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47:スクープ

 クリスマス明けの大広間、誰もがあくびをしたりといつも以上にだらだらとした雰囲気が漂う。ヘンリーは参加していなかったためと、スネイプから回復薬を処方されたこともあって割と元気だ。
 そこにいつも通りなドラコがやってきて、おはようと声をかける。

「昨日はどうだった?」
 何でもない風に尋ねるとドラコは一呼吸開けてからまぁまぁだったなという。
「ポッターが何やらよく似たやつを連れてきた」
 それぐらいだ、というドラコにヘンリーはそうなんだと返す。そこにフクロウ便がやってきて、手紙を落としていく。まだ……まだ手紙等で来るのは早い。

「あのフラーとかいう女がいつも以上に高飛車にしていたぐらいで、それほど感動的なものではなかったな。実家で行われるもののほうがより洗練したものだけが出ているおかげでより素晴らしいものだ」
 スリザリンばかりであればあんな無様なダンスではないだろう、というドラコにヘンリーは苦笑し……ポッター家の長女と躍ったことについてなんで言わないのだろう、と内心で首をかしげる。言及されても言葉に困るだけなのでなければないでいいのだが。

「いつか、ヘンリーもうちのパーティーに来るといい。父上も母上も歓迎してくれるだろう」
 だから早く薬を飲まなくてもいいようにするんだぞ、というドラコにヘンリーはその時はよろしくと返す。


 そしてその夕方。再び飛んできたフクロウ便にマクゴナガルは顔を引き締め、同じようにざわつく大広間を見る。食事をとっていたヘンリーのもとに見ろよと回ってきた新聞には大きな字で“ポッター家の長女の謎”という字が躍っていた。
 その下にはハリーと躍った時の写真だろう。眼鏡の見えないドレスを着たハリエットの写真が何も知らない風に躍っていた。記事にはハリー=ポッターの生まれた年頃に預言者や予知者など、未来視できるものが一斉に予見者が生まれることを言っていたという。
 年代も、どこになのかも、そして具体的な内容も一切伏せられており、そういった兆しがあったという話だけが調査の結果わかったことが書いてあった。

 うまい具合に予見者についての情報があいまいにされており、本来の能力とは違うものが書かれている。そう、神秘部などが大昔から仕掛けていた誘導に、一般の記者はまんまとはめられているのだ。
 そしてその予見者がハリー=ポッターの双子の片割れだという噂があったものの、彼は一人っ子であると近所の証言などがあり、一度は廃れたという。
 だが、近年再びその話が出てきており、かつてあったように、各地で黒髪に緑の瞳を持った少女の安全が脅かされたと書いてあった。そして、聖夜に現れた少女はハリー=ポッターと瓜二つであり、同年代であることからやはりポッター家の長女というのは存在し、彼女こそがその予見者であると書いてある。

 突然現れたことに憶測や裏付けをしている最中だったのだろうそれらが使えなくなり、慌ててまとめたというのがハリエット目線からはよくわかる。夏に神秘部を訪ねた少女がまさに彼女であった、と雑にまとめられているのを見てハリエットはしてやったりと考えていた。

「噂では聞いていた。まさか本当に存在するなんて」
 あれがそうだったんだな、というドラコの声にヘンリーは目をしばたたかせる。名乗ったはずなのになんで?内心で小首をかしげ、昨日の晩いたという子かい?という。

「この写真からしてそうだな。揃って同じ色の衣装を着ていた。下手なダンスで踊って邪魔だったな」
 あそこにいるあいつのリードが悪い、というドラコにヘンリーは何が何だかわからず、そうだったんだ、と相槌を打つ。ドラコの考えていることがさっぱりわからない。なんとなく誘ったことが彼にとって汚点で、それでなかったことにしたのか。それぐらいしか思いつかないな、とヘンリーは頭を切り替える。


「ハリー、君って双子だったんだね」
 そう声を掛けられ、ハリーはえぇっとまぁうんと答える。これがハリエットの言っていた記事、と考えてスキーターを思い浮かべる。ハリエットにとって存在がばれることはリスクのはず。それをこんな風に大々的に取り上げるなんて、と憤り……ピーターが広めた可能性も考える。少なくとも、黒髪に緑の目を持った少女は今後狙われやすくなるかもしれないが、半面誰もが気にするようになるだろう。
 僕も彼女も有名になりたいわけじゃないのに、なぜこうも注目するのか。彼女は特別な力をもって生まれた。だけれども、それは彼女だって望んだ力ではない。たまたま、たまたま彼女はそれをもって生まれてしまっただけ。

 あの子かわいかったわよね、という声にハリーは昨晩のことを思い返す。髪を下してはいたが、とても大人っぽくて……写真でしか見たことのない母リリーのようだった。
 ハグリッドが半巨人であることを聞いてしまった後、会場に戻るとすでに彼女はいなかった。スネイプもカルカロフといた時以降見ていないうえ、もしかしたらハリエットに突っかかっているかもしれないと思ったマルフォイもいない。ロンから巨人について説明を受けている間、何度か見回したが、やはり大切な片割れはいなかった。

 そのあとのことを思い出し、大きくため息を吐く。セドリックのヒントは訳がわからない。全く持って……チャンとの仲を見せつけられた気がして、腹が立った。なんだか日が迫ってきた気がして、焦れば焦るほどにセドリックの助言を聞きたくなくて動きたくない。
 ヘンリーは動じてなさそうに見えるが、すべて想定だったのか。なんだか落ち着かないハリーはマクゴナガルとダンブルドア、そして表情を動かさないスネイプを見た。







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