉しさを抑えきれないといった顔で、足早に城へと急いでいた。
 そろそろ戻らなきゃ、というハリーにヴォルデモートは自分が好きかっていたせいで会えなかったことを棚にあげて、久しぶりなのだからもう少しいいだろうと時間ぎりぎりまで迫られ、熱いヴォルデモートの想いを注ぎ込まれた。
 魔法使いが長生きだからって元気すぎると、思い出したハリーは顔が赤らみそうになるのをしっかりしろと頬を叩いてひき絞める。

 大広間に入ればすでにハーマイオニーとロンがいて、こっちよ、とハリーに手を振る。
「まっくもう、遅かったじゃない。ちゃんとホグズミードにいたの?全然姿を見なかったわ。」
 ハリーが席に着くなりやはり気にかけていたらしいハーマイオニーはどこにいたのかと問う。
「えっと…前にシリウスとあったほら穴みたいなところだよ。」
 村のはずれなんて行っていないはず、と祈るような気持ちで答えるハリーにハーマイオニーはあぁ、あそこねと納得したのか前を向いた。
「僕たちはゾンコに言ったら在庫整理中で売り切ればっかりで…。その他の店がいつもより混んでたせいで全然買い物できなかったし…。バタービールだけ飲んで帰って来たんだ。」
 退屈だった、というロンはどこかツンとしたハーマイオニーにハリーは何か察したのかロン、と小さくたしなめる。
 どうしてたしなめられたかわからないロンはきょとんとして、全然気が付いていない様子にハーマイオニーがため息をつきくすくすと笑う。


 いつも通りの一日。
 いつも通りの週末の光景。

「ミスグレンジャー、ミスターウィズリー。話があるため、今すぐ来ていただこう。ポッター、食事後、魔法薬学教室まで来るように。」
 突然現れたスネイプの言葉にロンはむせかえり、ハーマイオニーは神妙な面持ちで頷いて立ち上がる。
ぶつぶつと文句を言うロンをハーマイオニーがひっぱっていき…取り残されたハリーは周りの好奇の目にもわからないと首を振った。
 何が何だか分からないハリーはふと教員席を見て、マクゴナガルの顔がこわばっているように見え…その隣のダンブルドアのいつものような柔和な顔をしながらもどこか窺うような温度のない目とあい、背筋に冷たいが流れたようにぶるりと体が震える。
 何かあったのか…。
 それともまさか…。
 そんなはずないと頭を振るハリーは食欲もなくなりじわりと浮かぶ冷や汗にジュースだけ飲むと地下へと足を向けた。


 ひんやりした地下牢はどこかピリピリとした雰囲気があり、ハリーは大丈夫と自分に言い聞かせて扉をノックする。
 扉が音を立てて開き、スネイプが入りたまえ、と中から声をかける。
中に入れば絶望と驚きと…複雑な表情をした二人が振り向き、泣きそうな顔をされたことにひやりと嫌な予感がする。
スネイプに睨まれるように見つめられ、そこの座れとばかりに示された椅子に腰を下ろす。
 何を言われるのか、何が起きているのか、気が気でないハリーは扉が開き、ダンブルドアをはじめとして複数の教職員が中へと入ってきたことに身をこわばらせる。
 マダム・ポンフリーがハリーの正面にくるとハリーの顔を左右に動かし、頭に杖を当てていくつか呪文を唱える。
 震えるハリーに変化がないことと、試した呪文に何の効果もない事にマダム・ポンフリーはがっくりと空いている席に腰をおろした。
 痛いほどの沈黙と視線にハリーは自分の腕を軽く抱き込む。
誰もが黙り込む中、沈黙を破ったのは静かにハリーを見つめていたダンブルドアだ。
「ハリー、聞きたいことがあるんじゃが…。今日はどこにいたのかな?」
「叫び屋敷にいました。」
 静かな問いにハリーは震えながら小さな声で答える。ダンブルドアに嘘やごまかしはできない。
恐れていることが当たりませんようにと、知られることへの恐怖でいっぱいだ。
「一人ではなかったんじゃろう?」
 ダンブルドアの言葉にハリーは顔が青ざめるのを自覚する。口が渇いて言葉が出ない。
「あの…おっしゃる意味が…。」
 絞り出した声はしわがれていて、ダンブルドアの視線を受け止めていられずに思わず俯く。
「昨晩、ミスグレンジャーからポッターの様子がおかしいと相談をうけましてな。今日一日の行動を全て我輩が見ていたのだ。途中、透明マントで消えたようだが、ポッターを尾行するのに問題ないことだ。」
 じっと見つめるスネイプの言葉にはっとなるハリーはハーマイオニーをみる。
ハリーと目が合うと、ハーマイオニーは悲しげに目を伏せてこぼれ落ちた滴が堅く握りしめた手をぬらす。
 彼女はきっと自分を心配して、と理由がわかるハリーだが、秘密ぐらい作ったもいいじゃないかと再び俯いた。





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