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 そんなこんなでドキドキを抱えたまま…え?日曜日?
「とっ当日になっちゃったよ!」
「何を今更言っているのよハリー。ほら、裾のしわ伸ばすから。」
 仕度を手伝ってくれるのは我らがハーマイオニー。彼女のお陰で白いウェディング…スーツかな?は真っしろピカピカだ。
 最後の仕上げと、コサージュを胸につけてもらい、ブーケを渡される。
…ブーケって女性だけ…じゃないのかな
「私達だって本当に例のあの人…ヴォルデモートと貴方が結婚するなんて今だに信じられないわ。」
 プロポーズしてくれたということは彼がしたっていうことで、想像もつかないというハーマイオニーに思わず笑いがこぼれる。
「僕も今だに信じられないんだ。」
 ヴォルデモートのことを知りながら応戦してくれたハーマイオニーに感謝しかないハリーは夢を見てるようだと、ブーケを顔に近づける。
 甘い匂いにこれが現実なのだと再認識され、うれしくて顔を赤らめながらの笑みが消えない。
「ハリーが選んだ相手だもの、私は喜んで祝福するわ。でも考えたわね…。杖の持ち込み禁止と、始まるまで来客が見えないように魔法がかかっているうえに出入口まで別って。」
「だって、絶対顔を合わせたら流血沙汰になりそうだし…ヴォルの呼んだほとんどが仮面かぶっているから…。」
 血塗られた結婚式なんて絶対に嫌だ。
「それもそうね。ほら!時間よ!ハリー、頑張ってね!」


ざわざわとしている僕の参列者席と…反対の恐ろしく静かなヴォルデモートの参列者もとい死喰い人一行。あぁ…不気味すぎるのと、両者が見える僕にはギャップが大きすぎてくらくらする光景だ。
 僕が歩くたびに見えなくなっていた魔法が解けていく。
次々に「あっ!」という声がしたけども無視。振り向いて僕を待つヴォルの姿がなんだかまぶしくて、それしか気にならない。
 死喰い人一同は恐ろしい光景だけれども・…誰も彼も落胆しているようだ。
『あやつらを説得するのに手間がかかった。』
前日そうぼやいていた彼の顔が目に浮かぶ。
 絨毯の先では黒いタキシードを着たヴォルと、ニコニコとするダンブルドア先生。
僕の隣を歩くリーマスの手からヴォルの差し出された手に触れると、参列者を隔てる魔法がすべて解かれる。
 ちらりと視界に入ったのは人の影であんまり見えないファッジ。
 周りの反応に何があったのかきょろきょろしているけど、ヴォルの参列者は見えていないみたい。
「アーサッ…」「ルシッ…」
「「静かにしなさい!」」
 同時にあがった声は互いの連れ合いにひっぱたかれ、すぐに消える。 
 シリウスには…それとなく報告しておいた。とてもじゃないけども面と向かって報告できず、手紙で済ませてしまってから彼の反応は見ていない。

 ふと、背後で犬の鳴き声が…変身してきちゃったんだね…。
 ごめんね。この会場“犬禁止”なんだ。
 梟はヴォルが説得したと言っていたけど…絶対に服従呪文とか使っただろうな。

 結婚したからにはそいういところも注意しなきゃ。
マグルの牧師さんはヴォルデモートが激しく拒絶したため、どうしようかと困っていたらダンブルドア先生が代わりをやってくれることになった。
…過去のトラウマダとかなんだかを思い出したヴォルデモートがそれぐらいならマグルの牧師でいいと拒絶したけども…結局は折れてくれた。

 いつもと違う服装のヴォルデモートに思わず見とれて、うながされるままにダンブルドア先生に向き直る。
「ほっほっほ。では、始めるとするかの。では、汝、トム・マーヴォロ・リドル…」
「おい、爺。」
 ごほん、と咳払いし始めるダンブルドア先生に苛立つヴォルの声が鋭く刺さる。
やっぱり本名は嫌なんだね。
まぁ僕はヴォルデモートでもトムでもどっちもヴォルだからどっちでもいいんだけどさ。

「わかっておる、わかっておる。汝、ヴォルデモート卿」
「なんですとぉぉぉ!!!???」
 突然上がった声にびきっと、隣から不穏な音が聞こえて…慌てて左手を抑える。
「ファッジ、静かにせんか。これトム、杖は持ち込み禁止じゃったじゃろう。」
 笑いながら窘めるダンブルドア先生にびきっという音が増えて、杖を何とかもぎ取ると懐に長いヴォルの杖をしまう。
「ヴォル、杖の持ち込みは禁止だってルール決めたでしょ!式が終わるまで没収!」
 それにしても…只でさえ長いヴォルの杖をどこに隠していたんだか…。
「しっしかしまさか…そんなことが…。」
 おろおろと意味不明な言葉を続けるファッジ。僕を闇払いにと推薦したのにその結婚相手がよりによって一番警戒されるべき相手だっていうことに衝撃を受けているみたいだ。
 死喰い人たちから発せられる謎のオーラのせいで次第に声が小さくなってついには黙る。
「では、続けるとするかの。」

 こうして再開された式は滞りなく進んで…。誓いますと言った瞬間、幸福感に包まれて照れながらちらりとヴォルを見つめる。
「それでは誓いの口づけを。」
 最後の誓いのキスにうめき声のような叫び声の様なものが聞こえた気がするけども、そんなこともどうでもいいぐらい幸せで家族になったことが嬉しい。
 名字はお互いに変えないことにした。少しさみしいけども、リドルの性は残したくないのと、やっぱり両親の事からポッターの性は名乗りたくないということで…。仕方ないね。





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