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「えっ!?」
ヴォルデモートとスネイプを見比べる少女は顔を上げて、立ち去ろうとしているスネイプに目をしばたかせる。
前回部屋に飛び込んでいたため、やり取りを聞いていなかったハリーはてっきりスネイプに連れられて漏れ鍋に戻るのかと思っていただけに戸惑いを隠せない。
肩に手を置かあれたことで少し顔を赤らめる少女にスネイプは目を向け、さっさと行けと言う帝王のオーラに部屋を後にした。
「さて…ようやくこれでいろいろ話を聞きだすことができるな。」
「っ!あっあの…ぼ…私は何も…。」
楽しげなヴォルデモートの言葉に戸惑うハリーは一歩下がったところで椅子に躓いてストンと腰を下ろす。
不安げに顔を上げる少女に深く口づけると、少女は戸惑いながら腕を伸ばしてローブを握る。
ここ数日でどうすれば少女がヴォルデモートに全身をゆだねるか、それをわかっている闇の帝王は絡めた舌を吸い上げ、全身の力を奪う。
ピクリと肩を震わせ熱い吐息をこぼす少女にヴォルデモートは満足げに笑い、抱いて立ち上がらせた。
震える少女を抱きしめるヴォルデモートは耳元に口づけるとその反応を楽しみ、もう少し楽しみは先延ばしにするかと机に押し倒す。
「んっ…あ…」
与えられる愛撫に反応して声を上げる少女に気をよくしたヴォルデモートは少女に覆いかぶさった。
何を焦る必要があるのか、と冷静な自分の声が聞こえるのを無視し震える喉に口づける。
言葉を話せるようになったはずが甘い声を上げるだけの少女はヴォルデモートに腕を回し、必死にその動きに合わせていく。
ひときわ甲高い声を上げる少女を抱きしめ、共に果てるとどちらともなく口づけた。
どうしてここまで求めてしまうのか…。
それの理由がわからないヴォルデモートとハリーは抱きしめあいながらどうしてだろう、と疑問に思う。
スネイプに連れられて此処を出るんじゃないかと考えた時、ちょっとさみしかったのをハリーはわかっていた。
置いて行かれた時驚いたのと同時にまだ一緒にいられると、そう歓喜した。
あの薬に愛の妙薬でも入っていたんじゃないかと、ヴォルデモートを抱きしめる。
腕を掴まれてかくまってくれた形になった時、壁際に追い込まれた時…逃げなきゃと言う本能とは違う何かがどきりと高鳴り、恐怖と同時に焦がすような熱でとどまり続けた。
ヴォルデモートもセブルスが来たとき、連れて戻るような気配だったから遮って手元に残した。
なぜかはわからない。
散々からかってもてあそんだ不運な宿敵。
遊んで遊んで…絶望に突き落としてやろうとおもっていた。
逃げてきた姿を見て、顔を見てすぐにハリーだと分かった。
壁に両手をついて逃げ場をなくした時、驚いたようなうろたえたようなその動きに…何か感じるものがあった。
果たして女になったせいなのか、それとももともとそういうやつだったのか。
それはわからないが、顔を赤く染めたその顔をゆっくりと見たくてここに連れてきた。
予想以上に馬鹿素直で、顔が赤いのを媚薬でも入っていたかといえば本当にあったのかわからないのにみるみる効果が表れていった。
すがるように背中に回された華奢な腕にびくりと肩を震わせた事を、気絶するように眠ったハリーは知らない。
だが、と二人はそれぞれ胸に秘めているやけどしそうな感情とは別のところで声を上げた。
男で会っていれば確実に打ち合う…対極的な存在だ。
そしてこの今までもハリーは学校に行かなければならない。
このままいることは許されない。
この夢の世界を少しでも記憶に刻みたくて場所を移して絡み合う。
ふと、シャワーを浴びてきたハンナをみていたヴォルデモートは、髪を拭く小さな手を止めて髪に口づける。
「ホグワーツでの私服が少ないな。」
顔を赤くした少女にはからかい半分で3着ほどワンピースを渡していたが、それだけでは足りないだろう、と現在薬を模索中のしもべの事はさておき考えていた。
何かのこの夢の時間の名残を残したくてつい口に出たが、自分が少女を連れて町を歩くのには少々抵抗がある。
