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3:ガールズトーク

 スネイプと別れてからマクゴナガルに会うこともなくハリエットの部屋に戻ると、そこでやっとハリエットは大きく息を吐き、急いで着替える。
「あの魔法薬凄いのね。胸とか全くなくなるなんて」
 ちょっといい?と言って平らになったヘンリーの胸元を触る。止める間もなく触れられたヘンリーはちょっとまってよと焦るが、着替えるために手を上げていたため、すぐに対応できない。
 男子同士の戯れには慣れていたヘンリーだが、女子同士の戯れは初めてで、どうしていいのかわからない。

「あぁごめんなさいね。ほら私、ポリジュースの時は女の子になったから、見かけだけでも性別が変わるのがすごく不思議で。でもこうしてみると確かに体つきは男の子になっているけど、手の先とか足先とか……あまり変わってないのね。髪の色とか……変わっているけどやっぱりハリエットなんだぁと」
 制服じゃないから余計にそう見えるのかしら、というハーマイオニーはあれ?と首を傾げた。
とりあえず効果が切れるまで、とワンピースからシャツとズボンに着替えたヘンリーはつられた様に首をかしげる。

「ねぇハリエット。あなた……下着着けてないの?」
 中にインナー一枚だったからというハーマイオニーにヘンリーはさらに首をかしげる。ドアを開けっぱなしで会話していた二人に、帰ってきたマクゴナガルがあぁ!と声を上げた。
 え?何々?というヘンリーは部屋に入ってきたマクゴナガルとハーマイオニーを見比べる。

「インナーはちゃんと着ているけど?」
 なんのこと?というヘンリーをじっと見る生粋の女性二人にただ混乱するばかりだ。
「いつもそのヘンリーの姿でいるから忘れていましたが、そろそろ買わないとですね」
「ちゃんと測らないとだめですよね」
「何の話?」
 この姿だと分かりませんものね、と言いながら彼女ならどんなデザインがいいかなど二人だけで話が進む。何が何だかわからず、ぽかんとするヘンリーにマクゴナガルは何時間のを飲みましたかと問いかける。
 ごそごそとポケットを確認し、2時間のが無くなっていることを確認した。

「ではまた2時間後ですね。何ってあなたももう年ごろなのですから、ブラを着けなくては」
 常にヘンリーの姿だからわからなかったですが、と言うマクゴナガルにブラ?と疑問符を浮かべて顔を赤く染め上げる。
 触れたことがないわけではない。現に前回触れることもあったから知っている。だけれども恥ずかしくて直視したことはない。

「ということはさっきハグリッドに会いに行った時も、スネイプ先生に会った時もノーブラだったわけね……」
「ノ……っ」
 朝着替える時に気が付けばよかった、と言うハーマイオニーにヘンリーは顔を真っ赤にして、それ以上言葉が紡げなくなる。
 それはいけません、と授業の時のように厳格な雰囲気をまとわせるマクゴナガルはすぐに買わねばと言い出す。つけるのも恥ずかしいが、よりによってスネイプの前で着けていなかったことが無性に恥ずかしく、ハリエットは顔を覆う。
 こんな羞恥を味わうならばヘンリーの姿でも何かしら着けないとだめかもしれない、とハリエットは姿を見られた比じゃない恥ずかしさで溶けてしまいそう、と頬に手を当てた。

「学校が始まってからは胸元が二重になったインナーを着ればヘンリーの姿でも問題はないかと思いますが……問題は夏ですね」
「一日中薬を飲まないのって夏ですよね。ハリエット、薬が切れたら……ね!」
 きちんと買わねば、というマクゴナガルと、ハリエットがこの辺の認識が疎いことに気が付いたハーマイオニーが見事に結託する。

「い、いいよ!もったいないし……。あ、そうだ!スネイプ先生にぺしゃんこ薬の作り方を聞いて……」
「あなたは何回セブルスの理性の壁を破壊すれば学ぶのですか。如何に彼の理性の壁が分厚くとも、彼も男性です。どんなに仲の悪いハリーとあなたが似ているからそのような色眼鏡で見ないかもしれないと、馬鹿な推測を立てたところであなたは女性です。いいですか?男は皆狼です。そんな相談持ち掛けてどうするのです。七面鳥が感謝祭に投票するということわざがありますが、あなたの場合野菜を身に着け、浮かれた様子で感謝祭に行く七面鳥です。あとは料理するだけの七面鳥です!!」

 ハリエットの言葉に何かがぶちぎれたらしいマクゴナガルが口早に畳みかける。いい加減にしなさいという雰囲気のマクゴナガルに思わずハーマイオニーも居住まいを正す。
 彼女も彼女で男友達を女子便所に押し込め、狭い部屋の中魔法薬を連日煎じていたことから思うところがあったらしい。あまりの剣幕に恐れおののき、縮こまったヘンリーは元気爆発薬でもこんなに赤くならない、と言うほど耳まで真っ赤にしている。

 ハリーが時々うっかり失言をしてしまったり、ノーバートの時に自分も気が付かなかったとはいえ、大事なマントをよりによって塔のてっぺんに忘れてしまったり……うっかり事故が多いきがするが、彼女も彼女で似ているのね、と反省している風のヘンリーをハーマイオニーは見つめる。それにしてもやっぱりそういう風に二人を見ていいのかしら、と小首をかしげた。


 スネイプの理性の壁を何度も破壊し、その度にぱくりと食べられているヘンリーはそのことが義母にばれないようにと願いつつ、反省する。
 もううかつなことしない、と心に誓うもいつも食べられた後何が原因かに気が付くため、感謝祭に行く七面鳥にならないようにしなければ、ということに留まる。こんな状況だからマルフォイにもばれるんだ、と反省し闇払い時代鍛えた閉心術をもう一度練習しなければ、と小さくため息を吐いた。

「ねぇハリエットってスネイプ先生のこと好きなの?」
 はー、と息を吐いていたヘンリーはハーマイオニーからのド直球な言葉に思わず固まる。マクゴナガルもまた固まって、じっと娘を見つめた。
「そこの……ベッドフレームに置いてある廊下の写真。あれって前にコリン=クリービーだったかしら?グリフィンドールの一年生がスネイプ先生を盗撮してものすごく怒られたって聞いたけど……」
 それじゃないの?というハーマイオニーにヘンリーは隠し忘れていたことに気が付き、慌ててフォトスタンドを手に取って引き出しにしまう。
 前にマクゴナガルにやけに上機嫌なことと、スネイプの盗撮事件で何か関連があるのか、と問い詰めてきたのを何とかかわしたヘンリーだが、今は義母の顔が怖くて振り向けない。もう何度写真の中のスネイプに気を使わせてしまったかわからないハリエットはちょっと顔冷やさないとだめかもしれない、と杖を振って顔に風を当てる。
 そんな後姿を見るマクゴナガルとハーマイオニーは顔を見合わせてくすくすと笑いあった。






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