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5:今後のこと

「ちょうど二人がそろっているので尋ねますが、二人は7学年目を復学しますか?それとも、軽い講習を受けた後に、卒業認定試験を受け、ホグワーツの卒業資格を得て卒業か、選べますがどちらにしましょう。あぁ、魔法薬学はこの一年だけは引き続きスラグホーン教授が行いますが、体力的にも精神的にも休みたい、という事でしたので来年からセブルスに打診する予定になります。校長の椅子にはもう座りたくないという言葉をもらっていますので、次期校長が決まり次第、彼は魔法薬学教授になっていただこうかと。ハリエット、彼が望めば自宅からの通勤というていをとることもできますので、安心なさい」

 いつものきりっとした様子のマクゴナガルに二人は居住まいを正し、顔を見合わせる。
「僕は今、魔法省から闇払いに入らないかと打診を受けています。もちろん、復学後でもとは言われていますが……。正直迷っています」
「私は……。後で返事でもいい?ハリーと少し話したいから」
 正直迷っている、というハリーにかつてどちらかを選んだであろうハリエットはどうしようかな、と言いつつ今後を想像して少し顔を赤らめた。まだ駄目だからね、とむっと睨むハリーにハリエットは別にいいでしょ、と睨み返す。

「わかりました。あぁ、それとセブルスに正式に名前を伏せてはありましたが先方から招待状が届いておりました。あなたも共に来るようにと。フォーマルは少し大げさでしょうから、カジュアルフォーマルあたりのワンピースが必要でしょう」

 頷くマクゴナガルは招待状が来ていた、というのを告げてそっと微笑んだ。既に両親がいないスネイプだったため、その家への挨拶などはなかったはずが、プリンス家がまだ当主が存命であることからそこに挨拶に行く。そのことを暗示していることにハリエットは気が付き、ちゃんとした服装で行かないと、と顔を赤らめた。

「できればもう少しポッターの名前のままでいいとは思いますが……とはいえ、このままいけばイニシャルの変更はないでしょうね」
 微笑みかけるマクゴナガルにSじゃないのか、とハリーは考え……はっとした顔でハリエットを見る。照れている様子からまだ駄目だからね!とハリーは繰り返す。

「私のタイミングじゃなくて、先生のタイミングになるから知りませーーん!」
 ふふん、というハリエットにダメだからー!とハリーは言う。
「とはいえ、私と……聞けば伯母にも挨拶をしなければならないでしょうね」
 待っていますよ、と悪戯気な目にハリエットは口をとがらせ、ハリーはどこか楽し気に笑う。あ、そういえばとハリーはハリエットを見る。

「ずっっっっとハグも会話もできてないって、シリウスが嘆いていたよ」
「あ、そういえば……。今シリウスってどこにいるかな。大広間?」
 しょげてた、とハリーに言われ、ハリエットはそういえば下着付けてないから恥ずかしい、と蘇った時に断り、それ以来ずっとスネイプといて……会話らしい会話をしていなかったと思い出す。僕も話したいことあるから行こうか、と二人そろって立ち上がりマクゴナガルに別れを告げて部屋を出る。

「こうして二人で歩くの、なんか新鮮」
 ずっと校内にはいたのにね、と笑いあう二人を絵画たちは物珍し気に、微笑まし気に見送った。


 大広間にはおらず、中庭の修復をしていたはずと聞いて、二人はそちらに向かう。
「シリウス、今大じょ……ぶっ!」
 中庭から声が聞こえ、ハリーとハリエットはそろって顔を覗かせ……声をかけたと同時に二人まとめで抱きしめられ、ゴツンと頭をぶつけた。こういう勢いあるコミュニケーション……アニメーガスが犬なの何か納得できるかも、とハリーとハリエットは笑いあう。

 するりと抜けだしたハリーに倣ってハリエットも抜け出そうとして、ぎゅっと抱きしめられる。覆いかぶさる様なシリウスにハリエットはえーっと、と戸惑い……震えるような手にシリウス?と首を傾げた。

「記憶がないのはわかっている。けれど……君が俺の姿で出ていったとき……君が……帰ってこないと聞いて。ムーニーたちを助けてという手紙をみて。あいつを生かすために君が……君が消えたと……」
 君にもう二度と会えないかと……。そう言葉を詰まらせるシリウスにハリエットは目をしばたたかせた。何をやったんだ自分、というのと同時にシリウスといいスネイプといい……だいぶ心配をかけたのだと、それが分かってハリエットはごめんね?としか言えない。

「ようやく再会できたと思えばあいつに抱えられているし、ハリーが服とかいいだすし……。ハリーとハーマイオニーが抱きしめていたからと、俺も加わろうとしたら恥ずかしいと断られ……。やっと、やっとこうして抱きしめられた」

「えぇっと……私はどこにツッコミを入れればいい?」
 ぎゅうぎゅうと抱きしめられるハリエットはシリウスの言葉にごめんね、と思いつつ途中からいやそりゃ恥ずかしいし、と首を傾げ……なにがなにやらとハリーを見た。肩をすくめて見せるハリーにこれも一年間やらかした未来であり過去の自分の仕業か、とハリエットはふぅ、と息を吐いて心配かけてごめんね、とシリウスを抱きしめ返す。

「もう消えたりしないよ」
 大丈夫というハリエットにようやくシリウスは離れ、ぐしゃぐしゃと髪を撫でた。ちょっと!という声にシリウスはもう一度抱きしめ、それから髪を整えるように梳く。

