砕けたパズル

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 捜査は危惧していた通り難航していた。
グリンゴッツに最近両替に一人で来た未成年はいないこと、漏れ鍋などにもそんな宿泊客はいないこと…。
捜査の範囲は他の教職員とともに徐々に広がっていた。
それでも、足取りさえ追えない。
これが誘拐やらそのほかの犯罪に巻き込まれてであれば必ず痕跡はあるはず。

 魔法省に頼むのも、どこで聞いているかわからない記者などにばれるわけにもいかずいまだ告げてはいない。
 ちらちらと降る雪に嫌な予感がするスネイプは寮監の仕事を最低限こなしつつ、レイブンクローの生徒が吐いた許せない真実に怒りで我を失いそうになるのを必死にこらえる。


 ハリーを貶めるようなことを一気にしゃべる彼に無理矢理真実薬を飲ませ…彼が怯えながら吐いたのは…最初に襲ったのはあの試合の直後で…その際、無理やり2クヌートを握らせたこと。
 そして写真をネタに呼び出しては、2クヌートから出しても1シックルで体を暴いていたこと。
「あいつに年上で同性の恋人がいるっていう噂があったから、この写真をその彼氏に見せようか、それとも彼のことをみんなにばらそうかって、そういうと泣きながら抵抗しなくなって都合がよかった。あいつの彼なんて知らない。だけどそういうと大人しくなるから使っていました。」
 薬のせいもありぺらぺらと話す生徒に殺意でカッとなって目の前が赤く染まるスネイプはばしゃりと容赦なくマクゴナガルにかけられた冷水に踏みとどまった。
 予測して水を用意していたマクゴナガルに苦笑するスネイプは知っている情報を全部吐き出すだけ吐き出させるとその生徒に失神の呪文を唱えてハリーの捜索について相談した。
 どれだけ持っていたか定かではないが、もち金は少ないはず。
幸い、今年の雪は少なくもうすぐ年が変わるというのに地肌が見えているところもある。
ロンドンでも今年は少ないと聞いている。
どんな形であれ、無事でいることを祈るしかない。

 狭いようで意外と闇が深く広い魔法界は人を探すにさえ骨が折れる。
どこかこんなところにいるはずがない、という声を内で聞きながら頼むから魔法界にいてくれと願う気持ちもあり、スネイプはノクターン横丁を歩いていた。


 無駄足が続き、捜索4日目。
スネイプは踵を返してロンドンへと出て行った。
あのこわばった体への違和感も、あの二人とすれ違った時のざわめきも…全部無視してきた結果がいまだ。
 魔法使いらしくない、直感だけを頼りにマグルの多い街を行く。
雪は少しずつ例年の様を思い出すかのように増えてきた。
マグルの服装で身を固めたスネイプはまるで暗闇を歩いているかのようにただ光を探すようにさまよい続けた。
 本当に一瞬だけ光が見えた気がして足を速めるも、その光は不意に消えてしまう。

 何度も何度も繰り返すうちに…ぐしゃぐしゃになったあの緑色の袋を見つけた。

 中身のない袋を手に取り、それが何日も前に打ち捨てられたのだろうと判断して…そこを中心に捜査範囲を拡大していく。
 マグル界のことはマグル出身の教員以外探すことができず、ほとんどスネイプ一人で探していた。
こんな裏路地など、探しているのはスネイプだけかもしれない。
 マグル界を探すとダンブルドアに宣言した際、彼に言われた言葉が焦りでどうにかしてしまいそうな心をなだめ、正気を保っていた。
「あの子を見つけられるのは…もしかしたらセブルス、おぬしだけかもしれない。ハリーがどういう心理状況であれ、最後に助けを求めるのはおそらく、おぬしだけじゃろう。そんな彼を想う、セブルスの心がきっと引き合わせてくれるはずじゃ。」
 魔法使いらしからぬ、マグルの迷信。
それでも、その言葉にいくばくか勇気づけられこうして探している。






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