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22:ホグズミード
 
 ハロウィンの日、3学年生にとっては初のホグズミードへ出かけることが提示され、ヘンリーはどうしようかなと考えていた。許可書はおそらく誰よりも早い最速記録でサインも受理も終わっている。
 お小遣いも少し増えた。ただ、行くかどうかと思った時に一人で行くには少し寂しいものがある。だけど、残るとハリーに会いそうで気まずい。

「ヘンリー、ホグズミードに行く日、一緒に回らないか?」
 いつも通りマルフォイの隣に座って朝食をとるヘンリーにマルフォイが声をかける。マルフォイと一緒ということはいつもの二人も来るということだ。特に用事もなかったヘンリーはいいよと頷いた。
 どこかほっとするようなマルフォイに首をかしげ、ヘンリーは今日の授業を確認する。今日はヒッポグリフ以降しょげきったハグリッドの授業だ。
 またレタス喰い虫か……と落ち込むヘンリーは数占いの提出物を再確認する。ふと、足に猫の毛が触れて屈みこんだ。つぶれた顔がポイントのクルックシャンクスから手紙を受け取り、ポケットに入れていたササミの干し肉を与える。

「よくヘンリーの所に来ている猫だな。ニーズルの雑種か」
 同じようにテーブルの下を覗くマルフォイがササミを嬉しそうに食べる赤毛の猫を見て、ヘンリーを見る。
「やっぱりヘンリーの髪のほうがきれいな色をしているな」
 同じ赤毛でも違うという。猫と一緒にしないでよと笑うヘンリーはクルックシャンクスに別れを告げて立ち上がった。


 ハロウィンになり、ヘンリーは正面扉の前にいるマルフォイの傍に駆け寄る。
「あれ?クラッブとゴイルは?」
 珍しく一人でいるマルフォイに問いかけると、何でもないように後から来るさと言う。
「あいつらは昨日変身術のレポート再提出を受けて、今最後のまとめ中だ。待っているのがバカらしいから先に行くことにしたんだ」
 さぁ行こうと促され、ヘンリーはフィルチのチェックの下ホグズミードへと向かう。前のほうを見ればどこか興奮した様子のロンとハーマイオニーが仲良く歩いているのを見て、本当にいい友達だったなと口角を上げた。

「なんだ、変な顔をしていたからそこまで楽しみじゃないのかと思っていたぞ」
 目ざとくマルフォイに見つかり、ヘンリーはごまかすように笑う。ふと、ヘンリーはマルフォイをまじまじと見て、背のびた?と問いかけた。
「そりゃ、伸びたさ。身長の変わらない誰かと違って、僕はまだまだ伸びる予定だ」
 何を言っているんだ、とそう笑いかけるマルフォイにヘンリーはむっと顔をしかめた。去年は同じくらいだったのに、マルフォイは急に大きくなった。
 少し声も変わりつつあり、魔法薬で声を少し低くしているヘンリーは生来の性でこれほどまでに違うのか、と考える。マダム・ポンフリーが懸念していた、遅れていた二次性徴とやらは無事始まって、ホグワーツの屋敷しもべ妖精であり、乳母であるベベが持ってきてくれる薬を飲んで症状を抑えていた。
 大人の女性への階段を上がってしまったため、これ以上はあまり身長も伸びないと聞いている。と言うことはこれから先、スリザリン寮の男子生徒の中で一番のチビであることは確定していて……。ハリーの時でさえ小さかったのに、とヘンリーはため息を零した。

「ヘンリーは絶対にこれ以上伸びるなよ」
 ぼそりと、つぶやくマルフォイにヘンリーはそれは困るなと漏らした。スネイプとの身長差から彼に大人の女性として見られないんじゃないか、彼の隣にいるには不釣り合いもいい所じゃないか……そう考えてしまう。
 城の敷地外に出るさい、ディメンターの隣を通るヘンリーはできるだけ心を無にしようと務める。急に空いていた手が握られ、目をしばたたかせるとマルフォイが少し冷たくなった手を握っていた。やっぱり彼はディメンターが嫌いなのではないか、そう考えて繋がった手を握り返す。

「大丈夫だよ」
 そう笑うと振り向いたマルフォイはそっぽを向いてしまい、ヘンリーはそれが面白くて更に笑う。はぐれないように手をつないだままハニーディスクに向かい……あまりの人ごみに他の店を回る。
 ぐるっと回ったところで再びハニーディスクに行けばトロール……いや、クラッブとゴイルが人を押しのけながらお菓子を購入していた。あいつらは、と頭を抱えるマルフォイにヘンリーは仕方ないさと笑って、二人が脱出するのを待った。

「三本の箒でバタービールでも飲むか……」
 まだ買い物をしているゴイルがマルフォイに気が付くと、マルフォイは身振りで三本の箒にいることを伝え……伝わったかわからないままに二人は三本の箒の中へと入っていった。
 バタービールを飲んでいると、そこにロンとハーマイオニーがやってきて、少し離れた席に座る。この先ここまでも死喰い人に占拠されてしまうなんて、誰も思えないほどに賑やかで……ヘンリーは暗い未来から目をそらす様に、丁度入ってきたトロ……クラッブとゴイルにここにいるよと手を振った。
 のそのそとやってきて……カフェモカ、ホイップクリーム乗せを頼む姿にヘンリーとマルフォイは顔を見合わせてため息を零した。


 そろそろ戻ろう、と羊皮紙を買いに魔法道具に立ち寄った一行はそのまま城へと戻り、ヘンリーは薬草を取りに行くと言って玄関ホールで別れる。周囲を確認し、いつもの石のベンチの傍に身を隠し、杖を振る。
 周囲には誰もいないことを再確認して、ビオラになった。動物ならではの嗅覚を使って目的の匂いを探す。もちろん、覚えているわけではなくただ嗅いだことのない強い匂いを探すにとどめるしかない。
 あちこち探して、まだ来ていないのか、と再び物陰に隠れてアニメ―ガスから戻る。
 
 城に戻ると、ロンとハーマイオニーにばったり出会い……ロンに睨まれてヘンリーは首をかしげた。少し前から何かにつけロンはヘンリーを睨んでいる、そんな気がして訳が分からない。
 そこにスネイプまで現れると、どこか不機嫌なスネイプに探していたので来るようにと言われて、今日はなんだか変な感じだと大人しく着いていった。

 その様子に、親友にまつわる話になるとほんと話が早い……とハーマイオニーはため息を堪えて帰りを待つであろう親友に会いに急ぐのであった。





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