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27:彼のいない日
ハロウィン後の週明け、ハーマイオニーはきょろきょろと大広間を見回していた。
「どうかしたのかい?ハーマイオニー」
誰か探しているのか、とハリーが問いかけるとブスっとした顔のロンがスリザリンの赤毛だろという。ヘンリーのことだと分かったハリーはスリザリンの席を見て確かにいないことを確認する。心なしかしょんぼりしているようにすら見える。
「ハロウィンの夜、スネイプ先生が抱きかかえて連れてきているのを見かけたから体調が悪いのかと思ってね。昨日もいなかったようだし……」
「あぁ、彼って確か魔法薬を毎日飲んでいたんだよね。寝袋なんかで寝たから体調崩したんじゃないかな」
スネイプが自寮とは言え生徒を抱えてきたことにシリウス=ブラックが侵入したこととは別のざわめきが起きた。彼が具合の悪い生徒を抱えて連れてくるなどありえないと誰もが口をそろえる。
「あぁ、聞いた話だけど」
「ずっとスネイプの部屋にいるらしいから、体調不良なんだろうぜ」
突然聞こえた声に振り向けば双子がいて、ハーマイオニーが納得したように頷く。それにしてもやはり耳がいいと言いうか……と半ば感心するハリーにところでさ、とジョージが顔を寄せる。
「ハリーに聞きたいんだけど、ポッター家ってハリー以外学校に通っているか知っているかい?」
耳もとでひそひそと尋ねるジョージにハリーの眼が驚きで見開かれる。
「え、そっそれってどういう」
思わず挙動不審になるハリーを見た二人は顔を見合わせ、言葉に出さずに何か意思疎通したように……なんでもない、じゃあ!と立ち去って行ってしまった。
「どうしたんだよハリー」
聞こえていなかったロンに声をかけられ、ハリーはどぎまぎしながら何でもないと首を振る。なぜ彼らがハリエットのことを……。まさかそんなはずはないと考えるがポッターの名前は他にはいないはず……だ。ハリエットと会ったのだろうか。
そういえば彼女のこの大広間で寝ていたのだろうか。それとも、彼女はどこか別の場所に隔離されたのか。思えばずいぶんと彼女と連絡を取っていない。
「連絡一つくらいくれたっていいのに」
彼女からしか連絡が取れないというのに、彼女はいつだって気まぐれだ。それを見るハーマイオニーは体調を崩した彼女を想い……ハリーが気にしていたことを伝えたほうがいいかしら、と考える。
たぶん彼女はこの間言っていたように、自ら動くのをやめると言っていたことと、単純にヘンリーとして会うことが多くて、“忘れている”可能性がある。いや、忘れているというよりも、よくあっているから全然あっていないという感覚が無いのかもしれない。
それにしても、彼女大丈夫かしら、と親友の体調をあんずる。手紙の返事がないことから相当悪いのか、それとも誰かによって軟禁状態なのか。
魔法薬の授業を受けた日、ハーマイオニーは二人に先に行っててと言って、一人最後まで残ると、スネイプのもとへと向かった。何時も真っ先に提出するハーマイオニーに気が付いたスネイプは眉間にしわを寄せ……授業の事での質問ではないな、と察する。
「ヘンリーの体調不良ですけれども大丈夫ですか?もう一週間になりますけど、手紙も戻ってこないから心配で」
マクゴナガル先生は魔法薬の副作用だと言っていましたけど、というハーマイオニーにスネイプはため息を吐いた。
ここでグレンジャーを無碍にしてはハリエットが悲しむのではと考え、意識は戻ったという。予想以上の親友の状態に驚くハーマイオニーが口を開くより前に今は会えないと、そう言って遮る。
「ハロウィンの夜、薬の効果時間にやや不完全な薬を飲んだことで、体調を崩している。赤い猫が届けてきた手紙は彼の枕元に置いておいたゆえ、今頃読んでいるだろうが返事はまだないだろう。赤い髪と黒い髪がまだらになっている状態のため、少なくとも完全に薬の効果が抜け、新しい副作用の少ない薬を飲める状態になるまで、外出させるわけにはいかない」
まだ薬の調整が必要なのだ、と荷物を纏めるスネイプが教室の出口へ向かう。慌てて教室から出るハーマイオニーには何も言わず、私室に消えていく背をハーマイオニーは見送り……。
もしかして彼女、スネイプの部屋で寝ているのかしら、と考える。そういえばフレッドとジョージが言っていたがまさか本当だったなんて、さすがに13歳の彼女に手を出すことはないだろうけど心配だわ、と地上に向かうハーマイオニーはため息をつき……先に行っていたハリー達を追いかけた。
ルーピンまでもが体調不良となり、狼人間についての授業を受けたハリー達はカンカンになって闇の魔術に対する防衛術の部屋を出る。罰則を受けたロンは最悪だと怒り……医務室の掃除の手伝いにその夜出ていく。
「あら、クルックシャンクス。手紙を持ってきてくれたのね」
かさりと、手紙を落とす愛猫をハーマイオニーは抱き締め、手紙を開いた。やっと薬の副作用が抜けて、明後日には戻れるという。
心配かけてごめんという手紙にほっとするハーマイオニーは明日の試合には間に合いそうにないのね、とため息を零した。
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