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「いたたた…。あ!!元に戻ってる!?」
 眼鏡がないため、ぼんやりとした視界の中手が人の形になったことに喜ぶハリーだが、お尻に感じる違和感にん?とお尻に手を置いて尻尾が生えていることに何これ、と顔を青ざめる。
 しかも、と服を着ていないことにこんな姿をスネイプに見られたら!とあたりを見回す。
 チリンと小さな音が聞こえて喉元に手を置けば子猫の時からついている鈴のついた首輪が手に触れ、最悪だ、とハリーはため息をついた。
「こんなところスネイプに見つかりでもしたら…。」
「ポッター。」
 どうしようと混乱するハリーに静かな声と何か黒いものが降りかかる。
 真っ赤になるハリーはかぶせられたローブを羽織ると、先に部屋の外に出たスネイプの後を追う。
 
 スネイプがきればぴったりな裾丈もハリーには大きく、少し引き摺ってしまう。
「ありがとうございます…。」
「さっさと来なさい。それとも、その姿で寮に戻るかね?」
 ローブを着る際に頭が引っ掛かったことで耳が猫耳になっていることにさらに顔を赤らめるしかない。
 こんな姿じゃハーマイオニーは笑わないだろうけど、ロンやフレッドたち…その他皆に笑われる姿が容易に想像出来て、それだけは嫌だとスネイプの後ろを歩きながら首を振った。
 
 
「その姿ならば一人でシャワーを浴びれるだろう。」
「あ、はい。」
 さっさとシャワーを浴びて寝るがいい、とタオルを渡されたハリーはもごもごとお礼を言うと猫耳を見られたくなくて足早にシャワー室へと駆けこむ。
 シャワーから出たハリーはスネイプが部屋にいないことに気が付き、おかれたシャツに腕を通す。
 ぶかぶかのナイトシャツはスネイプの私物のようで、裾を気にするが尻尾でめくれてしまい、どうにかならないかと尻尾をつかむ。
 ガチャリと音が聞こえ、文字通り飛びあがるハリーは恐る恐る振り向き、スネイプが戻ってきたことを確認する。
「寝室は奥の扉だ。不本意ながら風邪を引いてしまうとせっかくの効果がなくなってしまうのでな。もっとも、ポッターならば風邪はひかんだろうが念のためだ。」
 尻尾を抑えるハリーをちらりと見るスネイプは軽く咳払いをするとその扉だ、と奥を示す。
 馬鹿は風邪をひかないと言外に言われた気がするハリーはむっとしながらお礼を言うと、寝室へと入って行った。
 
 黒い尻尾が扉の向こうに消え、それを見送ったスネイプは緊張の糸が切れたように肩の力を抜いて椅子に腰を下ろす。
 
 黒髪から覗く三角の耳。
 渡した白いナイトシャツから覗く黒い尻尾。
 というか、シャツから覗く白い足…。
 
 そこまで考えたスネイプははっと頭を振り、違うそうじゃないと誰かに言う。
 我輩の理性よよく持ちこたえたとか、細い腰だとか、顔を赤らめてうつむいた顔がかわいいとか…断じて考えていたわけじゃない!と机に拳を叩きつける。
 
「(まったく…ウィズリーとドラコは厄介なことを…。)」
 とりあえず明日は授業は休みだが朝から買い物に行かなければならない。
 マクゴナガルにハリーを預けようかと考え…いや、今のハリーを預かってもらうには…と考える。
 とにかく寝よう、と立ち上がったところではたと気がつく。
 今寝室にはハリーが寝ている。
 ソファーがあるがなぜハリーをそこに寝かせず部屋の主人である自分がそんなところで寝るのだ、と。
 後ろめたいことは何もない、何もないのだから寝室で寝てもいいだろう、と誰に言うでもなく必死に言い訳をして足を向ける。
 中に入るとハリーが端の方で丸まって寝ており、尻尾がゆらゆらと垂れ下がって揺れていた。
反対側からハリーと向きあうように寝台に入るスネイプはまだどこかあどけないその寝顔を見つめる。

 
 小さく開いた口。
 時折動く耳。シャツから覗く白い肌。
どこか甘いにおい。
 
 はっとなるスネイプは背を向けると何を動揺しているのだ!と頭を抱えた。
 憎たらしい顔で生意気ばかりのポッターの唇が触れたらどんなだろうとか…そんなことは考えていない!
 ちらりと振り向き、眠るハリーと再び向き合う。
 あの白い肌に赤い印をつけたらどんなに栄えるのだろうとかそんなことも考えてない!
 
 
 もう寝ようとため息をついた。
「んっ…。」
 髪から覗く黒い猫耳に息を吹きかけてしまったのか、ピクリと動くとともに悩ましい声が聞こえてスネイプの眠気が吹き飛ぶ。
 人のぬくもりに寄せられたのか、すり寄るハリーによりますます耳が近くなり…。
こうして、スネイプ教授と猫ハリーの初日は眠れぬまま終わるのであった。

のこり13日!



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