Wedding

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 ふう、とため息をつくのは秘密の恋人と逢瀬中の僕…ハリー=ポッター。
夏も見えてきた夕方の叫び屋敷。シャワーを浴びてのんびりする時間。
表面上では戦うふりをして、絶妙なタイミングで杖をつなげで引き分けになったり…。とにかく苦労が多い。
「どうした?最近うかない顔をしているぞ。」
 隣で一緒に座っていた恋人…ヴォルデモートが首筋に顔をうずめてきて、元気づけるようにちりっとした痕をつける。
「別に。僕ももうすぐ卒業だなって…。この先もこうしてこっそり会うしかないのかなぁってちょっと思っただけ。」
 今はもう最終学年。もう卒業が秒読みだ。今はまだ叫び屋敷と言う逢瀬する場所があるけれども、卒業後はそうはいかない。
 僕の就職先はヴォルと戦いたくはないけど、やってみたいと思っていた闇払いだ。闇の魔法使いも闇の魔法使いであるヴォルデモートとは戦いたくはないけども、魔法省が打診してきて、断るのも怪しまれるかと思い悩み中だ。
 ヴォルデモートに言わせれば英雄と言う名前が欲しいのだろうと鼻で笑っていたが僕もそう思う。

 このまま秘密の関係のまま…秘密で終わってしまうのかもしれない。
着替えて帰り支度をしてしまう間、ため息がでてしまうのはもう仕方がない。


 それじゃあ、と振り向く僕の目の前に小さな赤い箱が差し出された。
 箱…箱!?
 なにがなんだかわからずヴォルデモートを見上げると、いつもの不機嫌そうにも見える様な本人いわく真顔でじっと僕を見下ろして箱を受け取れと催促するように動かす。
 戸惑いながら受けとると小さな箱だ。まごうことなく箱だ。でもこのサイズでちょっと高価そうな手触りで…。受け取っただけの僕にさっさと開けと催促する。
「これを開くの?」
 呆れたような顔で頷かれて、恐る恐る開いてみる。
 何が入っているのか…恐ろしくてしょうがない。
 僕はピアスなんて開けていないし、もちろんネックレスと言うサイズでもない。

 わずかなきしみ音と響かせ開いた箱の中に現れたのはきらりと赤い光を反射する小さな宝石がついたシルバーリングで…。
 ちょっと待ってこれじゃあまるで…。
「ハリー。」
 驚く僕に低い声が聞こえる。箱から指輪を取り出し、箱を支えていた左手をもちあげられる。
「俺様と結婚しろ。貴様を一生放しはせん。…返事は!」
「よっよろこんで!」
 指輪を見つめる僕の前で膝を折って視線を合わせる彼は、まだ混乱と驚きから戻ってこない僕に強くいうので、声が裏返ったまま返事を返す。
 それでよかったのか、口角を上げたヴォルデモートが僕の左薬指に赤い輝きをはなつ指輪をはめてくれる。
 誰かが見ていたらもしかしたら脅迫とかそんな風に見えてしまうかもしれないヴォルデモートに嬉しくて飛びつくようにすがりつき、嬉しくて仕方ない事を伝えるため、キスを繰り返す。

「結婚式は卒業後の日曜日だ。準備は出来ている。友人らも呼ぶといい。新居の鍵はその時渡す。」
 新居とかどうしようかなとか、流石に結婚式はあげないだろうなとか、抱きつきながら今後の事を考えて考えて…。降ってきた言葉に思考が停止する。
 新居とか結婚式とか二人で話し合うものじゃないのかとか、色々言いたいことはあるけどもその前にもう全部決まっていることが彼らしいとさえも思えてしまう。
 それにしても結婚式…嫌な予感しかしない気がするけども、それよりも嬉しくてしょうがない。


 卒業式も無事終わり、仲の良かった学友やとっくに卒業した先輩、知り合いの人たちに声をかける。5年生の時にちょっとした事があって、僕が年上の同性と付き合っていることが知られて…そのおかげで招待した皆はその時の相手ねとすぐに納得してくれて祝ってくれる。
 ウッドやアンジェリーナ達、チョウやネビル、ウィーズリー家の皆とグレンジャー夫妻。リーマスまで皆喜んで祝福してくれた。相手がヴォルデモートということには絶句していたらしいけども、それはあとで聞いた話だ。
 ダンブルドア先生はあのプロポーズの後でにこにこしながら祝ってくれて、ホグワーツの教員一同も来てくれると事になった。招待していないはずのファッジがどこかで聞いたのか参列してくるという手紙も受け取った。相手が誰だかは知らないらしい。
 ヴォルデモートの方の参列者と言えば死喰い人だろう。マルフォイ氏とウィーズリー氏その他もめそうな気配がしてかなり不安だ。





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