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16:真相のカギを握るもの
二人が出かけるとハリエットから聞いていたスネイプは、彼女がどのような生活リズムかわからないために前もって手紙を出し、昼食前に向かう。上下の移動がさすがに長い、と夏の暑さも相まって辟易するスネイプは目的の占い学教室へとたどり着いた。
つくや否や上から梯子が下りてきて、一息つこうとしていたスネイプは長い溜息を吐き、縄梯子を登っていく。
「突然の手紙驚きましたわ。あーお茶はいかがかしら?」
「トレローニー教授、手紙に書いた通り、占い学の古い文献を探しているのだが……」
奥から出てきたトレローニーはほとんど会話をしたことのないスネイプをじっと見る。お茶を辞退するスネイプは占い学の本になってないような古い文献が読みたいという。いぶかしむようなトレローニーにシェリー酒を差し出す。
「あぁ、まぁ、一応曾祖母が遺した資料をまとめてありますわ」
ん、んと言いながら。トレローニーはどこかそわそわとした様子で受け取り、何が知りたいのかしらと古い書物を取り出した。一応それなりに高いシェリー酒を用意していたスネイプは、神秘的な空気のかけらも感じられないトレローニーの示した先にある古びた本に目を向ける。
「予見者についてを知りたいのだが……」
「あぁ、そういえばそろそろ入学の頃でしたかしら。予見者のことでしたら……あぁこの辺りに書いてあったかと。古い呼び名が混じっているかもしれませんが、まぁ大丈夫でしょう」
見当はずれなことを言うトレローニーに眉を顰めるスネイプだが、こんな人であっても“予見者が生まれたこと”を感知しているのだと思うと、彼女を取りまく情報の出どころは想像した以上に多いのかもしれない、と考えを改めた。
これとこれとこれと、とスネイプの前にトレローニーは雑に積み上げ、あぁあれはどこに行ったのかしら、と埃だらけの棚を見上げる。
「もう一つ手書きの記録があったはず……。見つかったらお渡しします」
探しても見つからない、と早々にあきらめるトレローニーにスネイプは呆れ、ひとまずはとあまり状態のいいとは言えない本を抱えた。これだけでもかなりの時間を有するだろう、となるべく早く返却すると言い残し、早くシェリー酒を飲みたいという雰囲気を漂わせるトレローニーを置いて教室を後にした。
不快なにおいに満ちていた部屋から出たスネイプはロングボトムの失敗した魔法薬と同じだ、と肺の空気を入れ替えるように息を吐きだし、新鮮な夏の空気を取り込んだ。
先ほど積み上げられた際、同じ本が何冊かあった、と信じられない管理体制に本当に頼るべきだったかと痛い頭を抱える。
だが、図書館にもなかった古い本があったことは間違いではなかったのか、と思い直し古い本を見下ろす。とりあえず、最初に本を掃除し読める状態にしなくては、と埃ですっかり汚れた表紙を歩きながら軽く払う。
ハリエットの、彼女の持つ力を正確に知る必要がある。きっとこの中にそのヒントがあるはずだ。机に置いた本はやはり保管状況が悪く……同じ本と思っていた本は片方がホグワーツの蔵書であることに気が付き、深々と息を吐いて9月以降にこちらで返却しても問題はないだろう、と分けておく。
自分より少し先に教職についていたというトレローニー。かつて……死喰い人であったときにダンブルドアが誰かと密会するという情報をもとに後をつけ……あの予言を聞いた。もしやあの時あの予言を言っていたのが彼女だというのか。
だが、日々の授業の様子を時折耳にするととてもそうは思えない。だが時期的にもそれが正しい気がして……占い学に関してはやはり理解ができないと首を振る。少なくとも、トレローニー家は有名な予言者を出していたと聞いていることから、何か一族の力なのだろうか、と破かないよう、慎重にページをめくる。
何か手掛かりは、とめくっていたスネイプは杖で払っても払っても湧き出る埃に辟易し、次はこの後の章から、と栞を挟んだ。古い文献には役に立つ目録がないことが多いせいで最初から見ていくしか方法はない。
先ほど、愚かしい自分の行動を思い出したためか、頭が痛みを発し気が滅入る。今年の催しものを考えて……焦りすぎたところでどうしようもない、と汚れた手を清め、部屋の空気を入れ替える。
続けて読むには気力が回復するのを待たねば、頭に入ってこない、と立ち上がった。
次の項目は、“未来から降り戻る星の夢”というものだ。これだけの資料があれば予見者について情報を得られるだろう、とスネイプは薬草を取りに部屋を出た。
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