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15:冒険しなければ何も得られない。

 3人はルーナの父ゼノフィリウスに会いに行き……そしてあのグリンデルバルトの印が死の秘宝であることを突き止めた。だが同時にルーナが捕まってしまったことと、そのルーナを取り返したい、たった一人の娘を想う父の愛情によって危うくハリー達が捕まりそうになり……なんとか一瞬だけ姿を見せて逃げる。

 クリスマスから捕まっているという話を聞いて……もう3月になることから彼がハリー達を差し出してまで必死になる理由がわかって怒るに怒れない。
 たびたび話を聞くために呼び出していたフィニアス・ナイジェラスにハーマイオニーはそうだ、と言葉を選び……問いかける。

「スネイプ校長の体調だと?何をいきなり問いかけるかと思えば、出し抜く算段でも立てたのか」
 ぶつぶつと文句を言うブラック校長にハーマイオニーはお願いします、というとむすっとしながらもあまりいいとは言えないと返す。

「つい先日も魔法薬を魔法薬学の教授から受け取り、出ていったが戻ってきたときには魔力はほとんど残っていない、顔も青白さが更にました酷い顔でソファーに倒れこんでいた。一体何をすればああなるのか。校長室で仮眠など、言語道断。意識が低すぎる。それもこれで何回目だというのだ」
 まだ若すぎたのだな、と一人好き勝手に話すブラック校長を置いて、3人はハリエットの治療だと顔を突き合わせた。何か治療のために魔力を使い果たしているということに大丈夫かと二人のことを案ずる。

「治療関係の魔法はわからないけれども、もしかしたらそれで力を使っているんじゃないかしら」
 あぁいうのは癒者になるような人じゃないとわからないことが多いの、というハーマイオニーにハリーは7月の末に捕まったハリエットを思う。もう半年以上彼女は捕まっている。
 まだ喋っているブラック校長の額縁を、ありがとございましたと一方的に言ってカバンに押し込む。スネイプもまた身を削っていることからそんなに長引かせるわけには行かないと結論を出した。

「一度考え直しましょう。まず、スリザリンのロケットは破壊したわ。それと、ハッフルパフ由来のカップも盗まれたって話よね。グリフィンドールの遺産はここにあるから違うとして……。レイブンクロー由来の何かを隠す場所……。カップとそれと……」
「わざわざスネイプが銀行にこの偽物を送ったっていう事は、誰かの口座があるわけで」
「それじゃあ一つはそこに隠してある可能性があるってことか」

 もう一つはどこかわからないが、少なくとも一つ探す場所は定まった。今度はもうロンは文句を言わない。


 そろそろこっちの情報も知りたい、とロンは合流してからずっと調整していたラジオを取り出し……やっとつながった。偽名をつかう懐かしい声にほっとして……あの河原で会話していたテッドと小鬼が交戦の末死んでしまったことを知った。そしてあのナギニが化けていたバチルダ=バグショットの遺体は見つかったことも知り、顔を見合せる。

 キングズリーの声と、ルーピンの声に懐かしさと、喧嘩別れしてしまった苦い思いが胸を満たす。ルーピンは自分が生きていることを信じていると、そう言っていた。自分の直感を信じることが正しいというルーピンの言葉にハーマイオニーはあぁとため息をこぼす。ロンがビルの家にいたという期間にルーピンがトンクスのもとに戻り、そしてトンクスのお腹がもう大きくなったと、二人に伝えた。

 ハグリッドがハリーを応援するためのパーティを行ったことで逃亡中と聞いて……事情を知らないハグリッドのやらかしに奔走するスネイプが想像できて、思わず同情してしまう。やがてフレッドの声が聞こえ……ほっとすると同時に、今ヴォルデモートが国内にいない可能性があると知り、何かを起こすなら今か、と頷いた。
 
