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2:これからのこと

 スネイプは要休養と言われ、医務室では人の目があるという事になりまたハリエットの部屋へと戻ってきた。寝台に腰を下ろすスネイプの隣でハリエットは嬉しそうに座り、物珍し気なシリウスと、また来ることになれるなんて、というハーマイオニー、そしてスネイプの反対隣りに座ってハリエットの手を握るハリーとで部屋はいっぱいだ。

「そうか、ここで幼少期を過ごしていたんだな」
 フクロウの置物に気が付いたシリウスはハリーのヘドウィグによく似ている、と笑いハリエットを見ようとしてスネイプを睨みつける。睨み返すスネイプとシリウスの無言のやり取りをおいて、ハリエットは手を握ってきたハリーを見てどうしたの?と首を傾げた。

「ねぇハリエット、今度さ一緒に旅行とか行こうよ!あ、それと……ペチュニアおばさんから伝言。ハリエットが付き合っているのが“あれ”ならなおのこと、一緒に来なさいって」
 家族としての思い出を増やしたい、というハリーの提案に4人で旅行に行ったことはあれど家族と呼べるものがいなかったハリエットは面白そうだねと笑い……続けられた言葉に思わず固まる。あれ呼ばわりされたスネイプはシリウスから目を離し、眉間にしわを寄せてハリーを睨む。僕じゃないので、と肩をすくめて見せるハリーは楽し気にどこに行こうかなーという。

「家族旅行というのであれば俺も行く!!」
「まだ冤罪を信じている輩がいるかもしれんというのにその間抜け面を晒していくというのかね?双子で水入らずの時間を作りたいというのが分からんのか?」
 俺も行こう!と声を上げるシリウスに、スネイプが苦言を呈し、何だと?とまたシリウスがスネイプを睨みつけた。

「そうよね。ハリエット、きっと全部終わったらスネイプ先生と同棲してしまいそうだものね、ハリー」
「同棲!?ハリエットとスネイプが!?」
 ハリエットの独身短そう、というハーマイオニーにハリーが立ち上がり、シリウスが電撃を受けたかのように口を開き、白目をむく。当事者であるスネイプは思わず咳き込み、ハリエットは顔を真っ赤にして両手を口元に置き、右手で左の薬指をさする。
 あら?と思わず口元に手を置いたハーマイオニーはハリエットの耳元に顔を寄せ、もしかして結構短いの確定している?と問いかける。思わずスネイプをちらりと見るハリエットは顔を真っ赤にして小さくうなずいた。

「本当に!?え、いつの間に……」
 恥ずかしがっているハリエットにハーマイオニーもつられて顔を赤くし、顔を見られたくないのか、そっぽを向いたスネイプを見る。ハリエットが復活して起きたのは今朝。であれば……昨晩ここで告白を……。

「認めないぞ!!ぜぇたい!なんでこいつなんかを……。大体、こいつ教師のくせに女子生徒に……いやまてよ、ハリエットは男装していたから……。お前まさか!」
「ちゃんと?ちゃんと私が先生の薬を飲んでいるのを知って……る前からか」
「いったいいつからつきあっていたのさ!だって3学年の時はスネイプに抱えられていたじゃないか!」

 クリスマスの口づけが最初だったことを思い出すハリエットはだんだん声が小さくなる。3学年の時はスネイプに抱えられて部屋に戻ったことも何度かある。地図でも寄り添っているのが見えていただろう。

「わ、私が先生を好きになったのは9歳のころだから!アニメーガスになって散歩しているときに先生にあって……その……」
「9歳!?9歳ってことは29でしょ!?なんだって……」
 何だこんな尋問受けなきゃいけないんだ、とばかりに顔をしかめるハリエットにスネイプが止まれとばかりに咳ばらいをする。ハリエットがいつから自分を好きになったのかは日記から知ってはいたが、改めて本人の口から聞くのとでは違う。ハリエットもそれに気が付いたのか、顔を赤くして恥ずかしいといいながらスネイプの肩に顔を埋めた。


「そろそろハリエットを休憩させてはどうかね?彼女とてまだいろいろ混乱しているのだ」
「そうですよ、そろそろハリエットを休ませなさい。ハリエット、たっぷり聞きたいことがありますが、いまは体を休めることに専念するのですよ。なにせ、これから先は時間はたっぷりありますので」

 そろそろ部屋からみんな出ろ、という風なスネイプにハーマイオニーはそれもそうねと部屋を出ようとして、マクゴナガルと入れ変わる。マクゴナガルは文句を言おうとしたシリウスを子犬に変化し、ハリーに渡して外へと促す。

「ハリエット、いっぱい話そう!」
 時間がまだあるんだ、というハリーがきゃんきゃんと吠える子犬を抱きかかえて部屋を出ていく。節度は守るように、と扉を閉める寸前に言われてハリエットとスネイプは気まずそうに顔を見合わせて……扉が閉まったことを確認するや否や口づけを交わした。
 食らいつくさんばかりの口づけにハリエットも応じ、きつく抱きしめあう。

「この先はまた……互いに療養を終えたら……」
 もの欲しそうな顔のハリエットを撫で、唇に口付けを落とす。顔を赤くしつつも頷くハリエットを抱えてスネイプは寝台に横になる。スネイプの目にハリエットが映っていることにハリエットは嬉しくて微笑み、ぎゅっとっ首筋に抱き着いた。

「そうだ。ペチュニアおばさん以外に……行かなきゃいけないところがあるんだ」
 片時も離したくない、という風に抱きしめ返すスネイプにハリエットは嬉しいと首筋に顔を摺り寄せ……そうだと声を上げた。先生だけで行ってもらおうと思っていましたが、というハリエットにスネイプは首をかしげるしかない。

「今度……手紙を書かなきゃ。先生にぜひあってもらいたい人がいるんです」
 自分は消えると思っていたから必ずなんていえなかったが、生き返ったいま……スネイプを約束通り連れて行かなきゃ、とハリエットは優しく撫でる手にうとうととしながらつぶやく。ぴんと来ないスネイプだが、今はハリエットを休ませようと抱え直して髪を梳くように撫でる。ほどなくして、くうくうと眠ったハリエットに口角を上げ、額に口づけるとスネイプもまた目を閉じた。

 小さな部屋で二人っきり。互いの寝息が重なり合い、部屋に一つとなった寝息だけが静かに部屋を満たした。






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