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27:引き抜かれたピン

 外部からやってきたのは騎士団員らで、ハリーをねぎらい……そして皆持ち場へと走っていく。

「ムーニー!俺はお前とだ!」
 行くぞ、と声をかけてシリウスが走りさり……ムーディが避難経路を安全に確保するとその場に残る。そこに穴をくぐってやってきたのはパーシーで偶然にもチャーリー以外がそろっていたウィーズリー家はそこで集まり、そして家族の仲を取り戻す。そこにポンという音ともに屋敷しもべ妖精が現れ、パーシー=ウィーズリーはいますか、と声を上げた。

「僕だけど……。僕に手紙?」
 一体何のだろう、と受けとったパーシーは手紙を開き……驚きで目を見開き、自分の口を自分の手で抑える。一体何の手紙だよパースーと声をかけるフレッドの手を振り払い……フレッド!と声を上げた。

「いいかい?君は絶対に僕から離れるんじゃないぞ!絶対だ!!」
「いきなりなんだよ」
 さぁいくぞ、というパーシーにフレッドとジョージは顔を見合わせて肩をすくめた後にどっちがどっちかわかるかなーと言いながら兄の後を追う。ビルはふふふと笑い、フラーも続こうとして、ハリーを振り向いた。ハリーはパーシーが握りしめて言った手紙をじっと見つめていて……フラーに向かって大きく頷く。きっとあれは……ハリエットの手紙だ、と今すぐ彼女を探しに行きたいのを堪えて大広間へと向かい……起こされて集められた生徒を見た。


「ハリー=ポッターを差し出せば誰も傷つけぬ」
 ふいに響き渡った声に誰もが悲鳴を上げ、空から聞こえる声に体を縮こませた。ヴォルデモートはハリーを零時までに差し出せば誰も傷つけないとそういって……スリザリン生らがハリーを見つけて声を上げた。だが、ヴォルデモートの甘言など、誰が信じるものか、と他3寮が立ちふさがり、真っ先にスリザリン生から避難を支持される。

「何か探すものがあったのではないのですかポッター。さぁ行きなさい。それと……ハリエットを見たのならば……おとなしくしてなさいと、そう伝えてください」
 さぁ、と促すマクゴナガルにハリーは慌てて身を翻し……レイブンクローのゴーストなら何か知っているのではとほとんど首なしのニックに灰色のレディのことを聞いて呼び止めた。彼女がレイブンクローの娘であることを聞き……そして彼女が盗んだ髪飾りを隠した場所をトム=リドルに話してしまったことを聞き出した。

 レディにお礼を言ってその場を離れたハリーは飛び込んできたハグリッドに驚き……零時を回ったこと知る。弟のグロウピーが投げ込んだんだというハグリッドと共に走るハリーははっとしてどこで髪飾りを見たのかを思い出した。

「どこに行っていたんだよ二人とも!」
 不意に現れたロンとハーマイオニーにハリーが思わず声を上げると、これを取りに行っていたんだと、そういってバジリスクの牙を見せた。ハーマイオニーがカップを壊したと残骸を見せて……行方知らずの分霊箱がどこにあるのかを思い出したとハリーは声を上げる。

「どこかで見たがしたんだ。でも全然思い出せなくて……。そうだ、そうだよ。僕はそれにふれているんだ!」
 一度必要の部屋を閉じないといけない、と行けばジニーと見慣れない……けれどもどこかで見たことのある服装の老魔女をみて……ハリーとロンはボガートだと視線を合わせた。
 ネビルの祖母は孫を探しに行き、ジニーは離れていてほしいというと喜々として争いの方へと向かう。リーマスが心配で、と来たトンクスにムーディがわしから離れるなと怒鳴り……そして二人とも戦いへと消えていく。


 そして必要の部屋をいったん閉じて……教科書を隠したあの部屋を開けた。そんなに奥じゃなかったはずなんだ、と言いながら探していくと見覚えのある字が貼ってあることに気が付いた。

「この奥……この先……こっちじゃない。あぁもう!わかりやすい大きな字で書いておいてくれよ!」
 自分よりもきれいな、だけどよく似た字がハリーを導く。やっと見つけたハリーだが、待て!という声に振り向く。

「お前がこそこそしているのを僕らは見ていたんだ」
 あの方はお前を生け捕りにしろと仰せだ、と前に出たドラコだが、クラッブが呪文を放つ。やめろというドラコだが、クラッブはどこか高揚とした様子で……ドラコを押しのけ、なおも呪文を放つ。揉めているとハーマイオニーとロンが合流して……物がうず高く組まれた部屋に呪文が飛び交う。やがて……クラッブが放った炎が意思を持ったかのようにうごめき、6人を追い回し始めた。

