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 そして占い学では案の定トレローニー先生の「本日確実に闇の帝王にハリーは殺される」という予言を言われ続け、うんざりした様子でやっと終業ベルが鳴りハリーは一目散に階段を駆け下りた。
 もちろん、背後から呪いのように聞こえるトレローニー先生の予言(?) を無視しつつ。
「もう最悪だよ…。」
「あれだけ言われればそりゃこたえるよな…。」
「本当だよ。…恋人同士なんて知られたらそれこそ酷い言葉が投げかけられそうで…本当に怖いよ。」
 ぐったりとした様子のハリーとロンはハーマイオニーに合流すべく次の教室へと足早に廊下を進む。
 ふと、反対方向…防衛術の教室がある方向から例の双子が足取り軽くやってきた。
ロンとハリーを見つけた二人は足を止めてふふんと胸を張る。
「フレッド、ジョージ。すっごく機嫌よさそうだけど…どうしたの?」
 ハリーが声をかけると鼻歌交じりに答えた。
「良くぞ聞いてくれました我が君。」
「実は昨日の仕返し…もとい挨拶のため防衛術の教員席にとある仕掛けを施してきたのでありますとも!」
「もちろん、姿も何も証拠も残さず実行してまりましたのでご安心を!」
 深々と芝居じみたお辞儀をとると、じゃあ後で報告してくれよ!っと言い残し二人を置いて去ってゆく。
 闇の帝王に悪戯…。
 ロンは無意識のうちにハリーの肩に手を置く。
「…明日兄貴達が死なないように頼んだ。」
「うん…。了解。」
 
 
「大丈夫なのかしら…。」
 いよいよ3時限目の防衛術の授業。
二人から事情を聞いたハーマイオニーは、念のため椅子を調べてみたが何も仕掛けられておらず、いったい何処に仕掛けられたのか発見できずにいた。
「多分…。後で二人に危害を加えないように交渉してみるから大丈夫だと思うんだけど…。」
「ハリー、そういうことじゃなくてヴォルデモートってダンブルドア先生並みの力を持っているじゃない。ということは…なんらかで発見して解除しようとして…ほら、絶対に簡単にはずせないようになっているじゃない?だからいろいろな意味で大丈夫かしらってことよ。」
 つまり解除しようとし、それが暴発してしまったら自分達にも少なからず被害が及ぶのではないかという心配であったりする。
 驚いて暴発させるヴォルデモート…見てみたいかも、と笑うハリーはどこにいるんだろう、と奥の扉に目を向ける。

 あれこれ考えている間に始業のベルが鳴り響く。
 それとほぼ同時に開く扉。
 中に入ってきたヴォルデモートは全くの無傷でどうやら二人の罠にははまらなかったらしい。
「教科書…15ページを開け。今年度一年間俺様が教えることになった。先ほどここに来る道中ウィズリー家の双子から手厚い歓迎を受けた…が、証拠を完全に消そうが俺様の目を誤魔化すなんて100年甘い。というわけで二人には居残りの罰を与えた。…まぁギリギリ死なんだろうがな。」
 不敵な笑みを浮かべさらりと付け加えるヴォルデモートにロンは小さくうめき、とりあえず罰則で終わったことにほっと息を吐く。
 ちなみにハリーに言わせればヴォルデモートの不敵な笑みでも素敵な笑みに見えるらしい。

愛は盲目とはよく言ったものだ。

「せっ先生、いっいったいどんな罰を…。」
「身をもって知りたいか?ミスタートーマス。言っておくが罰を受けたものに内容を聞くのはできぬ。一ヶ月間持続する魔法により口外することはできんようになっている。一ヵ月後にはまた別の罰則に変わるので聞いたところで何の役にもたたんはずだ。」
 もっとも、口に出したくはないだろうがな、と黒い笑みを更に深くする。
 その笑みにディーンは質問するんじゃなかったといわんばかりの表情を浮かべ目を合わせないようにうつむいた。
 ちらりと視線を上げたヴォルデモートは心配気な顔のハリーと目が合い、目を細ませた。

 教室内に緊張ともなんともいえない空気が漂い授業が始まった。
部屋の片隅に設けられた台には大きな蛇…ナギニが鎮座しており、とぐろを巻いて興味なさそうに生徒を見る。
《ナギニ、俺様の戸棚からアレをもってこい。》
《いやです。届きません。めんどくさいです。あれってなんです。》
《…本当に機嫌が悪いのだな。まぁいい。》「アクシオ」
 ハリーには内容が分かるのだが、やはりパーセリングができないほかの生徒達は空気の抜けるような音にただおびえていた。
 ふん、とそっぽを向くナギニにヴォルデモートは小さくため息を吐き、杖をふるう。
 ヴォルデモートが呪文を唱えると飛んできたのは何の変哲も無いように見えるただの紙。
「これはその図に載っている血憑紙(ちよがみ)という呪いの対象者の血を入れることで血に憑く呪いの紙だ。もっともわざわざ取りに行くなどということをするよりも、直接呪いをかけたほうが効果的だがな。指印の際に摩り替えてしまえば証拠なくして呪いをかけることができる。原因不明の病気などにかかったのならば迷わず解呪の上級魔法を唱えればよい。それでも直らない場合は…諦めるのだな。」
 再び呼び寄せ呪文を唱えるとネズミの入った籠が飛んできた。
ヴォルデモートはネズミを取り出すと手先を切り、その紙に手形を押させた。
すぐ効くわけでは無いそうで、闇の魔術に対する授業(実際使った呪いなどなど)を淡々と行い、終業のベルが鳴ると同時にネズミは病気にかかりあっという間に命を落としてしまった。


「さすが元闇の帝王…持ち物が一味違う。」
「そういえばナギニから聞いたんだけど、闇の道具って大体が一度使うと捨てることができなくなるんだってさ。何にもせずに捨てたり手放したりするとかなり危ないんだって。」
 だからたくさん持っているらしくて…というハリーは小さくため息をつき、それなら仕方ないかなってと言う。
 あの後誰も彼もが死んだネズミを見て青い顔をしていたなか、ハーマイオニーとハリーは少し眉を寄せただけで、片づけるナギニを見つめていた。
 呪いのグッズについてはハリー自身あまり良くは思っていないらしいがほとんど諦めているらしい。
「ヴォルと付き合うには諦めが肝心だもん。それにナギニが大体はとめているし…。」
「…主従関係逆転しているんじゃないの?」
「う〜〜ん…かろうじて大丈夫かな?」
 あくまでもナギニの機嫌がいいときだけに限定されていると言うのは先ほどのやり取りからなんとなく二人は察する。
「それはそうと…今夜は行くんでしょ?」
「え!!あ、うん。」
「まだ時間は早いし…たくさん話せるわよ。」
 顔を赤くしたハリーは幸せそうに頷く。




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