「あの陰湿な奴に渡したりしたくはないが、ハリエットの……すべてをかけてまで変えようとした未来の最後のピースがやつであり、君のすべてであるというのならば否定することもできないな」
 それほどまでに君があいつを選ぶというのならば、助けられた俺は何も言うことはない、とシリウスは微笑む。シリウス何を言っているのさ!と一緒に反対しようとしていたらしいハリーの抗議の声が上がる

「少しくらいは理解ある名付け親の顔をしないと、な」
 君に対してもやらかしてしまっている以上、これ以上幻滅されたくない、と見えない犬耳がたれさがったように何とも哀愁漂うオーラを発しながらシリウスは小さくため息を吐いた。
 あーうーん、と返答に困るハリーにハリエットは苦笑いを浮かべ、別にいいよと返す。アドレナリン全開の彼がうっかり口走ったジェームズ。酷く落ち込んだし、最後まで家族というものが分からなくなってしまった要因ではあるが、生まれなおして愛情を一身に受け……シリウスを取り巻く環境も以前より理解できた。
 だからといって、リリーやジェームズを自分らに求めないで欲しい、と思って癇癪を起し一回を無駄にしてしまったのはそれはそれだ。
 シリウスはその負い目もあるのか、ハリー達二人の頭をわしわしと撫でる。

「また髪の毛ぐしゃぐしゃになった!もー!」
「ただでさえ飛び跳ねているんだからやめてよシリウス!」
 同じ苦情が二人から上がり、シリウスは笑う。こっちを手伝ってくれ、というルーピンの声が奥から聞こえ、シリウスはわかった、と声を上げるともう一度双子の頭を撫でてから走っていく。


「シリウス……このあとどうするのかな」
「ブラック家の相続はキングズリーに言って戻してもらったよ。僕には……あの家も歴史も、背負うにはまだまだだから。それに、ポッター家の相続をしないと。ハリエットは……大変だった?」
 シリウスが働いている姿が想像できない、というハリエットにハリーは僕も同じ、と笑ってかつての自分はどうだったのかを尋ねる。クリーチャーに全投げ、と返すハリエットにそうだそれどうにかしなきゃ、とハリーはクリーチャーを思い出した。

「いやあの家はさ、なんというか……暮らすのには不向きなんだよね。シリウスには悪いけど。それに、レギュラスさんの部屋とか……触るわけにもいかなったから、クリーチャーに保持だけお願いして、僕はフラットを借りて住んでたな。あぁ、ハリーもあそこ便利だったし、よかったから教えてあげるよ。向かいにある家から謎の爆発?音が聞こえるおかげで多少魔法を部屋で使っていても怪しまれないし、防音魔法しておけば気にならないし。隣に住むミセスメリーが僕を見るたびに孫娘を勧めてくるけど、彼女の孫はとっくに結婚してアメリカに住んでいるんだ」

 買い物が遠いのが欠点だけどね、というハリエットにハリーは魔法が自由に使えるのはいいね、とにやりと笑う。安いんだこれが、と笑い返すハリエットに決まり、と拳をつき合わせる。

「ハリエットは……」
「私はとりあえず、漏れ鍋かどこかに泊まって……先生と相談かな」
 どうするの?というハリーにハリエットは傍にいたいからね、と照れたように笑い……ハリーが顔をしかめる。ん?というハリーはねぇハリエット、と呼んだ。

「スネイプのこと名前か何かで呼ばないの?」
 ずっと先生って呼んでるけど、とハリーに言われてハリエットは目をしばたたかせ……顔を赤く染めていく。考えてなかったんだ、と問うハリーに両手で顔を隠し、うん、と頷く。

「いや、だってさ、セ、セ……セブルス、なんて呼べないよ恥ずかしい。セブなんてなんかこう、先生の神聖な部分を土足で入る気がして……」
 絶対無理、というハリエットに、ファミリーネーム呼びは確かにナンセンスだな、とハリーは頬をかき、ハリエットの頭をよしよしと撫でる。母リリーを一途に愛していたハリエット世界のスネイプ。たとえ今のスネイプがハリエットを想っているとはいえハリエットの中ではあの記憶が鋭い棘の様に刺さっているのだろう。

「じゃあほかの呼び方にしてみたら?」
「他…他?セ……セブ……セ……セヴィ……ひゃぁあ!」
「ではこちらはハティと呼ぶとしよう」

 ほかに何かあるじゃないか、というハリーにハリエットは顔を赤くしたままスペルを思い浮かべ、セブ以外を考える。セヴィといった瞬間、背後から抱きしめられ、ハリエットは思わず声を上げて真っ赤になった顔でぱくぱくと口を動かす。抱きしめたスネイプはしれっとしている風で……ハリエットの反応を見て楽しんでいる。
 突然出てきた男と、片割れの驚き出てた悲鳴に驚くハリーだが、どうした、と飛んできたシリウスとリーマスにとんでもなく面倒なことが起きる、と顔を真っ赤にしたハリエットを見た。

 耳の先まで真っ赤になったハリエットはいつの間に振り向いたのか、スネイプの黒衣に顔を埋めている。恥ずかしがっているならどうしてそうなった、と考えるも多分一緒にいたいのと顔を見られたくないのといろいろ混ざった結果あぁなったんだろう、とハリエットの行動な理解できることにハリーは小さく笑う。

 ハリエットに何をしたんだこのくそ教師、という声と何があったんだい?という風にハリーを見る視線、黙れ犬、と低い声で言い放つのを聞き、ハリーは回れ右をしてジニーに会いに行った。

 






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