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23:襲撃の翌日
翌朝、ハリーは目が覚めると飛び起きて降りていく。そのあとを眠そうなロンが続くが、階下では誰もが十分休めていないことだけは明白な顔で、届いた新聞を食い入るように見つめていた。
白黒で光る闇の印に好き勝手に書かれた記事。リータ=スキーターの書いた悪意ある内容にアーサーが呻き、行かねばならないと支度をする。パーシーもそれに続き、ハーマイオニーとジニーが下りてくる。
「ハリエットは?」
「ずいぶん疲れているみたいだったから。ハリー、マクゴナガル先生と、えーっと……ハリエットの大切な人に手紙を送った方がいいわ」
真っ先に問いかけるハリーにそっとしておいてあげて、とハーマイオニーは首を振って、彼女を保護する人に連絡をという。大切な人と聞いて顔をしかめると、マクゴナガル先生にだけ連絡を入れると返した。
絶対にあの陰険教師に連絡すまい、と考える
「ハリー、あの子は……」
困惑したようなアーサーの声にハリーは迷い、いうしかないよね、と顔を上げた。
「彼女は……生まれたときに事情があって別れてしまった、僕の双子の片割れのハリエットと言います。ハリエットは……未来を見る力があるらしくて、それを悪用されないようにと、ダンブルドア先生らが保護していました。多分、昨日の晩も何かあって、それをどうにかするために来たんじゃないかと思います」
どうやって来たのかなどの手段は……事前に会っていただけに知っているハリーだが、それを言うわけにはいかない。生き別れの双子だと聞いて、モーリーはなんてこと、と胸に手を当てフレッドとジョージに視線を送った。
「どういう条件かわからないけど、未来のことにかかわるとペナルティーがあるという話で、多分昨夜もそのぎりぎりのことをしていたんじゃないのかなって。ハリエットは一学年の時に初めて顔を合わせて……ホグワーツでは別人になって過ごさなければならないのだっていうのも去年初めて知ったほどなんです」
「そうだったのね。大丈夫よ。誰も彼女のことを口外することはないわ。本当に大変だったのね。迎えが来るまでここにいていいと、彼女に伝えてもらえるかしら」
多くは僕も知らないことがあって、というハリーにモーリーは大丈夫というと、ハリーを抱きしめる。突然のことに驚くハリーだが、様々考えなければならないことがあり、ほっとしたように息を吐く。
「ちょっとハリエットの様子を見に行ってきます。もしかしたら今頃目を覚ましているかも」
「それじゃあ私も行くわ」
少し照れ恥ずかしくなったハリーが様子を見に行くというと、ハーマイオニーもまた行くという。ロンとはほとんど顔を合わせていなかったため、二人でジニーの部屋に行くと、先にハーマイオニーが入り、起きているかを見る。
「ハリエット、大丈夫?」
寝起きでぼーっとするハリエットはハーマイオニーの声に驚いて振り向き、ここはどこだろうと首を巡らせた。入口にいる二人に気が付くと隠れ穴だ、と小さくつぶやいた。
「怪我はおばさまが薬を用意しているって。試合の時なんてほんとびっくりしたんだから。正体がばれたとかはない?大丈夫?」
まさかあの一家といるなんて、というハーマイオニーにハリエットは苦笑して、試合の後すぐに帰宅したように見せたから大丈夫と返す。
「すっかり忘れていて、席に着くときに思い出したんだ。昼頃に先生に送ってもらって、それから昼食と、少し早い夕食をもらって……」
「本当に心配したんだよ!いつも通り連絡全然くれないと思ったら、あんな奴と一緒にいるし、死喰い人……だっけ?には追いかけられているし!!」
ほんと、君は何を考えているさ、というハリーにハリエットは心配かけすぎたかなと考えて、まずいなぁとこぼす。母と、彼からの怒りは免れないだろうことは容易に考えられる。
「母さんと先生に嘘ついてきたのにあんなへましちゃうもんだから……あぁ、箒でも持ち込んで来ればよかった」
でもあの一家が助けられたから、とぶつぶつ呟くハリエットに心配していたハリーは自分の心配をしてくれよという。その言葉に確かにとハリエットもうなずく。
「服装をまるっきり変えるためとはいえ、ポッター家の長女だってわかるようにスカート履いてきたのは間違いだったね。あと、スパッツじゃなくて長いパンツにすればよかったよ。逆さ吊りされることは想定していたはずなのに、ちょっと甘かったかも」
あんなに恥ずかしいなんて、というハリエットにハーマイオニーはそうじゃないわ、とため息をつく。え?というハリエットだが、ハリーのそういう問題じゃない、という声に目をしばたたかせた。
ハリーがどこに怒っているのか、いまいちわからない。
ハリーもそれで大きくため息をつくと本当に心配したんだ、と言ってハリエットを抱きしめた。それでようやくハリーがどれだけ心配したのか分かったのか、ごめんと小さく謝り、おずおずと抱きしめ返す。
「詳しいことはまたあの不思議な部屋とかで聞くよ。今はとりあえず治療して、ダンブルドア先生かマクゴナガル先生の迎えを待とう」
さぁ、と促すハリーにハリエットは立ち上がり、ハーマイオニーにも心配かけてごめんね、という。大丈夫、というハーマイオニーにも促され、ハリーはウィーズリー家が待つ一階へと降りて行った。
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