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「アルバス!何故この…〜〜〜っ!!!ヴォルデモートを教員になさったんですか!!生徒の安全はどうなさるのです!」
 理解できません、と机にグラスをたたきつけるマクゴナガルは勢いで説教した二人を睨むように見つめた。
 マダムが事前の配慮で貸し切りにしていた3本箒で歓迎会という名の自棄飲み会と化した中、逃げられなかったハリーはヴォルデモートの隣でただ小さくなるしかない。
 生徒の安全…つい先ほどまで生死にかかわることだけを心配していたマクゴナガルは心配すべきはそこではなかったと、先ほどの未遂事件を気にかけなければならなかったのかと、マダムが心配する中おかわりを頼む。
「可愛い恋人の頼みでまともな生活をしようと職を探していると聞いての。それで本当に更生する気があるのならばと、昔やりたいと言っておったのを思い出して声をかけたんじゃ。愛の力は本当に素晴らしいものじゃな。」
 楽しげなダンブルドアの言葉に、本当にどこからその情報を…と頭が痛いといった風なしもべを睨みつけた。
 まさかお前がダンブルドアに?と無言の圧力をかけられたスネイプは、二人の関係を先ほど知ったのと決して自分ではないと首を振って無罪を訴える。
 愛の力と聞いてむせ込んだ他の教員は信じられないと、恥ずかしさで顔を赤くした生徒と、不機嫌そうな闇の帝王に目を移してやってられないとばかりにグラスを仰ぐ。
 
「だからと言ってこんな…こんな犯罪者を!ミスターポッター!なぜこんな碌でなしの犯罪者を好きになったのです!」
 突然マクゴナガルに矛先が自分に向いたことに驚いたハリーは、飲んでいたバタービールにむせた。
「えっと…なっなんとなく…。」
「なんとなくじゃありません!坂いったいどんな経緯があったのかいいなさい!」
「そっそんなこと言われても…。」
 すごい剣幕のマクゴナガル(酔い)につめられ、ハリーは経緯…とヴォルデモートをちらりと見つめる。
 光に集まる昆虫のように…強い闇の光を放つ根源にふらふらと興味本位で近寄り、油断したすきに絡みとられ、気が付いたらこの男に落ちていたのだ。
 ヴォルデモートが自分をいつから、などははぐらかされてしまい未だに聞けずにいるが自分としては何が何だか分からないうちに、といった言葉がぴったりだった。
「まぁまぁミネルバ。尋問はそれぐらいにして新しい門出を祝おうじゃないか。」
 困っているハリーにウィンクするダンブルドアが仲裁に入ると、ヴォルデモートは嫌そうな顔をしてグラスを傾ける。
 
 
 これは夢だとブツブツいいながら新学期について話を始める教員たちは早くも潰れかけれているマクゴナガルを介抱していた。
 今年のウィディッチについてだとか、新入生についてだとかを話し合う中、早く部屋に戻りたいと、スネイプはグラスを手に取り、視界の端で動いたものを反射的に目で追う。
 その途端グラスが手からこぼれおち、机にぶつかって大きな音がたつ。
 その音に雑談していた教員らは会話を止め、スネイプの視線の先…酔って恐怖心が和らいだヴォルデモートと、慌てて居住まいを直すハリーを見る。
 彼が飲んでいるのはノンアルコールのバタービール。
 なのに何だか様子がおかしい。
「まさか…未成年に酒を飲ませたんですか!」
 フーチの良く通る声にマクゴナガルははっと顔を上げると肩をすくめて見せる帝王を見る。
「直接は飲ませていない。」
 真っ赤になったハリーの腰に腕をまわしたままグラスを傾けるヴォルデモートは早く終わらないかと、少し苛立ちながら何が悪いと答える。
「口うつしでもだめじゃよトム。」
「只の口づけだ。」
 だめじゃよ、というダンブルドアに誰のせいで中断させられたのか、と不満そうなヴォルデモートは酔ったのかふらつくハリーを支えるように抱き寄せ、文句があるなら帰るぞという。
「貴方が飲んでいるのはこの3本箒でも一番強いもの…しかも5杯目!」
「そんなものを飲んだ後でしないでいただきたい!」
「むしろ公共の場で生徒に・・・はしたない!」
「せめて校内…いや室内で!」
「学校内に生徒に手を出す高齢な教員がいるなんて広まったら大変!」
「いちゃつくなら人目を避けなさい!」
 口々に上がる声に高齢は余計だとグラスをからにするヴォルデモートは酔った勢いで何を言っているのか自覚のない…明日授業があるはずの面々をじっと見つめる。
 これならば…と何かをもくろむヴォルデモートはニヤリと笑った。




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