--------------------------------------------
26:違和感
銀行に入り、ハッフルパフのカップを手に入れ……命からがら3人はドラゴンと共に脱出して大きく息を吐いた。あぁもう、と言っていると対岸で……ドラゴンが休んでいるところで複数人の魔法使いがいることに気が付いた。
「あれ……チャーリー?」
遠くからも見える赤い髪にロンが思わずつぶやき、傷ついたドラゴンと共に飛び立つのが見える。ダンブルドアだわ、とハーマイオニーが呟き……去っていくのを見守る。ハリエットはルーピンが来る前に姿を消したと、翌日ビルから聞いた。なんでと驚くハーマイオニーとロンに反して……ハリーは落ち着いていた。彼女が行くことはわかっていた。そしてその行先も。
他g
「剣がないわ」
どうしましょう、と困った風のハーマイオニーにあの裏切り者めとロンが憤る。ハリーもそれに加わろうとして……ハリエットの言葉を思い出した。
「剣は……大丈夫だ。ハリエットが言っていた。あの剣はどこからどうやって現れたのかを思い出せって。あの剣は……勇敢なグリフィンドールの生徒の前にまた現れるはずだ。だから他の方法を探そう。きっと今はそのときじゃない」
ほかに破壊する方法があるはずだ、と立ち上がったハリーだが、その瞬間怒り狂ったヴォルデモートの意識に引っ張られて分霊箱をまんまと盗まれた小鬼を拷問している姿をみる。そして分霊箱を知られ……その場にいた死喰い人を含めた者たちに向かって無差別に死の呪文を放った。まんまと逃げたハリエットについても怒りの対象だったようで、ぐるぐるとヴォルデモートの頭の中を小屋や湖、そしてホグワーツが浮かび……ハリーは現実へと戻ってきた。
「最後の場所が分かった。ホグワーツだ。あそこにナギニ以外の最後の分霊箱がある」
あぁ、だから君はどうにかしてでもホグワーツに行ったのか、とハリーは片割れが行ったであろう、ホグワーツを思いうかべた。ハーマイオニーもロンもそれをわかっている。
それじゃ、行こう。そういってホグズミードに姿現しをし……仕掛けられていた呪文によって侵入者の警告が鳴り響く中、1人の男が3人を店の中に引き入れ、そして死喰い人を追い払ってくれた。
ホッグズ・ヘッドのバーテンであったアバーフォース=ダンブルドアはハリーを見るなり夜明けとともにここを去れという。
「いいえ。それはできません。それに、あそこには僕の片割れが……もう入っています。彼女はきっと一人でも戦います」
そんなことはさせられない、というハリーにあの娘か、とアバーフォースは息を吐き……そして兄アルバスと自分、そして妹のアリアナと……グリンデルバルドの記憶を語った。かつてのアルバス=ダンブルドアの過ちを、決裂した兄弟の話をハリーに聞かせ、いい兄ではなかったという。
「ただ、ただ奴が死ぬ少し前に……兄はここに来て、胸の内を明かしてくれた。お前の片割れが背中を押してくれたと。そう、散々語り合った。家族のこと、兄弟のこと……そしてグリンデルバルドに利用されて死んだ息子のことを。おれは……あいつほど頭は回らない。興味のないことなんて耳から耳に抜けていく程度の男だ。本当に語り合った。まさかそのあと……信頼していたはずの男に殺されるとは兄も思わなかったはずだ」
今の君の様に、ハリエットは頑なだった兄の態度を変えさせた、とアリアナの肖像画の前でうつむく。あのダンブルドアの心を動かすなんて、僕は君になれる気がしないよ、とハリーは目元が熱くなるのを瞬きで散らし、違うんですという。
「スネイプは……何があったかわかりません。だけれども、今も彼はダンブルドアの懐刀で、動けぬ肖像画になったダンブルドアの手足として動いています。ハリエットは……彼に会いに、ホグワーツへと戻りました」
一度たりともスネイプはダンブルドアを裏切っていない。そう告げればアバーフォースは驚いてじっとハリーを見た後、そうかとうなだれた。わかった、そこまで言うならばとアバーフォースはアリアナを見て……微笑むアリアナが肖像画の奥に進み……そして戻ってきた。
「ハリー!!あぁ久しぶりだ!!」
飛び出してきたのはシリウスで、後から出てきたネビルが足早っ、と笑っている。さぁ中へと引っ張る二人にハリー達は続き……大勢の生徒がいる部屋へと足を踏み入れた。
「やっとその時が来たというわけだな」
聞こえた声に振り向けばムーディがいて、シリウスがここで稽古をつけていたんだという。避難してきた生徒らが集まっているのは必要の部屋で、誰もがハリー達を歓迎する。分霊箱を探しに来ただけなのに、と驚くハリーだが、いつでも戦う準備はできていると誰もが息巻いていて……ロンの助言に従いレイブンクローの失われた遺物について……髪飾りについての話を聞きだした。現物ではないが銅像はあると聞き、ハリーはルーナと主に部屋を出て走っていく。
レイブンクローの談話室では待ち伏せをしていたカローの妹がいて……ヴォルデモートを呼び出すための合図をされた後にルーナの失神呪文が彼女に当たる。そこに妹がヴォルデモートを呼んだことを知ったカローの兄がやってきて……外でマクゴナガルと揉める声が聞こえた。
入ってきた兄をも失神させたハリーにマクゴナガルは驚いて……今すぐ逃げなさいという。
「いいえ。僕は……ここで探さないといけないんです。奴を倒すために大事なものを」
逃げないというハリーにマクゴナガルは仕方がありませんと言ってカロー兄弟を縛り上げ、そのままどこかへと飛ばす。生徒を避難させなければならない、とそういって……ハリーは必要の部屋のことを伝えた。あそこからならばアバーフォースのところを通じてホグズミードから脱出できる。
「マクゴナガル先生、ハリエットには会いました?多分ここに……」
「ハリエットが!?いいえ、ここにはあなた以外外部から来た生徒はおりません」
きっぱりというマクゴナガルは驚いていて……すぐに時間がありませんと取り直すと、フリットウィック先生た教員へ向けてパトローナスを飛ばす。透明マントで隠れたハリーらとともに進み……コツリと聞こえた靴音に足を止めた。
角から出てきたのはスネイプで、カロー兄弟を知らないかと問う。それと同時に侵入者がいるはずだと……そういって透明マントで隠れたハリー達に視線を移し……マクゴナガルの放った魔法をいなして魔法を返す。しばらく打ち合う二人をみていると、ルーナがあれ?と声を上げた。
「あの教授……杖がなんか変なきがする。ずれている?」
うまく言えないけど、と首をかしげるルーナだが、知らせを受けたフリットウィック先生がやってきて……それをもいなしたスネイプは開いた教室に向かっていくと窓を破り、死喰い人が時折見せるような飛行の魔法を使って飛んでいくのが見えた。裏切り者、と去っていく姿に思わず怒鳴るマクゴナガルは集まってきた教員らに指示を飛ばし、ハリーに他の皆をと指示を与える。
ハリーはすぐには動けず、スネイプが去っていった空を見て……ざわざわとした予感が胸に沸き立つのを自覚した。ハリエットはどこにいるのだろう、と無理やり窓から目を離し、必要の部屋へと向かった。待っていた人の中にロンとハーマイオニーはいない。トイレがどうと言って出ていったことに首を傾げ……皆の避難を手伝って欲しいと呼びかけた。
|