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 不死鳥の騎士団の話しあいで呼ばれていたスネイプはいつも通りシリウスとにらみ合った後、部屋を出たところに白い梟が飛んできた。
 ぶつかる勢いでスネイプの肩にとまると手紙を差し出し、一声鳴いた。
「あれ?ヘドウィグじゃないかな?」
 出てきたルーピンの言葉にたしかポッターの梟だったはず、と手紙を受け取るとその筆跡に眉を寄せた。
 どうみても今さっきまで議題にあがっていた男の筆跡に見える。
「よく似た同種の違う梟だろう。」
 いやまさか…家出したということで現在行方を探している少年の梟がこれを持ってくるはずがないとスネイプは単純に居場所と姿現しができる場所だけが書かれている手紙を懐に入れる。
「一応後で報告するが、このことは黙っていてくれ。」
「わかった。ヘドウィグっぽい梟の事もとりあえず黙っておくけど…ちゃんと報告するようにね。」
 いやな予感全開と言った様子のスネイプにルーピンは頷くと梟を連れて立ち去るのを見送った。
 
 
 家出してから漏れ鍋に宿を取り、ちょっと出かけようとしてマグルの服でロンドンに出て、そこで変な男らに捕まって薬を飲まされて、逃げている途中で捕獲された、と正直に話す姿にスネイプは頭痛がする、とため息を吐いた。
「“そっそれでなんでこんなところにスネイプ先生が…”」
「以前、我輩のうでに死喰い人の印があるのはみているはずだ。薬をと言われたが…喋れなくする薬の解毒と、その性別が変わる薬の解毒…両方が必要だな。何か飲んだ時の特徴はないのかね?」
 まだ動揺しているらしいハリーを軽く睨み、とりあえずと顔を左右に動かしてみる。
 流石に服を脱げとは言えないが、ぱっと見た感じでは体は女性になっているらしい。
 と、そう考えてある疑問に行きつく。
「その男らにワンピースを着せられたのか?」
「“いや…あの…その…連れてこられてからその…着替えとして…渡されたと言うか…。”」
 マグルの服装ぐらいはちゃんと分かっているはず、と考えるスネイプにハリーはしどろもどろになって答える。
 まさかあれやこれやとされた事なんて言えないし、ましてやさっきもそれに近い状態だったなんて…言えるわけない。
 ふと思い出すハリーに目を合わせていたスネイプは言いよどんだことが気になり開心術をかけたのが災いして、ほんの一部みてしまったことに思わず言葉を失う。
 いやいやいやいや。
 あの帝王は何をしているんだ、と考えるが、それを突っ込んだところでどうにもならない。
それに襲われたとはいえ、受け入れている方も方だと、痛い頭を押さえる。

「とりあえず、どんな薬だったのかね。」
「“甘酸っぱかったような…必死にもがいていたので…あんまり詳しく覚えてない…です”」
 はぁとため息をつくスネイプにハリーは思い出そうとするが、何せ何を飲まされたかわからず暴れていただけにじっくり味わってなんかいない。
 ハリーの答えにスネイプは予想していたらしく、だろうなと頷く。
 覗き込むスネイプにハリーは小さく溜息を吐いた。
 ふと、ヴォルデモートに対して、女性になったから異性となった男を妙に意識してしまうのかと考えていたハリーはスネイプの顔が近いというか見つめてくることにあのドキドキとか気恥ずかしさがあまりないことに首をかしげる。
 まぁ学校で嫌というほどみているのと、やっぱり苦手なのとで違うかもしれないが、それにしてもヴォルデモートは宿敵で、あの時恐怖を植え付けられたのに…。
 面倒を避けるためとはいえ、背中にかばってくれた時にドキリと胸が高鳴ったような覚えがある。
 いやきっと、そう思わせる何かがあの薬に入っていたんじゃ…とスネイプから少し目をそらし、頬をかいた。
「魔法薬によるほかの影響はないようだな。とりあえず喉を治すのを優先として、体のほうは少し調べてからとなるな。…本当に全身変わっているのかね?」
 目の異常、骨格の異常などその他もろもろの心配はなさそうだと、ハリーから手を放すスネイプの言葉にハリーはほっと溜息をついた。
 最後の言葉にこくこくと頷くと、どう証明すればと立ち上がった。
 
