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丘の上の人魚~小さな女帝と元帝王
注意:この先は丘の上の人魚のその後のお話です。
オリジナル要素がかなり強いため、苦手な方はお戻りください。
ハリーは相変わらず女体化したままになっています。
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名前を呼ばれた気がして、少女はなにかしらと振り向いた。
青いネクタイがそれを追いかける。
「チャル、あの噂…本当なの?」
あの噂、と聞いてチャルは緑の目をしばたかせた。ほら、闇の魔術の防衛術の…と友人にいわれたことで、あぁと思い出しそうだけど、というと友人は本当に?と目を大きくした。
「だから前にも言ったじゃない。ファミリーネームは母さんの。あっちは大体偽名だし…。」
闇の魔術の防衛術を教えている顔を思い出しながら特に隠しているわけでもないし、結構オープンなんだけどなぁと、友人を見ているとぼすっと頭に何かが乗せられ振り仰ぐ。
「チャルチウィトリクエ、ヘドウィグの荷物に参考書がまぎれていたぞ。」
「あぁありがと。ママってばちゃんと私に送ってって言ったのに…。って、ヘドウィグは今シリウスのところに行ってたはずだからまーた家に帰ってたのね。」
さっさと歩いていく後ろ姿にだから昨日の晩レポートだしに行った子が出せなかったと帰ってきたのか、とため息をついた。
やり取りを見ていた友人はえ?と去っていく背の高い後ろ姿と、少女としてはすらっと背の高い黒い髪のチャルを見比べた。
「あ、私あっち似。でも目はママと同じ緑よ。それより、そろそろクィディッチの最終戦じゃなかった?私見に行くけど…。たしか…」
「スリザリンとグリフィンドール!そうだあの双子のシーカーの対決だったわ!ほら、チャル急ぎましょう!」
早く早く、という友人にまったく、と笑みをこぼすチャルは良い席を取るために競技場へと向かった。
一年生のシーカーで、寮が分かれた双子の対決に今まで以上の注目が集められるなか、チャルと友人は他のレイブンクローの寮生が集まる席に座る。
「因縁のある寮なのにすごいことになってるわね!」
「チャルの弟なんでしょ?あの二人。皆寮がバラバラって初めて聞いたわ。」
「噂通りだとお父さんはスリザリンでお母さんはグリフィンドールなんでしょ?」
選手が入ってくるまでの間に興奮しているルームメイトに聞かれたチャルはそうよ、と答えると入って来たわと視線をピッチに落とす。
シーカーとして入ってきた小柄な姿はユニフォームの色が違うだけで全く同じ顔だ。
ちょっと強気な赤い目がどこかおっとりとした雰囲気の赤い目に向けられ、握手を、という言葉に二人揃ってにこりと笑う。
黒い癖っ毛を風になびかせ上空に飛び上がる二人は鏡映しのような軌道で空を飛びまわり、時折激しくぶつかり合う。
はしゃいじゃってるわね、とチャルはため息をつき、ふと視線を落とせばどういう感情か全く読めない顔の男を見つけて、見に来ないかと思ったと再び視線を空に向けた。
二人揃ってスニッチを見つけたらしく、お互いぶつかり合いながら一心にそれを追いかける。
箒にのるのが好きなんだね、とそういう元一年生シーカーの母が手ほどきをしたためか、やはり普通よりもうまい。
激しい接戦の末、スニッチを手にしたのはおっとりとした雰囲気のする弟…シュロトルだ。
スリザリンが歓声をあげ、グリフィンドールは悔しそうな兄ケツァルカトルを励ました。
大広間に戻る途中、お前蹴っただろう、と怒る声にチャルが目を向けるとケツァルとシュロがもみ合いになっていた。
どうやらどっちが多く蹴ったかとかそういうことで喧嘩を始めたらしい。
まったくもう、とチャルが向かうとすっかり頭に血が上ったのか誰の制止も聞かない弟の姿。
『いいかげんになさい!』
シャーっという鋭い音にぴたりと動きを止めた二人はにっこりとしながら黒いオーラを発している姉に縮こまり、しゅんと小さくなる。
「こんなところで喧嘩するなんてみっともないからやめなさいって言ったわよね。ママからも兄弟仲良くね、っていわれていたのわかってるわよね。」
二人の頭に手を置く姉に弟は小さく頷くと、ごめんね、とお互い手を取り合う。
それでよろしい、というと、チャル-はやっちゃったと小さく舌を出した。
ばしっ!という音に弟がびっくりしているとそこにはさらに怖い存在…。
「蛇語で話すなと何度言ったらわかるんだ。」
「だって蛇語が一番伝わりやすいのよ。娘の頭ばしばし叩くのやめてよ!頭悪くなっちゃうわ。ママに言いつけるわよ。」
背の高い威圧感を放つ男…ヴォルデモートにチャルはもう、と怒ると男どもは本当に血の気が多いんだから、とぶつぶつと文句を言う。
それを言うと一応母親もその"男ども"に属していたのだが、と額に手を当ててため息を吐いた。
その様子にチャルはおんなじポーズになりながらため息をつき、はっと手を下した。
「ママはいいの!スリザリンの後継者の男どもっていえばいいんでしょ!」
ほんっと、屁理屈なんだからとはらはらと自分を見る弟たちを率いて場所を移動する。
残されたヴォルデモートは誰に似たんだ、ともう一度ため息をついてその場を離れる。
それを見ていた他の生徒たちはあの2人本当に似ているとひそひそと話しあった。
-fin
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