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(冗談じゃないよ!急いで爪立てたら全然違う人で手で払われて…。慌てて逃げたらスネイプを見失って…。)
 ハリーは物陰で途方に暮れていた。目の前には大勢の足足…。
それに…とハリーは耳としっぽを下げた。
こんな状況でスネイプを探しに行く事も出来やしない、とため息をついた。
「最悪だぁ…。」
 どういう条件で人型になるかわからないけど、猫に戻ったし大丈夫だろうと考えていたのが災いした。
 スネイプに裸を見られたことも最悪だと思っていたのに、物事にはさらに悪いことが重なるものだと今更実感するのだった。
 動くたびに喉元についた鈴が鳴ってはぁとため息がでる。
 じっと座っているわけにもいかないというか、素肌に触れる石畳がこんなに痛いだなんておもいもしなかった、と普段考えないことでもため息が漏れる。
 
 とにかく…と思ったところで杖はない。
 一応探してはくれているだろうが、見つかるのが先か、猫に戻るのが先か。
「こんなところ誰かに見られでもしたら…。人生最大の汚点だよ…。スネイプ…早く見つけてくれないかな…。」
 時として、今が最悪言うときがあるが人生、さらに悪い方向へと転がっていく事もあるのだ。
 
 
「おや、坊主。こんなところでそんな姿して…なにをしているんだい?」
 突然耳元で声をかけられ、ハリーは驚いて振り向く。
 見知らぬ男の後ろの通りがノクターン横丁だったのかといまさらになって気が付き、ハリーは最悪の最悪だ、と小さくつぶやいた。
「あの…連れを見失っちゃって…。」
 どうして気が付かなかったんだろうと思うほど近くにいる男を見上げるハリーは、見なくてもしっぽが驚きで縮こまっているのを自覚する。
「服はどうしたんだ?」
「えっと…まっ魔法で猫にされてて…急に戻って…。」
 じっと目をそらさずハリーの体に視線を落とす男に嫌な感じを受け、ハリーは警戒しながら事情を話す。
「そうか…それで…こんな耳と尻尾があるわけだな。」
 男はハリーの猫耳に手を伸ばすと揉むようになでる。
 驚いたハリーは手を振りほどこうとして、ぐっと尻尾をつかまれたことに息を飲み込んだ。
 尻尾を引っ張られ、根元に手を伸ばされると妙な脱力感に見舞われ、突っぱねようとした手を捕まえられる。
「やめ‥‥。」
 ピクピクと手足が震え、感じたことのない未知の感覚にとらわれえて動くことができない。
「こんなところにいると危険だよ。さぁこっちにおいで。」
 ハリーはそのままやすやすと抱きかかえられ、路地のさらに奥へと連れていかれる。
嫌だと荒い息の中で必死に伝えるハリーを無視する男は、ハリーが震えれば震えるほど鼻息を荒くしてこの辺でいいかと、木箱にハリーをのせた。
 
「ロコモータ モルティス。」
 
 尻尾の付け根をつかんだままの男に誰かの呪文が唱えられ、そのまま倒れるとその後ろに杖を構えたスネイプがたっていた。
 眼鏡がないハリーには普段見えないはずの距離だが、なぜだかスネイプだと確信したハリーはほっとして思わず涙腺が緩む。
 ばさりと頭からマントがかけられ、そのまま抱きかかえられるとスネイプはダイアゴン横丁には戻らず、そのまま路地を進んでいった。
「まったく貴様は…。自分がどういう状況に置かれていたのか分かっているのかね?」
 どこか怒気を含んだ声にハリーの耳と尻尾はうな垂れる。
 いまさらになって恐怖を思い出すハリーはすみません、と小さな声で謝る。
 耳と尻尾からハリーの心情を察したスネイプははぁとため息をついてどこかの暖炉からホグワーツへと戻った。
 購入した材料を分けて片付けるスネイプはハリーを浴室でシャワーを浴びるようにと言ったっきり何も言わず、一瞥すらもしない。
 用意されていた大きなローブを着たハリーは居心地の悪さに気まずさを覚える。
「あっあの…スネイプ先生。」
 大切なことを忘れていたと、思い出すハリーの呼びかけに製薬中のスネイプが何かねと振り向く。
「助けてもらい、ありがとうございました。」
 言いそびれていたお礼をするハリーに、スネイプは昼間の光景を思い出して鍋をかき混ぜる手に力が入る。
「そのことならば部屋に閉じ込めていかなかった我輩にも非はある。大事になる前に見つかってよかった。」
 寝室に閉じ込めておけばよかった、とそう考えたところで猫耳ハリーと昼間の光景と寝室と…イメージが合わさり、そういうことではないと自身に叱咤して考えを振り払う。
 ハリーはハリーでスネイプが非を認めたことと、なにより見つかってよかったという言葉が聞けるとは思っておらず、耳を疑っていた。
 そういえば助けに来てくれた時スネイプは走って探してくれたのか少し息がきれていたと思い出し、なぜか顔が赤らむのを自覚する。




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