ハンナもまた元に戻れば不要になってしまう服を想い、それでもと迷う。
「かっ買いに行くの?」
期待半分、多分からかっているだけだろうなと諦め半分で聞くと、ヴォルデモートは目を細めて不安げな少女の腕を引く。
顎に手をかけ、上に向かせるとシャワーで温まった唇を指でなぞった。
「ここで監視もいいが、たまには外に出たほうが気晴らしになるだろう。あぁ、勝手にどこかに逃げないようにしなくてはな。」
キスをされるのかと目を潤ませた少女にヴォルデモートは満足そうに口角を上げて口づける。
チャリっという音とともに首に何かの重みを感じたハンナは胸元を見下ろした。
赤い石がはめられたペンダントが胸元できらりと光る。
「俺様から離れた場合、そのペンダントが反応するようになっている。どうなるか身をもって知りたくなければ逃げようなどと思わないことだ。」
目をしばたかせるハンナは複雑な顔をしつつ、うれしさでなぜか顔がほころんでしまう。
まだ濡れていた髪を杖で乾かしてもらい、支度をするとヴォルデモートに促されて初めて外へと出る。
ロンドンのどこかということ以外わからないが、古い小さな小屋のような家だったらしく、闇の帝王の隠れ家というのには少々戸惑いがある。
出てきた少女と背の高い男という奇妙な組み合わせに誰も目を向ける者はおらず、ハンナは促されるままに大通りへと出た。
スネイプに黙っていてくれと言われたとおり、ルーピンは心配そうなシリウスに何も言えず、ため息をこぼしていた。
あれ以来姿を現さないスネイプも気になるが、やはり一番心配なのはあのヘドウィグっぽい梟と、家出中の少年。
数々のトラブルに巻き込まれやすいと言うか…その点でも心配だ。
きっと漏れ鍋があるロンドンにいるんじゃないかと、マグルの目が素通りするように自分に魔法をかけると雑踏の中を歩く。
髪を染めた派手な若者、人目をはばかることなく愛を語り合う恋人達、人種様々な観光客やらなにやら。
奇抜なファッションの人やはたまたイギリス紳士らしい服装の人。
こうしてみると狼男である自分もあんがい普通に見えるんじゃないか、と辺りをみながら探す。
しばらく歩いてからちょっと休憩しようと、アパート前の階段に腰掛けて持ってきた水を飲む。
ふと、ちょうど店から出てきた黒髪の少女と背の高い…祖父か父親かの組み合わせに目をとめた。
なんで目がとまったかわからないが、男の赤い目にどことなく見たことがあるような気がする、と瞳と同じ色のペンダントを揺らす少女をみる。
服装こそ少女だが…あの緑色の目と黒髪と…推測できる年代と…。
そこまで考えてから不意に赤目の男がどこで見たことがあるかが一瞬でつながり、飲んでいた水を噴き出した。
どこか嬉しそうな様子の少女に男は上機嫌で何か袋を持っている。
いやいやその組み合わせはただの偶然であってあり得ないはず、と思わず目をこする。
もう一度目を向けるが、そこにはだれもいない。 姿くらましができるということはマグルではないわけで…。
ヘドウィグっぽい梟もといヘドウィグが届けてきた手紙と、スネイプの戸惑うような顔と…最近姿を見せないことが全部つながっていく。
今すぐスネイプに会いに行こう、ルーピンは姿くらましをした。
スカート系とパンツ系、両方を購入したハリーはもしかしたらすぐ着なくなるかもしれない服なのに、思わず顔がほころぶのが止まらない。
パンツ系なら男に戻ったとしても履けるのだし、全部が無駄と言うことはないはず、と自分に言いながら袋を抱きしめる。
今までやけどしそうなほど熱くなっていた想いがさらに温度を上げたような気がして少し悲しい思いを抱きつつもふとペンダントに目を落とした。
赤い石だったはずが緑に見え、目をしばたかせる。
戻るぞ、と言うヴォルデモートに腰を抱くようにされて姿くらましをする。
部屋に戻ってもう一度ペンダントをみれば赤く見える。
「さっき外では緑だったのに…」
「あぁ、部屋の電球では赤く見え、太陽光では緑に見えるだけだ。」
きょとんとするハンナにヴォルデモートは今は電球の下だからな、と言う。
