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48:秘密の会合
いよいよプライドを捨てる時だ、と半巨人であることがスクープにされ落ち込んだ様子のハグリッドを元気づけるためにセドリックの言葉に従い監督生のお風呂までハリーはようやく第2の課題を知り……そのままうっかりで地図がムーディにわたった。
そこには秘密が、と思ったところでスネイプとムーディの会話を聞いてしまい、スネイプを追い返したムーディに渡さざるを得ず、やむおえずに貸し出してしまった。
幸い、寮に帰るためだけに使っていたためユリの花はどこにも表示されていない。彼が始終見ていればヘンリーの名前がないことに気が付いてしまうかもしれないが、いくら何でも普段地下牢にいるヘンリーとムーディでは授業以外の接点がない。それ以外は何層もある廊下などのおかげで見えるはずがない。
「あぁ、うん、知っているよ。だからムーニーに……リーマスに改造してもらわないといけなかったんだ」
急に呼び出されたヘンリーはいつもの石のベンチに腰を下ろし、本をめくる。隣に座ったハリーは透明マントを着て声を落として実はという。昨年名前が出ていることに焦ったのはこのことがあったから、というヘンリーに君の未来視は本当にすごいや、という。
「言っておくけど、課題は」
「わかっているよ。これは僕が頑張って見つける。それで、スネイプとムーディがさ」
手伝わないよというヘンリーにハリーはむっとしたように口をとがらせる。そして盗み聞いてしまったスネイプの“やり直しの機会”と彼が監視されていることについて話すとヘンリーは本をめくる手を止め、何かを考えるように指先で本の淵をなぞる。
「それについては何も言えない」
やり直しの機会……それは本来の意味なのだろうか。クラウチJr.のいう意味は“闇の陣営”としてのやり直しなのではないか。ダンブルドアに有利なように動いていないか。復活の日、スネイプがどんな行動をとるのか。それを見るつもりではないか。
監視についてもそうだ。どこまでが演技でどこまでが……闇の陣営としての意味なのか。バイコーンの角などが紛失していることにスネイプは気が付いてはいる。だが、それが誰の仕業か……それが分からず対策に苦慮しているという。それに対してもハリエットは答えることができない。
そっと傍にいることぐらいがせいぜいだ。幸い、スネイプは扉に対し魔法の眼をもってしても見られないよう幾重にも呪文をかけ、対策をしている。そのおかげで中にハリエットがいることはばれていない。地図から見ても映っていないのだからそこは安心だ。
押し黙ったヘンリーにハリーは何か言いたそうにして、空を仰ぐ。
「ハリー、大丈夫。自分のしたいように動いて。先生を疑ってもいい。その先で何を感じるのかは自由だから。私は……やっと見つけた役割を頑張るから。ただ、今だけは先生と僕のことについては目をそらしておいてほしい。今だけは……ね」
私と先生の関係は忘れて、というはハリエットにハリーはできるわけないよ、とため息をつく。ヘンリーはくすくすと笑って、読んでいた本……記憶についての本に手を添える。いくつか記憶を保管しなくてはならない。あぁそうだ、あの記憶もきちんと保管しなければ。そう考え……ずっとぐるぐるしていた時間が本当に無駄だったと小さく笑う。
ヘンリーの様子に君の考えていることはさっぱりだ、と言って……ムーディがこっちに来たら大変だから行くね、と立ち去っていく。一人残ったヘンリーは、ペンシリーブどこで買えるのかな、と大きく背伸びをした。それと、と懐から朝呪文を掛けた卵型の石を取り出した。フィニートと唱えると石は元の卵に戻る。次は動物で試さなくては。
本を閉じ、数日前のスネイプの誕生日を思い返す。今年は……上等なシルクのハンカチと羽ペンを贈った。こちらにもしっかりと刺繍をして。ドラコのマルフォイ家の紋章の方が難しかったが、その分装飾に力を入れた。
ヒュギエイアの杯に巻き付いたアスクレピオスを刺繍したハンカチ。贈る相手のことを思いながら縫いあげた一枚。大切にするというスネイプと共に一晩を過ごした甘い記憶。
ハリエットはいろいろ飲んでいるから、とスネイプが避妊用の薬を飲んでいると聞いて驚いた。先生の負担になるなら大丈夫だといったのに、問題ないという。だけど、そんなことしていいのか……そう思ってついぽろりと言葉が転がり落ちた。
「非活性化させる魔法薬を毎回飲んでいたら、飲むのやめても影響が残って先生の子供出来なくなりませんか?」と。
そういったところで、あ、いや、先生の子供っていうのはその、と顔を真っ赤しながら一生懸命弁明した……。頑張って弁明した。
大きくため息をつくスネイプにいたたまれなくなって……あっという間に寝台に連れ込まれ、一晩中鳴かされた。薬は安全なものを服用していると言って……何度も何度も……。それを思い出して顔を赤くし思わずうつむく。
先生の真意はわからない。けれども、クリスマスからずっと二人きりの時は甘い。そして……時間に余裕がある時はこれまでと同じように……これまでと違って本来受け入れる場所で抱き合う。
初めとの時こそ痛みと共に無意識下でスネイプの物を締め付けてしまったが、今はもう迎え入れるのにも貪欲な体になってしまった。いっそのこと先生と同化してしまいたいほど、もっともっとと欲しがってしまう。
先生呆れてなければいいけど、と頬を叩き立ち上がる。そんなことを思い浮かべていたおかげか、スネイプに会いたくて仕方がない。
先生のところに行こう、とヘンリーは地下牢へと足を向けた。来年はそれほど一緒にいることはできないだろう。今のうちに……彼に関するすべてを目に焼き付けておきたい。
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