 まずは銀行……そう思ってちらりと見ればロンは肩をすくめて見せ、本当にあの時はおかしかったんだと息を吐いた。もうあの時みたいにうんざりなんて言わないさ、と。

「離れている間にさ、ハリエットにひどいこと言ったってすごい後悔して……ふと思い出したんだ。僕、彼女にまだ謝ってないって。ヘンリーだったことに驚いて全然声をかけてなかった。親父があんなことになって、どうして教えてくれなかったんだって憤って……ペナルティで倒れた彼女にびっくりしてさ。今ならちゃんとわかっているさ。今回捕まっているせいもあるかもしれないけど、トンクスの父親であるテッドの死を彼女は知っていたと思うのに助けられなかった。だから運命を変えられる回数が決まっているんじゃないかって。それぐらいわかるさ」

 まだ謝ってない、というロンにハーマイオニーは呆れたように息を吐き、私とヘンリーのことで妙な勘繰りをしていたのもね、という。なんのこと!?と声が裏返るロンにハーマイオニーはダンスパートナーのこととか、あったでしょうという。あぁうん、えっとそれはそう、というロンはハリーを見て、頼むからあれは言わないでと必死に訴える。


 羊皮紙を取り出したハーマイオニーはこれからのこと、と言って今まで起きたことをかきだし……その隣に別の欄をかきだす。
「私たちがこれから行う事でハリエットの知る世界と何か変わっていないか、それを確認しようと思って。まず、最初にシリウスについて。ハリー、正直に答えてね。シリウスが死んでしまっていたらあなたは」
「信じてくれなかったスネイプを八つ当たりでも憎んでいた」
 ハーマイオニーの問いかけにハリーはすぐに答え、ダンブルドア殺害についても今は少し違うけど、ものすごく憎んだし、絶対に裏切り者だと罵っていたと間髪入れずに答えた。

「スネイプのもとの守護霊が分からないけれど……いったい誰だとわからなかったに違いないとおもう。ハーマイオニーはあの死の秘宝について、どう思う?」
「そうね。はっきり言って今でも蘇りの石なんて信じてないわ。けどね、私たちのすぐそばに信じられないようなことをしている子がいる以上、何か近いものがあるんじゃないかって思うようになったわ」
「つまり?」

 僕はこれぐらいじゃないかな、というハリーがハーマイオニーに問いかけると、ハーマイオニーはラブグッド氏の説明したことを思い返してきっぱりと言い切る。そりゃそうだ、というロンが促すと、絶対信じないでしょうね、とハーマイオニーは言う。

「きっと今ごろ、死の秘宝について口論していると思うわ」
「ハリーは断固信じる派で……ハーマイオニーが断固信じない派か。僕は半々だろうな。ヒートアップした君は絶対……」
「禁句を言ったと思う」
 奴が今国外にいるとしたら杖を探しているに違いない、と考えて熱くなり過ぎただろう。はっとしたハリーは同じような決心した顔をしたロンとハーマイオニーを見返す。


「冒険をしなければ何も得ない」
 ラジオが終わってから頭にあったことだ。覚悟はいいかい?と問いかける。

「僕は……僕の過ちでハリエットが危険なことになったから、これでも結構慎重になったんだ」
 さすがに癇癪ばかり起こしていたらハリエットにまた叩かれる、とハリーは小さく笑ってハーマイオニーの書き留めた羊皮紙を見る。ハーマイオニーとロンはこちらの心の準備ができてからならと返す。

「きっと痛い目に合うでしょうね」
「あいつら本当に加減を知らないというか、結構痛いから覚悟しとくんだ」
 待って、荷物を整理してから、とハーマイオニーは広げた羊皮紙を燃やし……迷った末に剣はそのままにする。震えるハーマイオニーにどこかに隠れていても、と言おうとするが、決心した顔の彼女にそんなことは言えない。

「それじゃあ……行くよ」
 ハリーの顔は私が誤魔化すわ、というハーマイオニーと、なるようになれだ、というロン。それを見てからハリーは禁句を、ヴォルデモートの名を呼んだ。







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