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 マルフォイの事はすでに聞いていたらしく、部屋に通すとマクゴナガルの腕に抱えられた子猫を見た。
 どうやら何があったか詳しい話はまだ聞いていないらしい。
「実は先ほど、ミスター・ウィズリーとミスター・マルフォイがお互いに呪いをかけあい、その中心に偶然現れたミスター・ポッターがこの姿となりました。複雑かつ不安定な状態のため無理に戻すことができませんが…たしか異形の姿になったものを直す魔法薬が調合できるかと記憶していたため、お願いに来ました。」
「それでは…その子猫がポッターだということで?」
 マクゴナガルの説明に眉をしかめるスネイプだったが、机に降ろされた眠った子猫を見るなり目を見開いた。
 よく見れば額に傷跡があり、すばやく脳内に工程と材料を思い浮かべるスネイプだが、思い出しただけでも時間がかかることが分かる。
 
「薬の生成には時間がかかりますぞ?」
「仕方がありません。不安定な状態になるので、何かあった際に迅速に対応できるようここに置いていきますが…やむおえない場合や、授業などで問題がある場合は預かるように致しましょう。」
 後で調べ直さなくては思うスネイプにマクゴナガルはお願いします、と念を押すと部屋を出て行ってしまった。
 眠った子猫は机の上で丸くなり、自分がどこに連れてこられたのか知らないまますやすやと寝息を立てる。
 まったく、とため息をつくと材料を調べる。どうにも足りない材料があるのと、一日火からおろして熟成させる工程など…どう見積もっても2週間が最短だ。
 材料は明日買いに行くとして…連れていくか、それともマクゴナガルに渡すべきか。
「あの二人にも困ったものだ…。面倒なことを起こしおって。」
 明日からの精製に備えて他の薬はつくれない。
 仕事もレポートの確認があるが、急いでやる必要もないしこの面倒事で頭が痛くてそれどころではない。
 
 
 眠った子猫は寝返りを打とうとして固い机が痛かったのかぼんやりと目を開ける。
「ようやく目が覚めたかね。」
 頭を振って起き上がる子猫にスネイプが問いかけると、子猫…ハリーは驚いて飛びあがり、はっと顔を上げて緑色の瞳をしばたかせた。
 じりっと下がる子猫にスネイプが手を伸ばすと、さらに下がろうとして机の縁に足を滑らせる。
 ぱっとスネイプが落ちる前につかむと、掴んだまま目線の高さまで持ち上げる。
 じっと睨みつけるような目でスネイプを見ながら身をよじるハリーだが、大きな手で掴まれているせいで逃げることができない。
 振り払おうと手を伸ばすが、どうしても届かず、じっと見つめる。
「諦めるのだな、ポッター。大体なぜここにいるのかわかっているのか?この呪いを解くための薬ができ次第飲ませる為、そのために此処にいるのだ。」
 だから二週間大人しくしているのだな、と自分をにらむ子猫に伝えるとハリーは嫌そうに顔をしかめる。
 
 とりあえずとハリーをバスルームに連れていくとハリーは何?と掴まれたまま辺りを見回す。
「埃をかぶったのか汚れている。」
「にゃ!?にゃ!??みにゃ〜〜!!“え!?何!??はなしてよ!!”」
 だから洗うのだ、というスネイプの言葉にハリーは必死に抗議の声を上げる。
「猫語で話されても我が輩には通じぬぞ。ポッター。自分ひとり…いや、猫一匹でシャワーを浴びるというのかね?」
 意地悪気な声にハリーは逃げようとするが頭からシャワーを浴びせられ、身をすくませる。
 
 シャンプーだったのか、まんべんなく泡立てられ、洗われることにハリーは顔を真っ赤にし(黒猫なので見た目にはわからないが)無我夢中で噛みつく。
 
 「っ!」
 
 スネイプの手が一瞬弱まった隙をつき、走って逃げるハリーは開いたままだった扉を抜け出し滑って転びながら出口へと向かって全力で走る。
「みみゃ〜〜〜〜!!!“あけぇぇぇぇ!!!”」
 目の前に迫るドアに向かって怒鳴りつけるが開くはずもなく…背後の気配と状況にどうにでもなれと目をつぶって扉へと突進した。
「ばっばかもの!!アロホモラ」
 このままでは本気で扉にぶつかる、とスネイプは扉を開けると、ハリーは勢い余って廊下に転がり出てそのまま階段を上っていく。
「ポッター!」
 舌打ちをするスネイプが慌てて後を追うとその足音にハリーは必死に駆けあがって…はたと気がつく。
 全てが巨大サイズで…一瞬どこにいるのかわからず足がすくむ。
 背後からくる足音に慌てて走り出すと普段あまり気にならないような扉を見つけて中へと入り込む。
「ポッター!どこに行った!」
「(そんなこといわれたって…)っ!?」
 下がるハリーは足に何かが当たったのに気が付き、ハッと振り向いたハリーの目に子窓から見える月を背景に倒れてくる箒が見え…。
「ポッター、貴様は城中の人間を起こさないときがすまないのか・・・ね・・・!?」
 何かが倒れる物音にスネイプが扉を開けて…思わず固まる。
 



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