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39:最初の課題

 その朝はよく晴れていて、ヘンリーはきらきらと反射する水面の明かりで目を覚ました。薬を飲み、さっと準備を整えると大広間へと向かう。重々しい雰囲気のハリー達を見て、なんで授業のあとやるんだろうとむっつりと押し黙るクラムを前に考える。
 クラムとフラーも一応自校のカリキュラムの一端を船や馬車、開いている教室を使って行っていた。だからみんな平等ではあるが、土日にやればいいのにとヘンリーは立ち上がり、授業へと向かう。

 ドラコらはバッヂをつけていたが、ヘンリーはそれをつけて大叔母様の前に出たらどんな叱責があるか想像もしたくない、と言って断っていた。ハリーに対しても特に悪口を言わないヘンリーはスリザリンとしては異質ではあるが、まぁヘンリーにそういったものは似合わないな、と特に気にもされていない。
 むしろ、ロンとの争いについて、あいつに何を言われたんだと、心配されドラコはよりロンを嫌うようになった。
 悪いことしたなぁと積もり積もって……“今の時代のハリー=ポッター”ではないのだから、ロンに対してひけめに感じたりすることもないはずだ、とつい言いすぎてしまったがそれでも、かつては親友だっただけに後ろめたい。

 テントをくぐるとすでに一匹目のドラゴンがセットされていて、驚いたらしいドラコが思わず一歩下がるのを、ヘンリーは気が付かなかったふりをしてでかいなぁと感心したように見下ろした。ほかの選手のを見るのは当然初めてで……ほどなくして入ってきたセドリックは岩を犬に変え、陽動に使いながら機会をうかがう。炎が当たってしまった瞬間ひやりとしたものを感じるが、あの時まで彼は無事であることを思い出し、はらはらしながら結果を見ていく。

 次に来たのはクラムで、結膜炎の呪いのせいで卵が踏みつぶされ、減点されてしまう。フラーに至っては魅了し恍惚状態……どちらかというとリラックスさせて眠らせたのだろう。ヴィーラは同姓には効かないのだからそれもそうか、と最後のハリーを見る。

 呼び寄せ呪文、と見つめていると視線を感じ、ヘンリーはきょろきょろとみて……じっとロンがヘンリーを見ていることに気が付いた。あぁそういえば挑発したんだっけ、と思って懐に手を入れてみると、睨みつけてくるのに気が付きうれしくなって思わず笑う。どうした?とドラコが声をかけるが、ちょうどファイアーボルトが飛んできてそちらに注意が向く。

 爪がハリーの肩を浅く裂き、ドラコまでも息をのむように黙ってみている。やがて前脚を上げたドラコンに向かって急降下したハリーが卵を持て離脱するとほぅと息を吐いて……いつものように奴が死ぬと思ったんだけど残念だ、と残念がる。
 それを見ていたヘンリーははらはらしたねと言いながら、ドラコのことをちょっと見直した。

 そういえば彼は……6学年と7学年でいろいろ見たことのない一面を見せてきた。マートルにしかはけない弱音や、家族の命を人質にされた無理難題な指令。一目で自分がハリーだと分かったくせに誤魔化そうとした。本当に、いろいろあった。この4年間でも全く別の顔を見せてきて……。帽子の言っていた真の友というのははやりドラコのことだったのだろうか。
 思いのほかじっとドラコを見ていたらしく、白い頬がすこし赤くなったような顔で顔に何かついているか?と問いかけてきた。

「いやぁ……ドラコと友達になれてよかったなってちょっと考えていた」
 うん、本当によかった、と一人頷いたヘンリーは掲げられた点数に、ポッターはあぁいうタイプに嫌われるみたいだ、とカルカロフのつけた低い点数に失笑する。あぁ、まぁそうだな、と何やらもごもごというドラコは最年少ながら奮闘するハリーを面白くなさそうに見る。
 ヘンリーの視線は仲良く並んだハリー達3人に移る。何かロンがハリーに言って、こちらを指さしているのが見え……ヘンリーはまた懐に手を入れる真似をする。
 何やらハリーが呆れているが、ロンは一人ピリピリとしているようで、ヘンリーは大きく伸びをするとさぁ戻るか、というドラコ達とともに観客席を立った。


「あいつ、この前の時に君に呪文でもかけてやろうかなんて言っていたんだ」
「でもそれって最初に挑発したのはロンだって聞いたわよ」
 だからハリー、君の番になってからずっと見張っていたんだ、というロンにハーマイオニーは見張っていたのは最初だけじゃないとやっと止まった涙をぬぐう。ロンは相変わらずヘンリーを嫌っていて……そのことに彼女はスリザリンだからね、とあの騒動の後の手紙のやり取りに書いてあった。
 ハリエットがロンにヘンリーであることは伏せておいてと言っていたが、確かに今話すのはよくないのかな、とため息をつく。ロンは以前からヘンリーに対してはマルフォイの次くらいに突っかかっている気がするハリーは、何が原因だろうかと首をかしげた。
 ヘンリーに対しては多分ハリエットだったからかと思うが、ずっと親近感を覚えていたため、ハリーとしては嫌な思いをしたことはない。本当にスリザリンというだけでというのであれば、ロンもマルフォイとそう変わらないんじゃないかなと思うときもある。
 いつか、みんなで仲良く過ごせる日が来るといいな、とハリーは卵を片手に寮へと戻っていった。






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