 服を脱げばわかってくれるはずと手をかけたところで、あれ?と急に目の前の慣れているはずの先生が今や異性となった男であることを意識し、顔が赤くなっていく。
「いや…あとであの犬に何言われるかわかったものではないため、脱ぐな。とはいえ…後ろを向きたまえ。」
 ハリーが何をしようとしたのかを察したスネイプは顔を真っ赤にした元少年の手を押しとどめた。
 どこか慌てているようなスネイプはどうしたものかとため息をつくとハリーに後ろを向くようにと言う。
「他に方法がない…。元に戻りたいならば我慢したまえ。」
「!?」
 胸と下半身に何かがふれた気がして、ハリーは目をしばたかせた後見る見るうちに顔を赤く染めて奥の部屋に駆け込んだ。
 ぞわぁっとした感覚に思わず自分の体を抱きしめる。
 他に確かめるすべがなかったとはいえ、少々やり過ぎたと勢い良く閉められた扉をみてため息を吐き…屋根裏から強い殺気を感じて身構えた。
「何をした。」
 背後から感じる殺気にスネイプは知らずひやりと汗をかいた。
 みていたのならば聞くまでもないことだろう、と内心悪態をつきたいのをこらえ、他に異常がないか確かめていただけですと答える。
 有無を言わさずスネイプの左腕を掴むと、服の下にある闇の印に苦痛を与えるように直接力を加えた。
 まさかの行動と、予測していなかった激痛に思わず膝をつきそうになったのをやっとの思いでこらえる。
 見てしまったハリーの記憶と、さっきハリーにした自分の行動からの闇の帝王のこれ…戸惑いしかないスネイプは少し機嫌の悪い闇の帝王の顔色をうかがった。
「薬はいつ出来上がる。」
 先ほどのお仕置きとも思える行動はクルーシオでは体へのダメージがでかいため、薬の生成のために印への痛みだけですませたかったのかと、スネイプは考える。
 機嫌が悪そうな闇の帝王の機嫌をこれ以上損ねたくないスネイプは、先ほどのお仕置きのことをおくびにも出さないヴォルデモートに合わせて痛む腕の事を出さずに答えた。
「明後日の朝には声を出す薬は完成するかと。荷物は漏れ鍋に置いてきたという話ですので、そこに戻せば」
「なるほど。では薬ができたのち、ここに持ってくるのだ。漏れ鍋には数日分の宿代でもはらっておけ。来週には戻すとしよう。いろいろ聞きだしたいこともあるのでな。」
 スネイプの言葉をさえぎり、薬ができたら持て来いとヴォルデモートは指示を下す。
 てっきりからかうだけからかって楽しんだハリーを宿に戻せとでもいうと考えていたスネイプは、さっさとさがれという様子の闇の帝王に戸惑いを隠せない。
 ハリーの記憶を思い出し、命の危険ではなく別の危険を感じるが、闇の帝王に意見すれば今度こそ間違いなく磔の呪文が飛んでくるはず、と扉の向こうに消えた元少年にため息を吐いてその場を立ち去った。
   スネイプが立ち去るとヴォルデモートは少しいらいらとしたようなもやもやとした気持ちをため息とともに吐き出し、寝室への扉を開ける。
 小さなテーブルの前で自分の体を抱きしめるように立っている小さな背をみると何も言わずにその背を抱きしめた。
 びくりと肩を震わせるが逃げる様子はない。
 先ほどスネイプに見せた反応とは違うことにヴォルデモートの機嫌はよくなり、そのままハンナの顔を振り向かせて口づける。
 スカートの裾をたくし上げて愛撫すればぴくぴくと瞼を震わせ、抱きしめるヴォルデモートに体を預けて熱い吐息をこぼした。
 このままと考えるヴォルデモートだが、小さく聞こえたおなかの鳴る音に手を止める。
 顔を真っ赤にして恥ずかしげに目元を染めた少女に思わず口角が上がるヴォルデモートは少女を抱き上げ、先ほどの居間に戻ると自分の膝の上に座らせた。
 おとなしく座るハンナを乗せたまま杖をふるい、食事を用意する。
 ハンナの頭の高さがちょうどヴォルデモートの顔の高さになり、抱き寄せて柔らかい髪の匂いを嗅ぐ。
 ハンナことハリーもまた、ヴォルデモートの首元に顔をよせてどきどきと高鳴る鼓動を鎮めていた。
 食事をとった二人は特に会話できるわけでもないため、何も言わずに寝台に腰かけ、身を寄せ合う。
 自分で区切りを言ってしまったのと、学校があることから一週間…それが限度だ、とヴォルデモートは細い首に顔をうずめて軽く口づける。
 背中から抱き締めるヴォルデモートに少女は安心したように力を抜き、ヴォルデモートの軽い愛撫を受け入れる。
「あれに触られた瞬間、勢いよくこの部屋に飛び込んだのは…。気持ちが悪かった…ということか?」
 気になっていたあの反応に問いかけると、少女は顔を赤くして小さく頷いた。
その答えに上機嫌になるヴォルデモートは少女を寝台に倒し、その上にのしかかる。
目を合わせるとどちらともなく唇を合わせた。
 
