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ずきずきと痛む体に目を覚ましたハンナことハリーはぼんやりと部屋の中を見回した。
家出してからとった漏れ鍋の部屋とは違う装飾にここは、と起き上がりかけて慌ててタオルケットを体に巻きつける。
かけたままの眼鏡のずれを直し、ここはどこかとカーテンから漏れる光にそう時間が立っていないことを知る。
喉に手を当て、声を出そうとするがやはり出ない。
ずきずきと…主に腰辺りから痛みが走り、恐る恐る素肌に巻いたタオルケットの中をみる。
そもそも素肌の時点で顔が赤くなるが、さらに今まで自分になかったはずの胸につけられている赤い印が目に入り、青ざめると言うかどうしたらいいかわからず、恐る恐る…下腹部をみてタオルケットを抱きしめる。
ない。
本来あるはずのものがない。
これからどうなっちゃうんだろう、とハリーはとりあえず今までのことを順を追って考えることにした。
家出して、漏れ鍋に滞在し教科書を買って…時間が空いてふと駅で見かけた広告のお店に行こうと、マグルの格好をして…ロンドンに出かけた。
お店の場所がいまいちわかりづらかったのと、きょろきょろとしていたせいでうっかり路地に入り込み、どうにか出ようとしていたら声をかけられた。
嫌な予感がして逃げようと身をひるがえしたところで金縛りの呪文をかけられ、転んだところを男達が囲み、マグルと勘違いされて魔法薬を無理やり飲まされた。体が熱くなってむず痒くなって…状態を見ようと金縛りを解かれたところでとっさに隠していた杖をだして武装解除呪文を唱えてひるんだすきに逃げだした。
で、あの深緑の髪に赤い目の男にぶつかり名前を聞かれてうっかりハリーを言いかけ、とっさに浮かんだ同級生の名前を借りた。
逃げられないように囲まれて、顔が近いことにそういえばトム・リドル時代のこの男は結構ハンサムで、今現在も落ち着いて見ればやっぱりかっこいい…じゃなくて、パニックになったところをここに連れてこられ…。
そのあとは思い出すだけでも顔から火が出そうになる。
辺りを見回すもそもそも最初の部屋はソファーがあった。
ということはここは寝室であり、ソファーの近くで脱がされてしまったためにこの辺に服はない。
おまけに杖まで落としてしまったらしくここにはない。
どうしよう、と痛む腰に気を使いながら立ち上がろうとするハリーは股を伝う何かに気が付き、タオルケットを巻いたまま何かから隠すように座りこむ。
最悪だ、と青ざめるハリーは唯一まだ正体がばれていないことを慰めにもう一度立ち上がろうとしてむりむりと寝台に座り込む。
【忙しいわね。えっとハンナ…だったかしら?】
シューと言う音に振り向けばそこにはあの大きな蛇。
たしかナギニと言った蛇は目を細め、ハリーの足元までやって来た。
【それにしても貴女、声が出なくてよかったわね。大分乱れて】
楽しげなナギニの様子にハリーはあわててその口に手を当てる。
ナギニもまた楽しげに眼を細ませると少女の無意識な行動に上機嫌となる。
「何を騒いでいるナギニ。ハンナ、何を考えて男装していたかわからないが、適切な下着もつけず、あのような格好窮屈だろう。」
開いた戸から聞こえた声にハリーことハンナはおそるおそる振り向いた。
戸口に立った男は何か袋を投げてよこすと、受け取ろうと反射的に体をうごかし、痛みと下腹部の感覚に思わず体を丸める。
「あぁ、そういえばそのままにしていたな。ちょうど俺様もシャワーを浴びるところだ。ついでに洗ってやろう。」
混乱したままのハンナを抱き上げるとそのままどこかに移動する。
タオルケットと眼鏡を奪われ、身をすくませるハンナをシャワー室に入れるとヴォルデモートもまた着ていたマグルの服を脱ぐ。
抱きしめるように立たせ、石鹸を手に取ると顔を真っ赤にしたハンナに擦りつけた。
洗われる感覚と、元々は同性であるものの裸で触れ合うことに、宿敵であることもかまわず真っ赤になった顔を見られたくなくてハンナは必死に顔を隠そうと男の肩口に顔をうずめた。
しっかり立っていられないのと、恥ずかしすぎてどうしたらいいのかわからず混乱しているハンナにヴォルデモートは面白い玩具ができたように笑い、見ていないことを良いことに手に取った石鹸を手で泡立てる。
泡だらけの手で小ぶりな胸を揉み洗い、徐々に赤く染まっていく体を楽しむと弄んだ秘部へと手を伸ばした。
弄ばれた快感を思い出したのか、ぴくりと震える少女だが、拒絶するような動きはない。気をよしたヴォルデモートは注いだものを掻きだすように動かすと壁へと押し付けた。
顔を覆っていた手を引きはがし、ヴォルデモートは自分の肩に抱きつくように促すと華奢な白い足を持ち上げる。
驚いてまわした腕に力を込める少女は秘部にシャワーのお湯とは違う熱いものを感じ、期待に緑色の瞳をふやけさせた。
自分の体重で深く刺さるそれにハンナは首をそらし、ただヴォルデモートの動きに合わせて体を振った。
シャワー室で体力を消耗した挙句、よけいに下腹部の痛みを抱えることになったハンナは持たされた袋を開け、中に入っているものに再び顔を真っ赤に染めた。
多分女性ものの下着とワンピースと思う服。
「サイズは抱いた時の感覚で大体はあっているはずだ。」
