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薬の続きは明日まで冷まさなければならないと、寝室に向かうスネイプは重大なことを思い出し、足を止めた。
(何をためらっておるのだ!昨夜のように寝てしまえばいい!そうだ。今度はポッターのほうを見なければいい!)
連日何回自分を叱咤したのだろうと、疲れるスネイプはハリーに背を向けて横たわる。
自分が横に来たことに気が付いたのか、すこし近づくハリーにスネイプは何だと身構えた。
「スネイプ…。」
つぶやいた言葉に寝言かと考えるが確かめるには振り向いてハリーが眠っていることを確認しなければならない。
「…すぅ…。」
(やはり寝言か…大方昼間のことでまだ謝っているのか。大体、見失ったのが原因であり謝るのは…。)
違うだろうと苦笑とともにため息が出るスネイプははっと自分の考えを思い返して表情を硬くした。
(なぜ我輩がポッターをかばうようなことを考えておるのだ!正気に戻るのだセブルス=スネイプ!!)
安眠用に何か魔法薬をと考えるスネイプは足に何か細いものが巻き付いてることに気が付き、手探りでそれをつかむ。
「ん…あぁ」
鼻にかかったような声が背後で聞こえ思わず尻尾から手を放す。
尻尾は引っ張られたことを抗議するかのようにぺちぺちとスネイプの手をたたき、また巻き付こうとする。
根元から抑えなければと、後ろを向いたまま手に触れたシーツをまくり、多分この辺のはずとすべすべとした布を上がり…ん?と手の感覚に意識を集中した。
布じゃない、と手に触れた尻尾の根元に何に触れているのか気が付いたスネイプははっと振り向いた。
最初にめくったのはシーツではなくハリーに着せていたローブ。
そして、自分の手が触れているのは白く丸い柔らかな尻…。
(やっやわらかい…。ではなく、手を離すのだ!ポッターのだぞ!)
この二日間で何度叫んだことか…スネイプは軽く握ったままの手を放そうと動揺していた。
このままでは自分の中の何かが《理性という言葉を忘れたらしい》崩れるに違いないと思ったスネイプは手にあたる尻尾をおとなしくさせようと、手を放して振り向く。
手を放した時点で離れればいいものを、振り向いたスネイプは抱きかかえるような格好で尻尾を強めに引っ張った。
びくんと体を跳ね上げるハリーに尻尾をおとなしくさせようとしただけで、ハリーの顔が赤らむのを見たかったわけではないと、動揺する。
「やっ…ぁ…ん。」
(頼むから…その声を出すなすり寄るな!)
つかんだ尻尾をそのままに焦るスネイプは根元近くを握ってもう一度引っ張る。
「んっぁあ」
ビクンともう一度震えるハリーにぞくりと高揚感を覚えるスネイプは眠ったまま顔を赤らめるハリーをじっと見つめる。
悩ましい声を漏れ出す唇から目をそらすことができない。
はっとするスネイプはもう一度あの柔らかな感触を味わいたいと思ったわけではと誰かに言い訳をする。
(なっ何を考えておるのだ!ただ、あのような声を出すならば塞いでしまおうとしただけで…)
尻尾からようやく手を離すスネイプは先ほど離れればよかったと今更になって思いつく。
だが今はもうスネイプのシャツに縋りつくハリーから離れることができない。
「スネイプ…先生。」
ハリーの呟くような言葉になにかやましいことが見つかった時のように挙動不審になるスネイプはハリーを見つめる。
「…好き?…す……して?」
ぶつぶつと言葉にもなっていない声を出すハリーの、途切れ途切れに聞こえた言葉にスネイプの何かが派手に音を立てて崩れていく。
スネイプの脳内で勝手にその言葉が紡がれ、脳内にハリーの声で再生される。
「先生・・・僕のこと好き?好きなら・・・キスして?」
どこでどうつないだのか、そう解釈したスネイプはそっとハリーを仰向けにして覆いかぶさる。
ぐっすり眠っていることを確認するとそっと口づける。小さな唇に何度もついばむようなキスをすると、うすく開いた唇にこれ以上は目が覚めるかもしれないと、口元から白い喉元に唇を移し首輪の近くに吸い付いた。
(どうせ猫になっている間は気が付かないだろう…。)
はだけたローブから覗く白い肌にどうにか最後のかけらを手放すことはなく、赤い痕を残すだけにとどまる。
もう一度口づけをして、と顔を近づけるスネイプはハリーの鼻にかかったような甘い溜息にはっとなって寝室を後にした。
先生の理性崩壊まであとわずか!
(薬完成まであと12日!!)
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