  
 温かいものに包まれている、とぼんやり眼を覚ましたハリーは触れ合う素肌の感触に夢を見ているのかなとゆるく抱きしめる腕にすがりつく。
 ピクリと動いた腕がそのまま抱き寄せると、ハリーの首筋にピリッとした痛みが走る。
 体を震わせる少女を抱きしめる闇の帝王と抱きしめられるハリーはしばらく戯れた後、眠りにおちていった。
 
 朝早く…とはいえヴォルデモートが起きているかわからず、スネイプが立ち止まると物音が聞こえたのかナギニが顔を出し、中へと招く。
 どうやら起きているらしいと、スネイプが入るとヴォルデモートが居間でコーヒーを飲んでいた。
 薬を飲ませる対象の少女の姿はない。
「予定通りだな。そのまま待っていろ。」
 寝室に消えていく闇の帝王に、危惧していた別の危険が現実になっていると、新学期が始まった時どうダンブルドアらに報告すればとため息をつく。
 ごそごそとやり取りが聞こえ、ほどなくして初めて見たときとは違う服を着た元少年をスネイプは何と言えばいいのかと心の中で大きく息を吐いた。
「先日はいきなりすまなかった。これが声出すための薬だ。」
 スネイプにされたことを思い出し、顔を赤くして俯く少女はスネイプの言葉に顔を上げ、薬を受け取った。
 とりあえず謝ってくれたスネイプが少し気まずそうなことに警戒気味のハリーは肩の力をぬき、差し出された薬をまじまじと見つめる。
 
 これが授業中だったりすれば毒だなんだと、ロンと騒いでいたのになぁと薬を飲んだ。
冷たい薬がのどを通ると急に熱くなり、むせるように咳込む。
「あーあー…やっと出た…」
 喉に手を当て、声の出を確かめる少女は自分の声にあれ?と首をかしげた。
「声…なんか違うような気がする…。」
「随分とかわいらしい声だな、ハンナ。」
 あれ?という少女にヴォルデモートは笑う。
 スネイプはスネイプで声がなぜ違うのかと考えてハリーの服装にあぁと納得した。
 声が違うのは現在少年ではなく、少女になっているからで薬が効かなかったわけではない。
「ではセブルス、先日話した通りだ。またあの梟で連絡をする。」
 ヴォルデモートの言葉に顔を赤くした少女を置いといてヴォルデモートはスネイプを追い払う。
 その前にと、警戒する少女を宥めスネイプが喉の調子を見ようと手を伸ばし、その首筋に残る赤い印をみて思わず固まる。
無言でさがれと言うオーラを発する闇の帝王にスネイプは何も言えずに下がった。
   




スネイプ先生が何をしたのか=悟空式
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