砕けたパズル

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 土日の休日会うことができなかったハリーを見たのは朝の大広間だ。
酷く落ち込んだ様子のハリーに何があったか気になったが、その原因はマクゴナガルとフリットウィックの会話ですぐに分かった。
 土曜日の試合でブラッジャーをよけた後、ハリーに向かって投げつけられたブラッジャーはレイブンクローの選手へと当たった。
 その選手は不意を突かれたこともありバランスを崩して砂地へと落下した。
また無様に落ちたらしく、それを観客が嗤ったのだという。
おまけにハリーがスニッチを見つけたのが相手シーカーのそばで、気が付いた選手と激しくぶつかり合いながらもハリーがスニッチを握ったという。ハリーも相手シーカーもぶつかり合ったせいで少しけがをしていたとか。
 試合後、ブラッジャーを受けた選手と、シーカーを中心にグリフィンドールの選手と小競り合いが起きたという。
 まったくの八つ当たりだが、それでもハリーは気にしてしまったのだろう。
 励ます親友二人に小さく微笑み、ようやく明るさが戻る。

 遠目だからか、どこか違和感がある笑みだったが、気にしても仕方ないだろうと本日の授業を頭に浮かべる。
罰則として呼び出そうか、それともどこかで待ち伏せるか。
 早くこの腕の中にあの子を抱きしめたくて仕方がない。
淫らに花咲いた潤んだ瞳も、恥ずかし気に、はにかむ様に隣で座り伏目がちに見上げてくるあどけない瞳もどちらも近くで見つめたい。

 だが、どこか心あらずといった様子で授業を受ける姿に問題が起きる前に声をかけるべきだな、と目の前に立つ。
そのことにさえ気が付いていない様子で、顔を青くしたウィーズリーと、ちらりとこちらを見上げるグレンジャーにも目もくれず、ぼんやりと手に取ったカレンデュラの花が手から零れ落ちるように鍋に向かって落ちていく。
「英雄殿は話を聞いていなかったらしい。カレンデュラの花を粉末状にしたものを、と説明したはずだが?」
 杖で水面ぎりぎりで浮かせるとそれをはっとした様子のハリーの手に戻す。
「グリフィンドールから5点減点。先ほどから心あらずといった様子で授業を受ける気はないようだ。適当に調合した結果面倒を増やされてはたまらない。夕刻に罰則を与える。全授業が終わり次第ここに来るように。鍋を洗い授業終了まで教室の隅に立っているように。」
 魔法薬のなりそこないを杖で消し去り、命じるとスリザリンからくすくすと笑う声が聞こえ、ハリーは顔を赤らめる。
 いったいなにがあったのか。
「すみませんでした。」
 うつむくハリーは大人しく鍋を持ち席を立つ。
従順な様子のハリーにドラコ達もまた怪しむが他のものは作業を続けるように、と促せばすぐに静まる。
視線を感じて顔を上げればハリーと目があい、慌てて鍋を洗う作業へと戻る。
 調合が終わり、提出次第順次退出するようにと命じ、ハリーの姿を探す。
ハリーはじっとこちらを見つめていたが、気が付かないふりでやり過ごす。

 教室を出ていく生徒に紛れ、ハリーはいつの間にか退出していた。
 最後までぐずぐずとしていたロングボトムに嫌味を言い、退出を命じると全授業が終わるまでの長い時間、ハリーのあの弱弱しい瞳を思い出していた。
 何か相談事でもあるのか、不安なことでもあるのか…。
いや、試合での厄介ごとだろう。

 全授業が終わり、ハリーを待つと小さな足音が聞こえ、戸をノックする軽い音が部屋へと響く。
戸を開け、中へと通すと杖をふるい施錠する。
施錠とほぼ同時にハリーを腕に抱きこんだ。
ハリーの額に口づけ、痩躯を確かめるように抱き寄せる。
一瞬、彼の体がこわばったように感じられ、眉を寄せた。
「土曜の試合で何やら厄介ごとに巻き込まれたと聞いたが…。いつまでもきにするとは、傲慢なポッター殿は自意識過剰であらせられる。」
「そっそんなわけじゃないです…。えっと…ごめんなさい。」
 うな垂れるハリーを抱きしめ、首筋に痕を残さない口づけを落とす。
ピクンと肩を震わせるハリーがかわいくて、抱きしめた手を下ろし、丸くほどよい弾力のある双丘を揉み上げる。
 それだけでハリーは体を預け、抱き寄せた首筋に熱い溜息をこぼした。
「あのスポーツに怪我は付き物だ。ハリーも怪我をしたと聞いたが、ちゃんと薬は塗ったかね?」
「うっうん…ぁ、そこ…揉まな…ぁん。も、う治ったぁっ」
 静かな言葉とは裏腹に捏ねる様に揉み、時折蕾を刺激する。
蕾をかすめるたびに震えるハリーを愛しげに見つめ、細く小柄な体を抱き上げるとソファへと横たえそのまま覆いかぶさった。
先生と甘く啼くハリーに口づけ、早急に暴いていく。
自分だけに許された、白い肌を見下ろし、赤く染め上げる所業。

 準備段階も、突き入れた後も、快感のしぶきを上げ歓喜の嬌声をあげるハリー。
いまはただ、この恋人におぼれていたい、そう考えてこれ以上ない最奥に快楽のしぶきを注ぎ入れた。

 この歳になって恋人を前にしてなぜ焦るように、我慢できずにかき抱くのか、我ながらどうかしているな、とくったりと眠りについたハリーの髪をかぎあげる。
 ハリーはとても活動的で、明るく時折自信にあふれて輝いている。
ずっと日陰で光に嫉妬しながらも焦がれてみているだけであった自分とはまるで生きる世界が違う。
だからだろうか、彼がこの陰に入ってきたとき少しでも手を離せば離れてしまうのではないか、そう不安になってしまうのかもしれない。
 薄く開いた口に回復薬を含ませる。あと少し眠らせたら起こして寮へと送り出さなくてはならない。
 少し寂しく思いつつ、ハリーを抱き起した。
 ふと、視線を下ろせばまだ眠っているハリーの手が縋るように着たままのローブの端を握りしめていることに気が付いた。
 違和感に眉を寄せたところで抱き起されたハリーの目が緩く開き、その手もまた離される。
「ちゃんと罰則を与えるつもりではあったのだが、あまりにも可愛い反応をするからつい甘い罰になってしまったではないか。」
 音を立てて口づけ、まだ外ではほかの生徒らが活動している時間にもかかわらず抱いてしまったことが少し後ろめたく、ついハリーの甘い蜜を咎める。

 はっと目を覚ましたハリーはどこか顔をこわばらせたように見え、ハリー?と声をかける。
「せっ先生がそうさせたんでしょ。」
 顔を赤らめ、ハリーの目がそっぽを向く。
「珍しく正解だミスターポッター。一度君の甘さを知ったならばまた吸いたいと思うのは当然ではないかね。」
 照れ隠しか、と額に口づけ、柔らかな唇を堪能するように深く口づける。






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