--------------------------------------------


4:プレゼントの真意

 とにかく、と薬の効果が切れるまで課題を片しては?と言うマクゴナガルの声に従い、二人でそれぞれ課題に取り組み始める。
 資料ならそこにあるはず、と言うヘンリーの申し出をありがたく受け、ハーマイオニーは戸棚から教科書などを借りて二人は黙々と課題に取り掛かっていった。
 2時間と少しが過ぎたぐらいで薬の効果が切れると杖を振ったマクゴナガルの手元から動く巻き尺が素早く胸元に巻き付き、容赦なくハリエットのバストサイズを測っていく。

「恥ずかしい……」
 我慢なさい、と言うマクゴナガルに言われ、ぐっと我慢するハリエットにハーマイオニーは笑って、緑色の輝きを見せるペンダントに気が付いた。
「綺麗なペンダント……。ハリエットの目の色と同じ色ね」
 インナーの胸元で光るペンダントを見つめるハーマイオニーにつられてハリエットもペンダントを見て動きを止めた。
 ペンダント同じ色の目をぱちぱちとさせ、嬉しそうな恥ずかしそうなそれらをかみ殺した表情になる。

「そのペンダントのおかげで毒が回る前に石化したのですよね」
 微笑ましいものを見るかのような優しいまなざしでマクゴナガルはハリエットのペンダントに視線を送る。スネイプはペンダントを返す前になにやら保護の魔法をかけていた。本来は渡す前に施す予定だったらしいが、にこにこと笑うヘンリーについ渡してしまったという。
 買いに行くにもすぐにはいけないことから、ハーマイオニーが帰る日にダイアゴン横丁で買おう、とそういう話になり解放されたハリエットは深々とため息をついた。
 どこかにちょうどいい布が、と探していたマクゴナガルが杖を振るい、とりあえず今は、と言って簡単なデザインのブラをハリエットに差し出した。
 思わず顔を引きつらせるハリエットだが、生粋の女性二人に囲まれ、抵抗もむなしく女性ものの下着に初めて腕を通したのだった。
 なんだか胸元を絞められるような、それでいて安定したような、そんな気分になんとも複雑な思いになって、寄せられたことで強調されたような浅い谷間を見下ろす。
 女の子って大変なんだな、とかつての恋人と、親友に思う。


 夜、本を読みながら眠ったハーマイオニーの手から本を取り、ベッドサイドに置いたハリエットはタオルケットをかけ直してあげ、そっと笑う。
 ハーマイオニーとロンはでこぼこだったけれども、それが互いに強い絆になっていたのも知っている。
 そっか、とハリエットは胸に下げたままのペンダントに触れた。一生懸命調べて、グリーンダイヤモンドは忍耐力とか精神力とか……成功とか。回復を高めるなどもあった。そしてダイヤモンド特有なのが永遠の絆と永久不変という言葉。
 てっきりそういった石に込められた力から選んだのかと思っていた。なのに、彼の中での一番はただ一人なのだ。母の面影のあるらしいヘンリーに唯一無い緑の輝き。

「わかっていてもやっぱりきついな……」
 それでも、その一途な彼が好きになったのは自分だ。そう考えてハリエットは膝を抱えた。考えてみれば一度も愛しているなどと言われたことはない。彼の愛している相手は……。
 そう思うと一方的な想いなのか、それとも、もう手に入らない宝石の代わりに自分を選んだのか。そうでなければ男の身体に偽装されている自分の体を抱くなんてことするはずがない。
 母リリーのという輝きは彼にとっての太陽で、光の下輝く純白の百合だ。自分はどうあがいてもそれを超えることはできない。
 そして彼もまた、太陽のもとその身を晒すような人ではない。だから自分を選んでいたとしてもおかしくはないのかもしれない。

 彼を生かすため、彼を助けるため。本来はそのために転生したはずだ。だから、だからそこにほんの一匙幸せをもらってもいいじゃないか。
 そしてこの胸の痛みはその対価なのだ。だから、それ以上、彼の心を求めてはいけない。一滴、目からこぼれたものを無視して、ハリエットは横になった。
 彼を愛しているのは事実であり、彼が愛しているのは母と言うのも事実なのだから。それは受け入れなくてはならないのだ。





≪Back Next≫
戻る