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 それから一週間後…魔法界を震撼させる記事が出回り、後手後手になっていた魔法省は悲鳴を上げることとなった。
【号外!!独占スクープ 奴が帰って来た】
 本誌を読むにあたって、どうか皆さん絶望しないでください。
 そして闇の信者たち、どうぞ絶望してください。
 貴方達の信じた闇は本当にどうしようもない奴だったのです。
 まず、トップ一面が文字になっていることについてどうかご容赦いただきたい。
 そして興味本位で中の写真を先にみる方々には忠告したい。
 マグル方式の“動かない写真”を採用していることにはわけがあることを一瞬で理解してしまうだろう。
 さて、昨年ホグワーツで行われた三校対抗試合についての結末はまだ記憶に新しいだろう。
 最後の迷宮で一人の生徒が亡くなり、一人の生徒がその時の恐怖でパニックとなり表彰式が行われなかったことだ。
 実はあの時、二人の生徒は墓地に飛ばされ、そして闇の帝王の復活をその目にしたのだ。
 魔法省はこの事を極秘とし、“名前を言ってはいけないあの人”の復活はばかげていると一蹴した。
 その禿げてぐるぐるに腐った脳みそをもう二、三回かき混ぜて本誌リポーターのリター=スキーターの前を曇りきった目をむいてみていただきたい。
 確かにあの男は復活した。
 なぜならば今まさにこの記事の編集を行う2時間前にすぐ間近で見て来たのだ。
 そして、何故奴を目の前にして生きていたのか…それはこのトップ記事をめくった先に答えがある。
 本来ならば要点だけをまとめなければならないが、あまりに跳躍し、でたらめな現実を前に魔女新聞編集者一同整理がつかなくなってしまった。
 そのため回りくどい内容となったことを理解していただきたい。

 話は変わって、8月のあの騒動を覚えていない人はいないだろう。
 マグルの少年らを標的にした魔法薬を使った性転換の話だ。
 実はあのとき、被害にあった魔法使いの中に誰もが知る英雄、ハリー=ポッターが被害に合っていた。
 使われた薬は珍しい魔法薬“人魚薬”というものを飲まされ、3日間少女になってしまっていた。
 そして現在、3日で解けるはずの魔法は解けることがなく、少女としてホグワーツに通いつつ初夏に子供を授かる体となっている。
 聡明な読者はなぜそのような話をするのかもうお分かりであろう。
 鈍感な読者のためにわかりやすく解説をしよう。
 まず復活した闇の帝王はとっさに逃げてきた少女と出会い、それがハリー=ポッターとわかると連れ去った。
 人魚薬とは人魚姫の童話をイメージした薬で、運命で結ばれているものと想いが通じ合うと解呪の制限はなくなり、元に戻ることはなくなる魔法薬だ。
 闇の帝王がかつて赤子を襲った理由として、いつか自分を打ち負かすものとして運命づけられた子が大きくなり、自身を脅かす前にとそう考えたためであることを本誌は入手した。
 そしてもうお分かりであろう(まだわからないあなたは人生にTがないことがなかったのであろうと推測する)。
 その運命としてつながった二人が偶然出会い、そしてどういうわけか闇に帝王の毒牙にかかったがために英雄の体に新しい命が宿ったのだ。
 素晴らしきことであると同時に、奴の血が受け継がれることに恐怖を覚えることは間違いないであろう。
 当然のことながらそれが発覚した後、男性に戻る薬を飲み、子をあきらめなければならないとされたが、闇の帝王はそれを知るや否や誓いの魔法を自身とハリー=ポッターに施した。
 奴は子が成人するまで誰かを殺さないこと、ハリー=ポッターのそばを離れないことを誓い、ハリー=ポッターには自身の妻となることを誓わせたのだ。
 かくして奴は復活したが、半世紀も歳の離れた…しかも元男で宿敵だった英雄に夢中になるなど、ただのロリコン、変態であることが露呈したのだ。
 このような男の本性を知らずに信じていた信者らよ、目を覚ますがいい。
 これは世界を恐怖に陥れた男の真に望むものだったのだ。

