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14:孤独の片割れ

 ずきずきとした痛みで目を開けたハリーは手の甲に刻まれた傷に顔をしかめた。アンブリッジに歯向かったための傷。悔しくて誰にも言っていないがズキズキとした痛みに嫌気がさす。
 がたりという音が聞こえ、天幕を開けたハリーは年老いた屋敷しもべ妖精に目をしばたたかせた。

「ハリエットからこれをと。それとこの手紙をミス・ハーマイオニーに渡してほしいと預かってきました」
 少し身なりのいい屋敷しもべ妖精はそういって軟膏と手紙を二通、ハリーに差し出した。どきりとするハリーだが、それではと言って離れる屋敷しもべ妖精を慌てて呼び止める。なんでしょう、という屋敷しもべ妖精にハリエットを知っているの?と尋ねる。

「えぇ。あの子のことは小さいころから存じております。軟膏も……余計なお世話かもしれないけど、とそういっていました。少し体調を崩したと言っていましたので、本日は大広間で会わないかもしれません」
 本当によく似ている、という屋敷しもべ妖精にハリーは驚いて、また聞きたいことある時にいい?と問いかける。少し迷うそぶりを見せた屋敷しもべ妖精だが、そっと微笑むとご用の時はベベを呼んでください、といって立ち去った。
 軟膏と一緒に来た手紙には罰則が終わったら塗るようにと書いてあり、特にこれといった内容はない。少しがっかりして……みんなが言う癇癪を起すな、という判を押したような忠告を言わない片割れにそっと口角を上げた。彼女は絶対自分を信頼してくれる。それが確固たるもので嬉しくて仕方がない。

 アンブリッジ以外にも、ミセス・ノリスをよく見かけるため、彼女に会うわけには行かないだろう。どうすればいいのか。彼女に謝ってないうえ、彼女にスネイプと早朝何で会っていたのかも聞いていない。彼女のことでいろいろ解決しなければならないというのに何も解決していない。
 朝になり、ハーマイオニーと合流すると実はと、屋敷しもべ妖精のベベのことを言う。

「あぁ、ハリエットの乳母だって言っていたわ。そうだ、彼女にいろいろ感想を聞かなきゃ。それとハリエットからの手紙って何かしら」
 知っているというハーマイオニーにそっか、というと彼女からの手紙を渡す。受け取ったハーマイオニーはそれを開いて読んでいくと、むっとしたように眉を寄せた。

「君にはそんなに長文書くのに、僕にはほんの一言くらいだよ」
 うらやましい、というとどこか怒った風のハーマイオニーは手紙をだん、と置いて机を睨みつけた。おそらくはスリザリンを睨みたいのだろうが、それをしてしまえばハリエットの居場所がわかってしまう、ということもあり我慢している風だ。ただ、べべのいう通りいつものマルフォイの隣は空席だ。

「わかってないのよ彼女は!いかに屋敷しもべ妖精が不当な扱いを受けているか、ずっと住んでいてわかっていないんだわ!」
 怒った風のハーマイオニーの手から手紙をとってみたロンとハリーは思わず顔を見合わせた。彼女はハーマイオニーがやっている屋敷しもべ妖精達への帽子などを知っている。まだグリフィンドールだけのはずなのになぜ彼女が知っているのか。そんなことも見えているのか

「でも確かに彼女の言う通りじゃないかな。だって俺たちが雇っているわけじゃないんだぜ?あれは仕えている家の主人が渡すから、解放されるんじゃなかったかな」
 ハリエットの手紙に、帽子や靴下を置く行為についてやめるように、という趣旨のことが書いてあり、その理由も書いてあったがハーマイオニーは害されたとして怒っている。
 ため息をつくハリーは遅れて入ってきたスネイプがマルフォイのところに行くと何かを伝え、教員席に座るのが見える。本当に体調を崩しているらしいヘンリーに心配になるハリーだが、聞くこともできない。


「そういえばあのヘンリーってやつ、薬は一生飲んでいなきゃダメなのかな」
 一年の時からだろ、というロンにハリーはどうだろうね、と答えながらきっと卒業まで彼女は飲むんだろうなと考える。卒業、そう考えるハリーはどういう進路を選ぶか考えていた。ハリエットはもう決めただろうか。

「ねぇハーマイオニー。ちょっと聞きたいんだけど、今まさに付き合っている人がいる女の子ってさ、卒業と同時にその……したりしないよね?」
 ぽろりと出た声にロンはどういうことだい?と首を傾げ、少し赤くなるハーマイオニーを見る。えぇっとそうね、と少し挙動のおかしいハーマイオニーは先ほど怒っていた相手を思い浮かべ……ないんじゃないかしらという。

「誰のことかわかったけど、彼女は……なんとなくだけど卒業後のこととか考えてないんじゃないかしら。今見えている未来で精いっぱいで……。自分のことの心配してほしいわ本当に」
 だから安心しなさいよ、というハーマイオニーにいや別に変な心配をしているわけじゃないとハリーは反論する。

「最近心配なんだ。彼女……人との付き合いを切っている気がして。僕ともやり取りはしないって言って、ハーマイオニーも連絡できないって前言われたって。ス……あれともなんか距離を置いているみたいだし……。心配なんだ」
 スリザリンにいる以上不必要な接触を避けているのかもしれない。

 朝食を終え移動するハリー達だが、教室についたハーマイオニーが口を開いた。
「予見者についてもっと調べる必要があるのかもしれないわ。あのねハリー。新聞に出てから予見者についていろいろ調べていたんだけど……。あとで話すわ」
 魔法史の教室へ移動するハーマイオニーはドラコ達を視界に入れて口をつぐむ。ヘンリーがいないときは本性を出すかのようにドラコらはたちが悪くなるため、ハリー達はできるだけ離れてから別の話を始めた。






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