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27:深まる謎

 ヘンリーが襲われ、石化したことは全生徒に衝撃を与えた。特に落ち込み方がひどいのは初めて犠牲者が出たスリザリンだ。彼は半純血の家系だったにも関わらず襲われた。
 それが酷いショックで、誰もが重く沈み込んでいた。

 ヘンリーの魔法薬がどれを飲んでいたのかと、彼の解毒剤の本に何かヒントはないのか。そう考えてスネイプは鍵のかかったヘンリーの部屋に寮監の権限を使って鍵を開け入る。
 机に置かれているのはやはり魔法薬を生成するための鍋やらなにやらの一式だ。あの解毒薬の本も置かれていて、バジリスクの毒が次の巻であるということが丸で囲ってあった。
 やはり彼女はあの蛇の毒に誰かが襲われることを知っていたのだ。まさかそれが自分だとは思っていなかったのだろう。
 気づいてやれなかったことが悔しく、何か他にないかと視線を巡らせる。机の端に日記がぽつんと置かれていて、思わず手を伸ばしそうになってすぐに引っ込める。
 日記には封じるための魔法がかかっていた。それに、いくらなんでも女性の日記を勝手に見るわけにはいかない。
 戸棚には瓶が雑然と鎮座しており、走り書きで数字だけが書かれている。

「10時間物のか……あるいは2時間物か。」
 一度に精製できる瓶数から逆算して、減っているものから推測する。それにしても、とスネイプは部屋を見回した。
 壁にはニンバス2000が立てかけられており、やはり彼女もクィディッチの才能があるのか、と片割れを思い浮かべる。そろそろ部屋を出ようとしたところで、枕元の廊下を写したフォトスタンドを見つけた。
 いったい何の写真だ、とよく見れば画面の隅に黒い服が少しはみ出している。
 ふと、最初に石化した生徒が以前無謀にも人のことを隠し撮りしていたがまさかあれは……。そう考えて思わず片手で顔を覆う。

「人の盗撮依頼など……本当に悪いことばかり考える……。覚悟しておきたまえヘンリー」
 毎日、毎晩。ここで彼女の素顔を見ていられる自分の写真に少し嫉妬して、スネイプは部屋をあとにした。


 ハーマイオニーのヒントからバジリスクに行き当たり、そのことを伝えようと職員室に向かったハリー達だったが、そこでホグワーツの閉鎖の危機と、ジニーの誘拐を知った。
 思わず座り込みそうになるロンを励まし、秘密の部屋に乗り込もうと二人は決意した。
 ロックハートの所に行けば彼は逃げようとしており、そこで彼の本は彼が行った偉業ではなく、他人の偉業を自分のものとして記憶ごと立場を奪った。
 それが真相である、ということを知って二人は驚き……そして失望していざという時の大人として秘密の部屋へと連れて行った。
 ヘンリーがいたのならば順調に事が進んでいると満足できるほどに、その流れは変わらず秘密の部屋の所で分断されたハリーは一人、奥へ奥へと歩みを進めた。
 倒れているジニーと、そこに立たずむ好青年……トム=リドルに気が付きハリーは杖を構える。ハグリッドを落とし込み、退学させた……。そう思うと許せない。

「君が一人の時にでも始末しようと思ったというのに襲えたのは別の奴。ここまで使えない小娘だなんてね。まぁそれで俄然、君に興味がわいたわけだけども」
 冗談じゃない、と言うリドルにハリーは目を見開いた。自分を襲うはずのバジリスクはどういうわけかヘンリーに襲い掛かったと、そう妙な確信がある。
 母によく似たヘンリー。そしてあの日逃げた片割れ。一致しない事実に混乱し、ハリーは雑念を振り払うように首を振った。
 現れた大蛇に驚くと援軍としてダンブルドアの鳥……不死鳥のフォークスと組み分け帽子が飛んできた。あざ笑うリドルをしり目に、フォークスが大蛇をけん制している間に、組み分け帽子に助けを求めたハリーはその中から眩い剣を取り出した。

 ハリーがバジリスクを倒したことと、ジニーを救ったことは瞬く間に学校に広がり、石化した人々も一人を残して戻っていく。
 ヘンリーは襲われた時、足に毒を受けたとマクゴナガルに聞いて、ハリーは胸が苦しくなる。
 なぜかわからないが、彼の石化解除は解毒剤が出来上がってからと、そう言われて一人残されたヘンリーのことを思うと何とも言えない気持ちになっていた。
 マクゴナガルが心配そうにしていることなどが関係しているのかもしれないが、なんとなく、ハリエットが逃げた後のこともあり彼女を守ろうとして巻き込まれたのではないか、そんな気もする。

 学校に戻ってきたダンブルドアはハリエットのことを聞き、解毒剤を作っているスネイプを思う。ハリエットは転生するほど強い後悔などを抱いていたからこそ、ここにいる。
 そしてそれはハリーの代わりに死の呪文を唱えてでも関わろうとするほどに強い何かだ。無茶したり、自分を責めたりする前にそれを止める腕となるよう、そっと願う。それと、と止まり木で眠るフォークスを見つめた。
 ハリエットとフォークスはずいぶん昔に出会っている。そしてその時フォークスは彼女をじっと見つめ、受け入れていた。
 ハリーの杖のこともあり、この双子はフォークスに縁があるようじゃ、とハリーを助けた不死鳥の背を軽くなでる。この先、フォークスの運命が彼らに絡んでいく姿が思い浮ぶような気がして、そっと目を伏せた。


 
 





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