--------------------------------------------

「みに゙ゃ〜〜〜!!!“何これ〜〜!!!”」
 ホグワーツ内に響き渡る悲鳴のような猫の鳴き声。
それは事が起こる10分前まで人だった猫の悲鳴。

さぁ話を戻してみよう。
 
 事が起きる10分前。
「アニメーガスってどんな気分なんだろう。」
 シリウスに手紙を出しにいく途中、ロンはシリウスを思い浮かべ首をかしげる。
「そうねぇ…詳しい事は本には書いてないし…。」
 ハーマイオニーもまた感覚的なことだから本にも書いてないわ、と歩きながら肩をすくめて見せた。
 ハリーは書いた手紙の一部を忘れてしまったらしく、取りに行っていて今いない。
 ふと、前をマルフォイが通り過ぎていくのが見え、ロンはナイスタイミングと目を輝かせた。
 
「ロン、やめなさいよ。また面倒が起るんだから…。」
「大丈夫だって。マルフォイ、白い毛長いたちになった時どんな気分だった?」
 ロンの言葉に角を曲がろうとしていたマルフォイは足を止め、赤みを帯びた顔でにらみつける。
 あの恐怖と恥辱忘れたことはない。
 普段見せない反応にロンはさして気にした風でもなく、さらに問いかける。
「毛長イタチだよ。あーでも君飛びはねていただけか。」
「ウィーズリー、言葉を慎むんだな!そんなに知りたければ自分でなればいい。あぁ、そうか。ウィーズリーなんかが変身したところでドブネズミになるのがせいぜいだな。」
 ロンの言葉に怒りで顔を赤らめるマルフォイは、鼻先で瀬々笑う。
 その態度に今度はロンが怒りで顔を赤くし、マルフォイをにらむ。
 
 「何を偉そうに!泣きべそかいてたくせに!」
「なんだと!?小汚いネズミのくせに…その辺の食べかすでも食べていればいい!」
「ロン、やめなさいってば」
 ハーマイオニーの制止も聞かず、二人は同時に杖を振り上げ、呪いの呪文を唱える。
 
 そこに中庭からロンが見え、走ってきた黒い影が二人の間に割り込んできた。
「ごめん、教科書には挟まってたの忘れ…。」
 突然飛び出したハリーにロンとマルフォイは驚くが、すでに魔法は放たれた後で、ハリーの言葉ごとまぶしい光に包み込む。
 あたりに煙が充満し、誰かが慌てて風を送るとロンとマルフォイの間には誰もない。
 顔を青ざめるロンとマルフォイだが、足元でうごめく黒い塊に目を落とした。
 ぶるぶると頭をふるっているのはローブから顔を出した黒い猫。
「ハッハリー!?」
 ロンが慌ててかがみこむと猫は緑色の目を開き…冒頭に至る。
 
 
 眼鏡が消え、代わりについている赤い首輪の鈴がりんと小さく鳴り、ハリーは慌てて手‥前脚を見た。
 きょろきょろとしっぽまであることを確認したハリーはおろおろとあたりを見回した挙句、ロンの足に縋りつく。
 だが、どうみても子猫がじゃれついているようにしか見えず、目を潤ませている様子も相まってハートに矢が刺さる音がこだまする。
「はっ、ロン!マルフォイ!何の呪いをかけたのよ!」
 みーみーと鳴きながらじゃれつく…すがりつくハリーからハーマイオニーはハッと正気に戻るとロンとマルフォイの頭をはたき、何の呪文よ、と問う。
「ぼっ僕は毛長イタチの呪いを…。」
「僕も毛長イタチの呪いを…。」
 互いにイタチの呪いをかけようとして中間にいたハリーにあたり、どういう作用か猫になってしまったという。
 
「いったい何の騒ぎです。…どこの生徒です?」
 騒ぎを聞きつけてやってきたマクゴナガルは誰かのローブと、ロンにすがりつく子猫の姿に眉を寄せた。
 いきさつを聞いたマクゴナガルは2人に対しそれぞれ50点の減点を言い渡すと猫をもちあげ、ハーマイオニーに荷物を持ってくるようにと言う。
 慌てて荷物を集め、追いかけるハーマイオニーはマクゴナガルの私室へとやってきた。
 
 変身術の観点から確認するマクゴナガルは小さくため息を吐いた。
「困ったことに…マダム・ポンフリーはしばらく外出で今は医務室を使うことができません。おまけに呪いが…未熟な状態の呪い同士のぶつかり合いで別の魔法が掛かってしまったようですね…。無理に直せば何かしらの後遺症が出やすい状態と言うことになります。」
 調べている間に、子猫としての習性か、うとうとと寝てしまったハリーを見ていたマクゴナガルの言葉にハーマイオニーはそんな、と声を上げた。
「この手の呪いは…たとえば一時的に戻ることもあるほど不安定な状態です。それ以外では本当の猫のようにミルクを飲んだり動くものに反応してしまったり…。あぁそうです。一つだけ安全な解決策があります。」
 考え込むマクゴナガルにハーマイオニーは心配げな目で眠ってしまった子猫を見つめる。
 急に声を上げたマクゴナガルにハーマイオニーは目をしばたかせた。

「スネイプ教授がたしか呪いで姿を変えてしまったものを直す薬を調合できたはずです。今回の事は彼の寮生の問題でもありますし…。ミス・グレンジャー、ミスター・ウィズリーには後で罰則があることを伝えてください。私は今からスネイプ教授のもとにミスター・ポッターと共に頼んできます。」
 眠った子猫を抱き上げ、部屋を出るマクゴナガルは付いてきたハーマイオニーにとりあえずハリーの荷物を持って寮に戻り、ロンに罰則がある旨を伝えるよう伝言を頼んだ。
「わかりました。ハリー。きっと治るわ。」
 荷物を抱えるハーマイオニーは子猫の頭をなでると寮へと向かう。
 マクゴナガルはそのまま地下に下りていくと、スネイプの私室を訪ねた。
 



 ≫Next
戻る