砕けたパズル
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記憶のハリーは気を落とすハリーをチームメイトが励ましているところだった。
そして最後に部屋を出たハリーを誰かが襲い、気絶する。
目が覚めたハリーは裸にされていることに驚き、あのレイブンクローの生徒と他の生徒に何をするのだと問いかけた。
例の無様に落ちた選手であり、校内で最初に話を聞いた彼は恥ずかしい写真を撮ってやると杖を振るってハリーの細い足を無理矢理開かせた。
「こいつは噂通りかよ。年上の彼氏がいるって奴はよぉ。」
「なぁこいつ、写真だけじゃなくて遊ばせてもらおうぜ。どうせ使ってんだから慣れてんだろ。」
あざ笑う彼らの視線の先には木曜の夜つけた、赤い所有印のような痕。
シャワーを浴びても気づかれにくく、首筋に残せない分つけたささやかな印。
記憶のハリーは顔を赤らめてみないでと懇願する。
にやにやと笑みを深くした生徒にこれから起きることを察したのか身をできる限り必死に捩る。
やだやだと繰り返し、うっすら涙を浮かべて怯えた顔は彼らの嗜虐心を駆り立ててしまった。
ハリーの体はまだ若い。
心で拒否しても、体は快楽を求めてしまう。それは仕方のないことだ。
それにつけ込む形で自分の色に染めたスネイプはそれをよくわかっていた。
だがハリーはそんなこと知らない。
自分に触れられるから、想いを寄せる人が触れるからと、そう思っていたに違いない。
だから、彼らの容赦ない愛撫に反応してしまっても、それは仕方がないと快楽を教えたスネイプには…わかっていた。
『先生!先生!!嫌だ…助けて…嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌。なんで反応するの…嫌なのに…やだやだやだやだ。先生…ごめんなさい…。』
不意に聞こえた記憶のハリーの心の声。
ハリーの記憶だからこそ聞こえる声に、振り払った時の絶望の顔を思い出す。
わかっていれば…あんなことはしなかった。
無理やり開かれ、生徒の怒張を突き入れられて…達してしまったハリーは熱でふやけた目から止まることなく涙をこぼしていた。
なぜこんな奴らのものを奥で感じ、彼にとって幸せの合図だった射精をしてしまったのか、その事実に困惑し呆然としていた。
生徒が入れ替わり、自分勝手に突き上げる。
されるがままのハリーは心の声でずっと、スネイプに助けと謝罪を繰り返していた。
情事が終わり、投げ出されたハリーの手に硬貨が握らされる。
パシャっとシャッターが落とされる音が聞こえ、ハリーの細い指がびくりと動く。
茫然自失という風のハリーはなぜ硬貨を握らせてくるのかと、清めの魔法を使う生徒らを見上げた。
「誰かに公言でもしたら写真をばらまくぞ。」
「お前は俺たちから金をもらうために身体を売ったってな。」
にやにやとする彼らは味を占めたのかハリーの全身を舐めるようにみて、カメラを見せた。
カッとなって起き上がろうとするハリーは全身を襲う痛みに小さくうめく。
スネイプに抱かれるときは決して感じない痛みに、別の人間に犯されたという事実を突き出されて…涙が零れ落ちる。
「おっと、これは写真用でお前なんか2,3クヌートでいいだろ。」
そう言ってハリーの手からシックルを奪い取るとまたな、と立ち去って行った。
「またな…?」
青ざめたハリーは震える自分の体を抱きしめて…手の硬貨を思い出して…なぜか止まった涙の代わりに、乾いた目から見えない涙を心の内側へと流し込んだ。
ばん、と机をたたくスネイプは元の部屋に戻ったことにも気が付かないほど、一つの塊となったパズルをにらむように見下ろしていた。
怒りと悲しみと…それらが渦巻くスネイプは崩れるように椅子に腰を下ろし、両手で顔を覆う。
なぜもっと早くに気が付かなかった。
ハリーはずっと…一人で抱えてしまっていたというのに。
ハリーを想う、最前列にいたというのに。
ガタンという音が聞こえて、スネイプは作業部屋を出てハリーのいる2階の寝室へと向かった。
起き上がったハリーは両手を…手袋を抱えるようにしてあたりを見回していた。
入ってきたスネイプに驚き、振り向いたハリーはサイドテーブルに置かれた眼鏡をしていないせいか、誰か見えないようでくすんだ緑の目をスネイプに向ける。
「あの…ここは…。貴方は…誰ですか?」
怯えたような弱弱しい声で問いかける言葉に、予測していたはずのスネイプは耐えきれないというように一瞬胸を抑えた。
危惧していた通り、彼は…抜け殻だった。
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