そんな石があるんだ、と物珍しげな少女は視線を感じて顔を上げ、じっと見つめるヴォルデモートと目を合わせた。
「あ、あの…服ありがとう…ございます。」
「似合う服があってよかった。それと例を言われるほどではない。」
袋を抱きしめたハンナは道中何度も言っていたお礼をすると、ヴォルデモートは細い腕を取り、引き寄せる。
袋をわきに置いて一歩前に出るとヴォルデモートに抱きしめられるがままに身を寄せて唇を合わせた。
買い物の道中、互いに名前を言いあわなかった二人だが、正体を隠している以上、名前なんて呼んでもらないだろうとハリーは考え、ヴォルデモートも黙っている分呼べないだろうと考えていた。
寝台に押し倒し、抱きしめあうとヴォルデモートは少女の腕を抑えて上から見下ろす。
ヴォルデモートは愛撫に体の力を抜く少女を見つめてそっと屈みこむ。
耳たぶを食み、口づけをすると体をつなげる。
とろとろと顔をふやけさせて身をゆだねる少女に一緒にいられる日もあとわずかだな、とそう考えたヴォルデモートは耳に口づけて反応をうかがうとそっと呟いた。
「いい顔だ…ハリー・ポッター。」
耳元で囁けば驚いたように身をこわばらせる少女を腕で感じ、繋いだ体を動かしながらもう一度名前を呼ぶ。
背に回された手が一瞬力を弱め、すがりつくように力を込められるとヴォルデモートは食らいつくように口づけを施した。
「ハリー。」
口づけ合間に名前を呼ぶとふやけた目を潤ませながらもっと呼んで、と声を上げる。
互いに果てて息をつく間、ぴったりと隙間なく抱きしめあう。
ようやく本当の意味で心が通じ合えた気がしてハリーはヴォルデモートに寄りかかった。
「いつから僕がハリーだって気がついてたの?」
最初の時、名前を呼ばれた気がしていたけど、空耳だったかもしれないとそう考えていたハリーは首元にかかったままのペンダントに目を落とす。
部屋をぼんやりと照らす光がカーテン越しの光のためか、緑に見える。
「あの男どもから逃げて俺様にぶつかった時だ。」
黒い髪に口づけをして答えるヴォルデモートにそんな前から?とハリーは抱きつく力を強くした。
「全世界の内、どれほどの碧の目を持つ人間がいると思っている。」
「もしかして結構少ないのかな?」
そういえばあんまりみないかも、と考えるハリーの顔を上に向かせて自分の赤い目と澄んだ緑色の目をあわせる。
ヴォルデモートの目の色は生来のものではない。
生まれ持ったハリーの緑色の瞳とは違う。
「全人類でも数パーセントだけだそうだ。それに俺様の顔を知っていて、この国にすむ緑色の目を持つ黒い髪の未成年とくればほぼ間違ないだろう。もっとも性別が変わっていることには少々驚いたが。」
髪を撫で、そのまま体をなでると顔を赤くするハリーに自然とヴォルデモートの口元が上がる。
「あっあのさ…もしも僕が男のままだったら…うぅん何でもない。」
「すぐに殺すのは面白くない。とりあえず連れてきて…反応次第では悪戯として抱いていたかもしれないな。」
こういう関係を持っていただろうかと問いかけようとして口をつぐむハリーにヴォルデモートは答える。
「そういうハリー…ハリーは男のままであれば抱かれることに抵抗したのか?」
「わからない。でも…結果的にそういうことになったけど背中にかばってくれたとき…胸の奥できゅっとなって…。」
だからわからない、というハリーをヴォルデモートは抱きしめて口づけをかわす。
「明後日…セブルスが迎えに来る。ホグワーツがあるだろう。その前に戻らなければあの爺が騒ぐだろうからな。」
ヴォルデモートの言葉にズキンと胸が痛むハリーはそうだよね、と顔をうずめた。
きっと今頃はスネイプが魔法薬を作って元に戻る準備をしているはずだ。
だからこうしていられるのもあとわずか。
元に戻りたいという思いと同時にもっとこうしていたいとも思う。
そんなハリーの心のうちに気がついてか、ヴォルデモートは細いハリーの体を抱きしめた。
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