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23:ハロウィンの夜

 賑やかなハロウィンをやっと満喫するハリー達をそっと横目で見たヘンリーは、そのまま視線をスネイプに向けて……バチリとあった目が細められたことに顔が赤くなりそうで慌ててパイに夢中になっている風にふるまう。
 マルフォイと二人で出歩いたのは偶然だし、手を繋いだのも特に意味はない。なのになぜか不機嫌で……有無を言わさず寝台に押し倒され、息継ぎも許さないという風に口づけられて気絶する寸前で解放された。
 至近距離で見つめるスネイプの黒い瞳が不穏な色を放っていて、ぞくぞくとした……期待するかのような興奮を覚えた。
 はっとしたように目を見開くスネイプに、ヘンリーは一体何を期待したんだ、と自分で恥ずかしくなって顔を赤くした。抱きしめるスネイプの手にほっとして、起き上がろうとするスネイプを引っ張った。
 虚を突かれたのか、バランスを崩すスネイプを抱き留め、押しつぶされる重みにへへへと笑う。悪い子だ、と笑って自分を抱きしめたまま反転して……。

「先生の手、大きくてほっとする」
 いいなぁと笑うヘンリーにスネイプは黙って口づけた。

 カボチャジュースよりも甘いひと時を過ごした分、恥ずかしくて仕方がない。そろそろ終わりかなとダンブルドアの絞めの言葉を聞いたヘンリーは少し考えて寮に戻る列の最後尾に着く。
 地下牢に降りる階段の途中でどこからか悲鳴が聞こえ……ヘンリーは足を止めた。ほんとおじさん……とため息を吐くヘンリーは談話室に入ってすぐのところで立ち止まる。監督生らが静かに、と声をかけて入り口に視線を寄こした。
 そこにスネイプが現れ、城内に侵入者が現れたことから大広間で全生徒集まっての就寝になったと伝える。

「今夜は教員はみな城内の確認を行う。監督生は全員を大広間へ。ヘンリー、来たまえ」
 静かな談話室にスネイプの声が響き、入り口近くのヘンリーを呼ぶ。
「薬は何時間のを飲んだかね?」
「出かける都合で朝に一番長い16時間のを。あと2時間で切れると思います」
 声を落として尋ねるスネイプにヘンリーは首を振ってあまり時間がないことを告げる。
「少し体に負荷がかかるが、明日は一日部屋で休ませるゆえ、今薬を飲みたまえ」
 今夜は自室に戻ることもないだろうし、一人医務室に入れておくわけにもいかない。そう考えるスネイプはやむを得ない、と薬の重複を許可する。
 大体、寝ている間は本来の姿のほうがいいのだが、今は目の前の危険を回避する方が先だ。朝、安全だと分かったところで彼を回収し、自室に寝かせる。これしかない、と10時間の薬を飲むヘンリーを見つめた。
 薬の重複はやらないほうがいいと言われていたこともあり、守っていたヘンリーは初めて薬を重なるタイミングで飲む。延長できたかな、と歩き出そうとして、ぐらりと眩暈を覚える。
 見守っていたスネイプが支えると、新しい薬の副作用が強く出ている、と眉を寄せるヘンリーを抱きかかえて大広間へと向かった。
 女性ホルモンを男性ホルモンに置き換え、体型を変えているのと、眼の色も変えている。ただでさえ成長に影響を及ぼしているというのに重ねた影響で具合が悪くなっていた。
 やはりもう少し彼の薬の副作用がないものを作らなければ、と大広間に入る。


 ダンブルドアが監督生らに入口の見張りを任せ、そうじゃそうじゃと寝袋を出す。ぐったりとしているヘンリーを寝袋に入れるスネイプが寮生らに薬の副作用だと説明して床に寝かせる。
 眼鏡をはずし、顔の近くに置くとさらりと額を撫でた。
 普段一人で寝ているヘンリーの寝顔、とスリザリン寮生らが守る様に寝袋を集める。そのヘンリーの隣には当然のようにマルフォイが横になり、スネイプは何とも言えない顔をして大広間を出て行った。
 スネイプに抱えられているうちに眠ったヘンリーが見せる無防備な寝顔をマルフォイはじっと見て、あることに気が付き体を起こしてヘンリーの首の後ろに手を入れる。

「結んだままは痛いだろう」
 一つに結んだままの髪を解放させ、ターコイズのついた髪紐を眼鏡の傍に置くと、紐はかってに眼鏡に絡みついた。顔にかかった髪を指で払うと少し体温の高くなった額に触れる。
 冷たい手にほっとしたのか、ほのかに笑う姿に慌てて手を引っ込める。耳が熱い気がするのは気のせいだ、とマルフォイは目を閉じた。
 マルフォイ家の人間をこんな床で寝かせるなんて冗談じゃない、という文句も何もかもが消えて……まだ次回のホグズミードに誘おう、といい夢が見れそうな気配に身を任せる。





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