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45:マルフォイからの招待
格式高い様相のワシミミズクから渡された、なにやら仰々しい手紙にヘンリーは目をしばたたかせた。確かこのフクロウは、とマルフォイを見ればあぁ、と声を上げて慣れた様子でフクロウを撫でる。
「以前、ヒッポグリフの件で父上がお礼を言いたいといっていたのだが、ヘンリーの具合がひどく悪くなったことがあったことから機会をうかがっていたんだ。この間、ヘンリーが僕の代わりに飛んだ話をしたところ、そしたらこのお礼のほうがヘンリーも喜ぶのでは、と」
僕をかばったことと、代わりにシーカーを務めたという話をするとぜひお礼をしたいと言っていた。そう言われてヘンリーは首をかしげて手紙を開く。
触り心地のいい羊皮紙にさわさわと動く金の装飾が施され、それに負けないほどの美しいとさえ思えるような……流れるような筆跡。
初めて受け取った、全盛期のルシウスからの手紙に内容より先に気圧される。
手紙の内容よりも、その装飾に気圧されているな、と思わず笑うマルフォイはこっそりヘンリーの皿にスコッチエッグを乗せた。気が付けばいつも彼の皿には誰かしらがもっと食べろと、何かを置いているのは変わらない。
気合を入れて読むヘンリーはヒッポグリフの件について、息子を守ってくれたことと不注意による怪我をフォローしてくれたことへの感謝の言葉。そして、是非にとお礼をしたいとつづられていた。
「あれ、この日って確か……」
「そう。クィディッチワールドカップの決勝戦だ。最近は夜遅く戻ってくることもあっただろう。何か予定があって無理ならそう言ってくれよ。ただ、僕としてもヘンリーと一緒に観戦したいと思って」
今年、招待されたんだ、というマルフォイにヘンリーはすっかり遠くなってきた記憶の中、クラムを初めて見た時確かにいたはずとおぼろげな影を思い出す。
少し考えていたからだろうか。マルフォイがじっと見ていることに気が付き、ヘンリーは少し考えてにこりと笑う。
「クィディッチワールドカップ、決勝戦だなんて……僕が行ってもいいのかい?」
「もちろんだ。じゃあ父上にはヘンリーが行くことを伝えよう」
喜ぶヘンリーにマルフォイは満足げに頷き、これで書くといいと言って羊皮紙と羽ペンを取り出す。用意周到だな、と笑うヘンリーはめったにない席に呼んでもらえたことへのお礼と、簡単な挨拶を書いてマルフォイへと渡した。
ルシウスとは正直会いたくもないが、そうもいっていられない。それに……、とヘンリーは今後のことを考えた。どのみち、“ポッター家の長女”の情報はピーターからヴォルデモートにわたるだろう。
その前にやることはいくつもあるのだ。母とダンブルドアに伝えなくてはと心を決めた。
マルフォイとヘンリーの親密なやり取りを見ていたスネイプは苛立ちながら、手元に届いた手紙に視線を落とした。差出人はつい先日まで近くの席にいた知人だ。
わざわざ言われなくともわかっている、と手紙をしまう。手紙には彼女の精神面を、心を支えてほしいと書いてあった。彼女を信じると、そう彼女と約束した。
だが、とスネイプは先日から感じる胸騒ぎに左腕を見る。ピリピリとしたような痛みが闇の印から感じられ、その色が濃くなった気がする、と左手を握り締めた。ヘンリーは、彼女は知っているのか。ここに呪われた印があることを。
彼女の両親が襲われるきっかけを作った張本人であることを……彼女は知っているのか。彼女はどこまで“見て”いるのか……なんとしてでも知らなければならないのだ。
彼女と言う“予見者”について、彼女がうっかり呪いを発動させないようにさせるためにも。
それにしても、とスネイプは来学期の事で頭が痛い思いだった。なぜ今、ハリー=ポッターがいる時にあれをやるのか。
これが運命だというのであれば……なにが起きてもおかしくはない。
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