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6:彼の居ない9月
マルフォイを怪しむハリーは動向を伺おうとして……隠れていたのを逆にやられて汽車に取り残されようとしていた。わざと窓にブラインドを下しておいたからすぐにでも奴を守っている闇払い辺りが見つけるだろうと、マルフォイは待っていたクラッブとゴイルと合流し、セストラルとかいう姿の見えない馬が牽く馬車に乗る。
手紙は……ついぞ来なかった。
パンジーの膝に頭を載せながらずっと気になっていた。親友はどこにもいない。彼退学になったんじゃないのか、あるいは……持病が悪化したのでは。そう囁くスリザリン生を見てきた。
ぐっと拳を握るしかできないマルフォイは見えてきたホグワーツに目を向ける。きっと彼はそこにもないだろう。当然……病院にも。
新学年が始まり、他の監督生や首席らが集められた会合でマルフォイはじろりとグリフィンドールの二人を盗み見る。特にこれといった風もない二人からは何も情報は得られそうにない。
「今学期から魔法省の闇払いの巡回がホグワーツに入りますが、校内においては例年通りとなります」
淡々と、今年の留意事項が告げられ、マルフォイはつまらなさそうにそれを聞く。
「それと、特にスリザリンの監督生及び首席に関連することですが、先学年のOWLの夜、複数の失神呪文を受けたヘンリー=マクゴナガルに関することです。治療のための薬との相性やもろもろの諸事情により現在治療中となり、登校は10月になります。また、突然力が抜けそのまま眠りに落ちてしまうようになったため、彼が登校後どこかで休んでいるのを見つけた場合は近くの教員に声をかけるようお願いいたします。また、左足に若干の故障を抱えているため、歩行補助用の杖を突くこととなります」
突然の言葉にスリザリンの監督生は、マルフォイは思わず姿勢を正し、食い入るように聴く。ほかの監督生もまたスリザリン生とは言えそういった生徒がこれまでいなかったこともあり、耳を傾けた。
「ヘンリー戻ってこられるみたいでよかったわ」
寮に戻る道中ほっとしたように言うパンジーに、マルフォイはそうだなと頷く。でも何があったのでしょうね、と心配するパンジーにマルフォイは口を開きかけて……さぁ実父と大喧嘩したのかもしれないな、とつぶやく。
手洗い場で一人になり、マルフォイは大きく息を吐いた。一報を聞いたとき、血の気が引き、手が震えた。もう一報を聞いたとき、心底うれしかった。無事だということが、どれだけうれしいことか、知らないだろう。
それにしても……スネイプの様子が気になる、とマルフォイは考える。夏に……闇の帝王からの指示があって以降何か手伝えることがあればとうるさく、そしてヘンリーの話を聞いても微動だにしない姿勢が……嫌な予感がして気になる。
ヘンリーが来たときに聞けばいいだろうか、と結論付けて、“スリザリンのドラコ=マルフォイ”として、いつも通りふるまう。ふと、スラグホーンは彼だったら気に入るのだろうか、と小さく笑みをこぼした。
彼のいない9月はのろのろと過ぎていく。
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