「これで逃げるんだ!」
 手に取った箒をロンに渡し、ハリーはそれに飛び乗って……小さな悲鳴に炎の中を避けながら飛ぶ。制御できない炎がクラッブを飲みこむのが見え……ドラコがクラッブの名を叫ぶ。失神したゴイルは重くて、悪態をつきながら戻ってきたロンとハーマイオニーがそのゴイルを引き受けて出口へと向かう。
 ハリーは自分の後ろに引き上げたドラコがしがみつくのを感じながら……レイブンクローの髪飾りを手に取って出口へと突進していった。

「意味……分からない……なにが……ヘンリーにごめんだ」
 咳き込むドラコはふざけるなと力なく言って……緊張の糸が切れたように倒れこんだ。部屋の隅に折り重なるように二人を移動させると、見て、という声に手にかけていた髪飾りを見て……クラッブの炎が、悪霊の炎が分霊箱を破壊したことを知った。

「最後の最後にやってくれたな」
 あいつの唯一の善行だ、とロンは苦い顔をしてさぁ行こうとハリーを促す。そこに戦闘の音が聞こえて目を向けるとフレッドとパーシーが死喰い人を相手取って戦っていた。現在の魔法省大臣であるシックネスに魔法省の一役人であるパーシーが呪いをかけて倒すと、フレッドを助けた。
 
 よし、と笑うフレッドに対しパーシーは何か警戒をしていて……バーンという音ともにハリー達の体が吹っ飛ぶ。誰かが何か叫ぶ音が聞こえたがそれよりも吹っ飛んだことでハリーは額から血が流れていることに気が付き、呻きながらも瓦礫をどけた。

「フレッド!フレッド!!見えるか?僕が見えるか!?」
「パースー……プロテゴは守りに使うもんだぜ?みんなふっとばしてどうするんだよ」
 パーシーの叫ぶような声にフレッドの呻く声が答え、あぁよかった!という声になんだよもう、とフレッドが言う。

「今はこいつらをどうにかしないと!」
 土煙から顔を出すアラコグの子孫……アクロマンチュラが城壁を上って中に侵入しようとしていることに気が付いたハリーが失神呪文を放ち、昇ってくる蜘蛛を蹴散らす。入ってきた死喰い人を退け……ハリーは怪我を負ったフレッドと、生きててよかったと喜ぶパーシーを見る。

「ハリエットから手紙が来たんですね。そして……ここでフレッドが死ぬことが書いてあった」
 静かなハリーの言葉に、ロンははっとなってフレッドは嘘だろとつぶやく。

「あぁそうだ。さっきこれを受け取って……。大法廷では彼女の能力を疑ってしまったし、そのあと……直接ではないけどもひどいことを言ったのに……。父さんの怪我と、ロンの怪我を防げなくてごめんなさいって……。彼女にお礼を言わないと!あぁ本当によかった」
 どうすればいいのかわからなかったんだ、というパーシーをしり目に、フレッドがハリーを見て、その意味を理解して思わず目元を覆う。自身が……彼女にお礼を言うことはできないのだと、そう理解したフレッドはパーシーを連れて行かないといけない、と再び杖を握った。

 心配げなハーマイオニーと、顔をゆがめて何かを堪えるロンがハリーに続く。

「ちょっとまって。最後の分霊箱の場所を……奴の居場所を探ってみる」
 待って、と言って足を止めたハリーは目を閉じ……叫び屋敷でニワトコの杖を見つめるヴォルデモートを見た。家族を探したいルシウスを一蹴し、あの小僧は俺様の前に必ず現れると
いう。だがその前にやらねばならんことがある、そういってナギニを見た。

「セブルスをここに連れてこい」
 短く命じるヴォルデモートにルシウスは怯み……慌てて叫び屋敷を出ていった。

「それしかないのだ、なぁナギニ」
 球体に包まれたナギニに何かを呟くヴォルデモートにハリーは震えて……意識を戻した。


「叫び屋敷にいる……。このままだと……スネイプが危ない……」
「スネイプが危ないってどういうことだい?」
 青ざめるハリーにロンはまさかバレたのかなと小さくつぶやき……ハーマイオニーが急ぎましょうという。もし本当にスネイプが危ないのであれば……ハリエットが来てしまうかもしれない。むざむざとヴォルデモートの前に現れるわけはないはずだが、それでも、と。

 戦闘の光を掻い潜り、なんとか暴れ柳まで来た時にはずいぶんな時間をロスしてしまった。急ごう、と3人は暴れ柳を抑えて……中へと入っていく。





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