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「・・・ター・・・ポッ・・・いか・げ・・お・・・ポッター!!!」
 突然の怒鳴り声に、ハリーはびっくりして目を覚ます。
立ち上がった尻尾が驚きで膨らんでいる姿にスネイプはため息をつくと小さく頭を振った。
「やっと起きたのかね。今日は薬の材料を買いにいく。早く朝食をとりたまえ。」
「あれ…?なんでスネイプがここに?ここどこ?」
 きょろきょろとするハリーは寝ぼけているのか、ここがどこなのかわかっていないらしく、スネイプを呼び捨てにしたことも気が付いていない。
「何を寝ぼけておる。さっさとしろ!!」
「っ!」
 再び響く怒声に完全に覚醒したハリーは、慌ててベッドから飛び降り…毛布に足を取られ、上半身だけ床へと落ちる。
 騒がしい、と頭を振るスネイプは早くしたまえ、と声をかけようとして言葉が喉の奥に戻っていく。
 
 めくれ上がったシャツから見える白い肌。細い腰。黒い尻尾が生えた丸くて掴みやすそうな…。
違う!と思わずドアの縁に拳を立て痛みで正気を保つ。
その音に苛立ったスネイプが立てた音だと感じたハリーはがばりと起き上がろうとしてそのまま床に転がり落ちた。
 ぷるぷると顔を振って起き上がったのは小さな子猫。
「み〜〜〜!“なんでー!”」
 シャツから抜け出したハリーは自分は再び猫になっていることに気が付き、耳としっぽがぺたりと垂れ下がる。
 スネイプのテンションもさがり…。
 昨晩みた猫耳ハリーと、先ほどの猫耳ハリーが頭をよぎりかけ違う、とスネイプは頭を振って猫をつまみ上げた。
 大人しく捕まるハリーは机に下ろされると前に置かれたミルクを飲む。
 たんにお腹がすいたのと、子猫になっているからか、固形よりもミルクが飲みたいとそう思っての行動だが、その猫の姿にこの姿だとどこまで猫なのだろうか、とスネイプの頭を悩ませた。
 猫耳ハリーも同様に猫っぽいのかとじゃれつく姿を想像し…スネイプは3倍ほど濃いコーヒーのブラックを一気にあおる。
 早く何としてでも早く薬をつくらなければ奥底にしまい込んだ何かが出てきそうな気がして嫌な汗が背を伝う…そんな気分だ。
 
 
 ミルクを飲んで少しうとうととするハリーは持ち上げられたことに驚いて身をよじり、机に落ちる。
「薬の材料を買いにダイアゴン横町にいくのだ。本来ならば部屋に置いていくことも考えたのだが…。そこらを走って瓶を倒すことも考え…いやあるだろう。それと、マクゴナガル先生に預けることも考えたが…そこでヒト型に戻ることも考えられる。あの姿を誰かに見られてもいいのというのならば置いていくが…。」
 どうする?と言われてハリーは顔をひきつらせた。
 スネイプと出かけるのもいやだが、うっかりどっかにぶつかって変な魔法薬を被って一生このままになってしまうのもいやだ。
 マクゴナガル先生のところでうっかり元に戻って…そこにレポートを出しに来た人が来て鉢合わせでもしたら…。
 ぐぬぬ、と悩むハリーはせめての抵抗にと、スネイプの肩へと飛び乗った。
「元に戻った時が楽しみだなポッター。」
 びくりと震えるハリーをローブに入れると煙突飛行を使う。
 
 何も予告なくローブに入れられ、煙突飛行を使うスネイプに怒るよりも前に驚きで固まるハリーだが、首に何か重りがかかったことでスネイプを見返す。
「好奇心旺盛な猫には紐ぐらい必要だろう。絶対に我輩の肩からは降りるな。どこかで人の姿に戻られては困る。」
 スネイプの言葉にハリーは爪を立てるが、分厚いローブに阻まれ全然刺さっている感じはしない。
 悔しいハリーだが、動き出したスネイプに驚いてじっと身を固くする。  
 なんとか欲しい材料を手に入れ、そろそろ帰ろうとスネイプはあくびをするハリーを横目でにらむように見る。
 普段肩に物を載せていない分、なんだか肩がこったスネイプは戻るぞと店を出た。
「本日は簡単楽々お掃除魔法グッズの特売日だよ!!!早くしないと店の在庫全部なくなってしばらくは買い物ができないかもよ!!!」
 そんな掛け声がちょうど店を出た二人の真横で聞こえた。
 振り返れば楽々魔女の水垢落としとか、お掃除楽々塵ホイホイとか…。
 嫌な予感がするスネイプは足早に立ち去ろうとして…道を見ると道の向こうからドドドドと地響きがしそうな勢いで魔女のおば様達が向かってくるところであった。
 
 なんとか切り抜けるスネイプはふと肩の重みがないことに目を見開いた。
「ポッター?」
 魔法でつないだ紐はあの勢いでちぎれてしまったのか、消えている。
 当然その先にいるはずの猫の姿もない。
 慌てて通りを見るが水牛の行列さながらの光景に足元を探す余裕はない。
 路地周辺にいることを願って周辺を探し始めた。




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