 
 ぺらりとそこまで読んだ魔女や魔法使いたちはひそひそと囁き合い、意を決して一枚紙をめくる。
 複数枚貼られている写真はどれも動かない“マグル式”で心臓に手を当てていた魔法使いたちは皆、動かないように配慮した魔女新聞の編集者たちに感謝をしつつ、動いて枠から消えていればよかったのにと、複雑な心境をのぞかせた。

 独占取材 つい先日まで三校の対抗試合を取材してきた私、リター=スキーターはあの耄碌とした大魔法使いと呼ばれているダンブルドアからの依頼を受け、興味本位でホグワーツの一室へと足を踏み入れた。
 そこにいたのは少し女性らしくなった英雄ハリー=ポッターと、見たことのない男が待っていた。
 蛇に睨まれた何とやらか、非常に威圧感を放つ男はひざに座った少女をゆるく抱きしめつつ、赤い目を細めて威嚇してきたのだった。
 記者として、長年様々な魔法使いを見てきた私は確かにこの男があの闇に帝王なのだと、直感した…がなにぶん腕に元少年のハリー=ポッターを抱えての威嚇だ。
 はっきり言って恐怖はなく、落ち着いて話を聞くことができた。
 開口一番、英雄がなぜ膝の上にいるかという理由を話してくれた。
 いわく、大人しくなるからだそうで現にこの取材中、何度となく殺意を向けられたが、そのたびに腕の中の少女で気を紛らわせていた。

 まず、何故ハリー=ポッターとわかった時攫ったのかについて、尋ねたところ闇の帝王は少女となったハリー=ポッターを抱えたままどういう反応をするのか興味本位でと答えた。
 抱えられたハリー=ポッターは少女となって混乱し、戸惑っていた当時を思い出したのかそれとも興味本位で無理矢理純潔を奪われたことを思い出したのか、涙を浮かべ悲しげな溜息をこぼした。
 それから2週間弱ずっとそばに置いて、いたいけな少女を良いように弄び、挙句歳の差も元男であることもお構いなく好き勝手したのだ。

 次にハリー=ポッターに当時について尋ねてみた。
 背後にいる闇の帝王もといただのロリコン爺を振り向いた後、どう思うも何も突然襲われ監禁され…知らない間に薬の副作用かそれとも運命とやらのかけ間違えられた赤い糸のせいなのか、はたまたスタイルもそこそこ、元男で年端もいかない自分を組み敷く爺に同情してなのか魅かれてしまったのだと言う。
 一瞬心を許してしまった隙に件の誓いの魔法に同意してしまった少女は諦めた顔で子供に罪はないしと語る。
 元々頭がいい方ではなかったと記憶していたが、我らが英雄殿はどうしようもない闇の帝王を更生できると信じて、自ら闇の帝王を縛る鎖となって生きることを選んだと言う。
 今後についてはダンブルドアとの会話次第とのことだが、なんでもホグワーツ卒業後に闇の魔術に対する防衛術の教師になりたかったと言うのを生徒の洗脳や勢力の拡大をしなければ採用してもいいと言う話が上がっているらしい。
 生まれてくる子供と孫ほどに(子孫すらいないので妙な言い方だが)歳の離れている元少年の妻を人質に取られた闇の帝王は復活した際にどこかに骨を置いてきたのか、それとも正真正銘の蛇男になったのか、固い骨のないただの爺になったのではないかと、推測される。

 家や財政などについて尋ねたところ、ダンブルドアの用意した屋敷を当面使うことになると言う。
 財政についてはそれぞれ先祖からの資金があるとのことで、当面は心配はないと言う。
 少年を弄び、挙句自分の妻にするなど、正気の沙汰ではないと言いたいがそもそも正気だったら闇の帝王などと名乗ったりはしなかったのではないか。
 闇の帝王だったロリコンは取材するにあたって、呪いの手紙や吠えメールなどを自分に送るような馬鹿がいたら遠慮なく呪い返すとそう宣言していた。
 興味本位で手紙を送るのだけは届ける梟のためにも避けたほうが良いと、最後に忠告する。




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