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ハーマイオニーからの手紙は分厚く、ハリーは笑いながらスネイプと共にそれを読んでいた。
ハリーがいなくなってからいろいろ大変だったこと、ロンが時折さみしそうにしていること、
ジミーが新しい一歩を踏み出したこと、
マクゴナガル先生が校長になったこと、
ロンが勢い余って告白の言葉をおもいっきり噛んでしまったこと…。
スネイプはため息を吐きながらもハリーの代わりにペンをとる。
自分を軽く抱きしめるスネイプの手に手を重ねると、互いの指輪がコツンと軽い音を立てた。
呪いのせいか、弱っていくハリーの指先は強張ったようにほとんど動かすことができない。
だからと、スネイプが代筆をするが、その字を見てハリーが笑いだす。
「セブルス、採点しているわけじゃないんだから…。」
几帳面な細い字はいつもレポートで見た見慣れた字。
わかってはいたが、ハリーはロンが呻きそうだと楽しげに笑って、睨むスネイプにもたれかかる。
じゃあ続き、とハリーの言葉を文字に直すスネイプはどこか楽しげで、宛名だけ書いてそれをしまう。
この手紙はノワールが運ぶ手紙ではない。この手紙は…。
すっかりガラスの真珠が黒くなると、ハリーはセブルス、と口づけをねだる。
「薔薇、綺麗に咲いたね。」
珍しい新緑の色をした薔薇はかすかな芳香と共に咲き誇る。
「そうだな。」
「セブルス、あのね…。僕の部屋のサイドテーブル。その引き出しの中に後で読んでほしい手紙が入ってるんだ。」
いつの後か…スネイプは頷くだけで聞き返しはしない。
どこか遠くで振り子時計の鐘の音が響き、12時になったことを告げる。
「ハリー。誕生日おめでとう。」
生まれた日に祝いの言葉を伝えるスネイプにハリーは嬉しいな、と頬をすりよせた。
ノワールに事務的な手紙を渡し、その返事が来たのは一昨日。
キングズリー達は必死にハリーの呪いを解く方法を探していた。
それを辞めるようにという手紙の返事はどこか震えていて、彼の苦悩が透けて見えた。
夏だというのにうすら寒いのは森のせいか、それとも別のものか。
スネイプはハリーを抱きしめて冷たい肌をさする。
口づければハリーは嬉しそうに笑って、そしてありがとうと呟いた。
「セブルス、ありがとう。」
そばにいてくれて、というハリーの髪を撫で、スネイプは我輩こそ、と瞼に口づけを落とす。
「我輩のそばにいてくれてありがとうハリー。」
髪を撫でるその手をハリーはわずかに開いた手で包み込み、うん、と頷く。
「ケーキは用意しなかったが…。」
「ケーキよりセブルスがいい。」
あまり甘いものばかり食べてはというスネイプにハリーは笑いながらそれにこの前食べたから、とスネイプの肩に顔をうずめる。
早い誕生日祝いはもう終って、あの日町に出て買った小さな緑色の宝石が入ったペアの指輪の交換も終わって…ハリーはこれ以上ないぐらい嬉しいとハリーの体に負担がないようにお互いの想いを確かめあって…。
もう誕生日本番の日にすることは残っていない。
「セブルス…。」
吐息のような声にスネイプはどうしたのかね、と口づけを落として問いかける。
「愛してる、ハリー。」
「僕も…セブルスの事…あい…して」
る、と吐息と共に呟くハリーにスネイプはただ抱きしめて目をつぶった。
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