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「きゃ〜〜!!!」「うわっ!」「例の…」「ご隠居!」「元老!」「おっさん!」「猫男…あ、蛇男!」「トムでねぇか!」「うわっ…」「うげっ」「だから我輩は…」「はぁ…何を考えているのか…」

 
「黙れっ!!!」
 紹介されたと同時に騒がしくなる大広間に怒鳴り声が響き、途端に静まる大広間。
「ナギニ、ご隠居と元老といったやつを締めて来い。というわけで…ダンブルドアから聞いたとおり、とりあえず一年間、俺様が闇の魔術に対する防衛術を教えることとなった。異論あるまい?」
 げっそりとする教員の席の末端に、ふんぞり返るように座ったヴォルデモートにざわめきが収まらない。
 なぜホグワーツに行くのだろうと考えていたロンは驚きで目を見開き、ハリーもまた驚きと一年間ずっとそばにいられることに目を輝かせた。
「うそっ!?あのあのっ…例のあの人が…防衛術の教員!?!?うそだぁ!!!」
 ただでさえ、何か起きるのではと列車に乗っている間ずっと思っていたロンだが、まさか教員になるとは思っても見なかったのだ。
 これから一年間被害者が出ないことだけを祈る。
 
 だが、そんな祈りをしていると斜め前方、フレッドとジョージが叫び声を上げた。
「げっ!何で分かったんだよ!!!」
「悪かったって…。ハリー!パーセリングしてくれよ!!!」
 生徒の誰もが予想していたであろう双子に大蛇がするすると這い登っていく。
「でも一応ご隠居って丁寧に言ったんだし…。」
「元老なんて地位が高いじゃないか。それどこが不満…いたたたたっ!!」
 二人揃って座っていたこともあり、長い体を生かして二人まとめて巻きつくナギニに悲鳴を上げ、ハリーに助けを求める。
《ナギニ、そこまでにしておいたほうがいいと思うよ…。じゃないと…何かの実験にされるかも…。》
《あらハリー。心配ありがとうね。でもだてにご主人様に仕えているわけじゃないわよ。かわし方ぐらい身についているわ。》
 ハリーが話しかけるとナギニは鎌首を持ち上げウィンクする。
蛇語は他人には知られないので様々な話が堂々できるのだが、縛り付けられている本人達には耳元で空気の抜けるような音がし、気が気でないようだ。
《あ、そうだ。今夜遊びに行ってもいいかしら。来たばかりだから部屋が汚くて…。まだ私のねぐらも確保されていないのよ。》
《何か荷物あったの!?》
《えぇ一応。闇の魔術に関する本や道具。それから…とてもいえないような物とか…。まぁいろいろとね。あんまり深く聞かないほうがいいと思うわ。》
 いたずらっぽく言うとハリーの返答も聞かず、二人を放し主人の元へと帰っていった。
 
「あの蛇!!絶対覚えていろよ!!」
「あの蛇男もだ!!」
 怒りを露に、でも小声で復讐を誓う二人の声を聞きながらハリーはこれから一年間、いったいどんなことが起きるのだろうとわくわくしながら食事を後にした。


 こうして波乱の予感がする入学式兼、始業式が終わり翌日のホグワーツ授業初日。
本日、問題の闇の魔術に対する防衛術第一回目のクラスはハリーのいるグリフィンドール。
時限は3時限目。
よりによって占い学が最初の授業だ。
占いで何を言われるのか分かったものではないとハリーはうんざりしていた。
かといって数占いに移る気は毛頭ない。
「そういえばハリー。昨日は会ってみたの?」
ハーマイオニーがそう聞くとハリーは首を振った。
「え〜っと。行こうかなぁって思っていたらナギニが来たからそのままいろいろと話していたよ。朝起きたらもういなかったけど。」
 まだ寝床がないのと、ダンブルドア先生が来て不機嫌だったから逃げて来たらしいんだ、というハリーに同室のロンは驚いてあの蛇が?と繰り返す。
「ちょっとまって!ハリー!あの大蛇が君のベッドにいたの!?!?」
 何も知らずに熟睡していた己が信じられず、問いかけるがハリーはうんと何でもないように答えた。
「僕に巻きついてたよ。まだ暑いから変温動物の冷たさがとっても涼しかったんだ。」
 にっこり笑うハリーにロンは絶句し、ハーマイオニーのほうを振り向くが、こちらも笑顔でいいわね〜とさえ言っている。
 気持ちを落ち着かせるためにとりあえずかぼちゃジュースを口に含む。

「似たようなあの人もそうなんでしょ?」
 ハーマイオニーの何気なさそうな言葉に、ロンは飲んでいたかぼちゃジュースを勢いよく噴き出す。
 3人にしか聞こえていなかった会話に何があったのかと、注目が集まるとハリーは顔を真っ赤にしてわたわたと手を振る。
「なっなっなっなっなっな!?!?何それ!?どっどういうこと!?」
 軽くパニックを起こしているロンを尻目にハーマイオニーはハリーに目線で答えの催促をする。
「なっなに言い出すんだよハーマイオニー。そりゃぁ…低血圧で体温低めだけど………」
 顔を真っ赤にしたハリーは答えるが、今にも顔から湯気が立ち上りそうになり、途中で声をすぼめてしまった。
「…なるほどね。まぁこれ以上聞くのはロンが耐えられそうに無いから聞かないけど、大体は想像ついたわ。ありがとうハリー。」
 満面の笑みでハーマイオニーは2人に手を振ると上機嫌で数占いの教室へと足早に去っていってしまった。
「なんかハーマイオニー変わった?」
「そうかも…。」




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