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??:ある__の結末

 ハリーは見えた、その風景に息をのんだ。そこは叫び屋敷だろうか。ヴォルデモートの傍にいるのは、恭しく頭を下げているのは……かつて、かつて片割れが愛していた男だ。あんなにボロボロになった彼女を捨てた……だけども彼女をぎりぎりで助けていた……大嫌いな男。

 杖の持ち主についてヴォルデモートが静かに問いかけ、それに対しダンブルドアの杖は貴方様のものだという。だが、ダンブルドアを殺したものに忠誠がいっているというヴォルデモートは、少しも残念だと心にも思っていない声色でお前ほどの手下を失うことになるとは、とわざとらしくつぶやく。

 たしかに、あの時ダンブルドアを殺したのは間違いなく黒髪の男で……。杖の忠誠、それは確かに習った。だから武装解除で奪うとも。だがヴォルデモートが手にしている、かつてダンブルドアが握っていたの杖はそれだけ特別というのか。

 だがヴォルデモートはその杖を向けようとはしていない。その代わりにナギニに手を伸ばす。

 その瞬間、ハリーはぎゅっと胸を締め付けられる嫌な予感に、ダメだ、やめろ、と震える唇で呟いた。
 
 あっという間の出来事だった。反射的のように杖を取り出す男に蛇が絡みつき……いたるところにかみつき、最後にあの低い声を出す喉に食らい付く。吹き出した血で体を染め、人形のようにがくりと膝をつく男にハリーは震えが止まらない。まだ息のある彼をおいてヴォルデモートが去っていく。


 顔を青ざめたハリーを心配するハーマイオニーとロンに叫び屋敷だ、と伝えると一目散に向かう。ヴォルデモートは別の出口から出て行った。だから、暴れ柳から入り……かつてシリウスと会った部屋に飛び込む。
 男は掠れた息でまだ生きていたが、吹き出していた血は勢いを失い傷口から静かに流れるだけという事実に……膝から崩れそうになる。やはり、彼は……。

 黒い瞳がハリーを捉えると、懐から靄の入った瓶を取り出し、震える手で差し出した。衝撃のあまり立ちすくむハリーの代わりにハーマイオニーが受け取り……近くで男を見た親友は嘘でしょ、と震える声を出す。やだ、そんな、と悲鳴のような声を上げる親友は瓶を握り締めたままその場に泣き崩れてしまった。

 何が、と混乱するハリーの目の前で、男はヴォルデモートに向けた黒い杖を落とし、懐から長い杖を取り出す。ミサンガが絡みついた杖はどこかでみた気がして……ハリーは違う、と力なくつぶやく。
 男は指の間でかろうじてつかんだ杖を使い、力なく円を描き真一文字に縦に動かすと、そのまま杖を取り落とした。男の息が、頼りない風の音になると、別室から物音が聞こえ、とっさにロンが杖を構える。そして開いた扉に思わず目を見開いた。

 開いた扉に呆然と立つ男よりも一層青い顔をした男は……血に濡れた口角を満足げにあげた。
 血だまりに落ちた杖に絡んだミサンガがチリチリという音を発しながら静かに燃えていく。
 

 ことは9か月ほど前に遡る。







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