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43:聖なる夜の贈り物 -会場にて-

 最後に入ってきたハリーがよく似た顔の少女と入ってきたことにざわりと声が上がる。ん、とハリーがハリエットの腕を引き、視線で前を見てというとハリエットもすぐに気が付いたのか、固まったスネイプを見て、思わず照れ笑いをして促されるままにパーシーの隣の席に座る。
 昇進したんだと鼻高々なパーシーはハリエットを見て、何か聞きたそうな顔をするがハリエットはメニューを見て選んでいるため、無粋に話しかけるのはやめているようだった。

 どうやって頼めばとハリーもメニューを手に周囲を見るとハリエットは決めたのか、メニューを置いてメニュー名を読み上げる。ポンという音ともに皿に料理が現れ、ちらりと笑うハリエットにハリーも続いて読み上げた。

「ハーマイオニーがクラムとの会話に夢中でよかったね」
 くすくすと笑うハリエットに、ハリーもまったくだと笑いかえし、ダンブルドアのおまる部屋の話を聞いて顔を見合わせて笑う。生き残った男の子に瓜二つの少女にあちこちから視線が集まるが、二人は気にせずホグワーツの料理に舌鼓を打つ。

 二人がそろって人前に出ていることにダンブルドアは優しく微笑み、ちらりとスネイプに視線を送る。眉間のしわがひときわ深いスネイプはあえてハリエットを視界に入れていないようで、顔を向けていないがきっと聞き耳を立てているのだろう。
 食事が終わると妖女シスターズが音楽を奏で始め、ハリーはハリエットともに前に出た。

「スネイプには言わなかったんだね」
「先生へのサプライズ成功」
 向かい合わせになり、教えられたように腰に手を置くと驚いたような、そんなスネイプの態度を前に、えへへと笑う片割れを見る。かつて、スネイプのサラサラヘアー事件を行ったヘンリーを思い出し、スネイプの表情を楽しんで変えるのは君だけだよ、と呆れてため息をこぼす。


 始まった曲に少しぎこちなくも踊りだす双子は互いに気兼ねなくくるくると回る。やがて一曲が終わることには周辺に大勢いて、ハリーはハリエットの手を引いて、一度中央からそれる。

「飲み物何か飲むかい?」
「大丈夫。もう一曲行く?」
 チャンと踊れなかったことに少しの悲しみを覚えつつ、ハリーはいいよというと再びハリエットともに踊りだした。

「私、男性パートは問題ないんだけど、女性パートはほとんど初めてだから……足踏んだらごめん」
「大丈夫だよ。僕だって踊り慣れてないし……。足踏んだらごめん」
 勝手が違うとこうも違うんだね、というハリエットにハリーはたのしいけどむずかしいねといい、再び踊り終えるとロンがふてくされている席に戻った。
 その隣には先ほどいたパドマの姿はない。誰かに誘われて行ってしまったらしい。

「ロン、こんばんは」
「あぁ、うん。ホグワーツに来ていたんだ」
 腰を下ろすハリエットに、一瞥をくれた後どこかを睨むロンはぶすっとしていてそっけない。むっとするハリーだが、ハリエットは笑っていて、熱いわとやってきたハーマイオニーに座る?と声をかけた。

「ハリエット、今日は出られないかと思っていたわ。とってもきれい……。胸元のペンダントもまるで今日のための宝石みたいね」
 ふふ、と笑うハーマイオニーにハリエットは照れて、うれしいなという。ペンダントの実物を見たことがあるのは義母と贈り主と着替えを手伝ってくれた屋敷しもべ妖精の二人……そしてハーマイオニーだけだ。シャワーを浴びるときは部屋に置いているのと、ドラコにも実物を見せていないので誰も知らないだろう。

「2学年の誕生日にって。あ、そういえばその時、隣の路地でハリーがノクターン横丁から救出されたんだ」
 似合ってる?と笑うハリエットの言葉にハリーがあの時いたの?と驚く。

「あの時隣の路地にスネっ、痛いよ!」
 嘘でしょ、というハリーのすねをハリエットが蹴り飛ばし、何があったのかとロンがハリー達を見た。あそこにいたの君、というロンにハリエットはまぁねと言って、睨むハリーを睨み返す。

「ハリエットは彼と仲良しね」
「ハーマイオニーもね」
 女子同士の会話にハリーとロンは入れず、二人そろって照れ笑いするのを見る。
 
 クラムの話が出るとロンはとたんに怒った風にあいつは怪しいとか、ダームストラング校の奴だとか言い出す。ハリエットはあぁこれか、と思い出し傍観することにした。
 この出来事が後の彼らには大事なことだから、とだんだんとヒートアップする二人をハリーとともに見守る。ハリエットが口を出さないことで何か察したのか、ハリーも黙って言い争う二人を見る。
 そのうち怒ったハーマイオニーが立ち上がり、どこかに行ってしまう。それを見たハリエットは肩をすくめて見せ、ハーマイオニーを追いかけた。置いていかれたハリーとロンのところにクラムが飲み物を持ってやってきたが、ロンはそっけなく追い返す。
 立ち去ったクラムだが、すぐにハリエットの深い緑のドレスに気が付いたらしく、その流れでハーマイオニーを見つけてそちらへ向かうのが見えた。

 怒っている様子のロンにハリーはやれやれとため息をつき、バグマンとパーシーが来たことでロンを誘って玄関ホールへと逃げていく。ハリエットとこんな夜を過ごせたことがうれしく、一人なぜか機嫌の悪いロンに少し台無しにされた気がして、夜風に当たる。
 そこへカルカロフと歩くスネイプと遭遇し……ハリーは露骨に嫌な顔をしてスネイプを見た。ロンがいる手前、ハリエットの話をするわけにはいかないが、ハリーがここにいるという事で、彼女が一人かあるいは帰ったか、そう判断したらしいスネイプは足早にカルカロフとともに立ち去った。

 一方、怒った様子のハーマイオニーをなだめるハリエットはやってきたクラムにここにいるよ、と手を振り、ハーマイオニーの肩を叩いた。

「ハーマイオニー、せっかくの夜よ。楽しまなきゃ」
「そうねハリエット。ロンのことで怒るなんて、私もどうかしているわ。ありがとうビクトール」
 受け取ったグラスでのどを潤し、クラムとハーマイオニーは楽し気に言葉を交わす。その様子を見ていたハリエットはそろそろ帰ろうかな、と会場を見渡した。
 ハリー達が先ほどまでいた場所にいないことに気が付き、確かスネイプとカルカロフがいる場所に遭遇していたはず、と楽しそうなハーマイオニー達をそっと見つめる。







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