始終顔が赤くなっているな、と楽しむヴォルデモートは背後に回り込むと固まったハンナの手から下着を取り、着せてみる。
あわあわと動く姿にどこかあったかくなるような気がしたヴォルデモートはホックをつけると衝撃で固まっている少女を振り向かせ、その小さな唇に唇を重ねた。
ついばむような口づけをすると、小さく開いた唇を割り開き深く愛撫する。
思わずすがりついてきた少女にヴォルデモートはそっと離れると何も言わずに部屋を出る。
残されたハンナことハリーはぼぅっとする頭で自分の唇をなでた。早く服を着ようと着替えるとすることがなくなり、再び唇に手を当て、つきんと痛む胸に手を当てた。
なんとなく部屋を出づらくて扉を背に座ると何考えてるんだろう、とひざを抱えた。
ちょっとの悪戯心だったはずが、振り向かせてみた途端何も考えることもなく、自然と体が動き…今まで女性を懐柔するために様々な手は使って来たが、後先考えずに本気の口づけ一歩手前までしたことが信じられない。
と、ヴォルデモートは閉じた扉を背に立ちつくしていた。
別段、少女となったハリー・ポッターの顔が好みだったと言うわけではない。
トム・リドル時代から情報収集やらなにやらでもっといい女と表面上の交際などしていたこともある。顔の好みがあるわけではないが、それでも違う。
もともと幼子が好みかと言えばそれも違う。
他人に対して利用価値があるか、ないか…それぐらいの眼でしか見たことがない、とヴォルデモートは自問自答していた。
ただ…ただ今までにないぐらいの高揚感はあった、と無意識に唇をなでていた手を止める。
いやいや、あれは一応少年であって、殺さなければならない相手だ、と自分に言い聞かせるヴォルデモートは深々と溜息を吐いた。
とりあえず…しもべの一人であり、魔法薬に精通した男に連絡をするか、とちょうど窓をたたく梟に目を止め白い梟を中へと招き入れた。
賢い梟はどうやら主人がここにいることをわかっているらしく、真ん丸な目を目の前の男に向ける。
「今貴様の主人は奥にいる。困っている主人を助けたいならこの手紙を届けて来い。」
一通の封筒を取り出すと、梟は疑うような目で見つめた後それを受け取り、大空へと羽ばたいていった。
一応は名前で呼んでみたがどうやらあの後の痛みと快感で記憶が飛んでしまったらしい。
次はどのタイミングで名前を呼べば面白い反応をするのか、とヴォルデモートは考える。
ふと、抱いている間中ずっと耳元で囁けば面白いんじゃないか、とヴォルデモートは思い付き、にやりと笑う。
決して抱く口実ができたとか、理由付けとかしているわけではない、ととりあえず寝泊まりするつもりがなかったために足りない食料を調達しにマグルの服装でヴォルデモートは出かけて行った。
戻ってきたヴォルデモートは疲労と緊張から眠るハリーを見るとさてどう起こすか、と腕を組んだ。
普通に起こす?いやそれはつまらない。
じゃあいたずら?と考えてふと小さく開いた唇がヴォルデモートの目に入った。
のしかかるように覆いかぶさり、唇を重ねて先ほど自制した本気の口づけを思う存分やろうと少し体重をかける。
角度を変え、吸い付くとハリーの瞼が震える。
もう起きるな、とヴォルデモートはワンピースの上から小ぶりな山に手をのせ、もう片方の手で裾をたくし上げる。
ぼんやりと目を覚ましたハリーははっと目を開くと突っぱねようとして腕を回す。
夢中になるハリーにヴォルデモートは何も言わずに体をなで上げ、頭に手を添えてこれ以上ないぐらい深く口づけた。
顔を真っ赤に染め、体を震わせるハリーにぞくりと高揚感を味わうヴォルデモートは至近距離で緑色の瞳を見つめる。
ハリーもまた赤い目を見つめると与えられる愛撫に回した腕に力が入る。
とんとんという遠くで聞こえるノックの音にヴォルデモートは体を起こすと、乱れた服を整える。
なんとなく顔を会わせ辛くなり、起き上がったハンナもスカートの裾を直し、顔を真っ赤にしたまま俯く。
「随分と早いな。喋れなくする薬であれば治すすべはあるだろうと、その手の知識が深いものを呼んだ。」
こっちにこい、ととなりに部屋に移動するヴォルデモートにハンナは目をしばたかせ、慌てて眼鏡をかけるとなんとなく感じ取る嫌な予感にそのあとを追う。
座っているようにと扉に背を向ける形で座らせると、ヴォルデモートはその前に水の入ったコップを置いた。
様々なことがありすぎて喉が渇いていたハンナが水を飲むと、ナギニがヴォルデモートの腕に這い上った。
「先ほどの手紙の件で伺いました。」
水を飲んでいたハンナは突然聞こえた男の声に飲んでいた水を噴き出し、激しく咳込む。
少女の横で悪戯が成功したかのようにご機嫌なヴォルデモートに男は何も言えずに黙りこんだ。
かの有名な闇の帝王と…髪の短さから少年かと思うが服装をみて少女と判別できる姿の組み合わせ。
いったいこの闇の帝王は何をやらかしたのか…。
嫌な予感全開で指示を待つ男はひとしきり咳込んだ後ろ姿に見覚えがある気がして思わずじっと見つめる。
「早かったな。ロンドンの路地でノクターン横町の輩に薬を飲まされたらしくてな。俺様の事を知っているようであったし、とりあえず連れてきたはものの声が出せないと言うことでその解毒薬を作ってもらおう。」
とりあえずねぎらいながら話すヴォルデモートの言葉とその表情的に嫌な予感がどんどん膨らむ男はそういうことでしたら、と言おうとして、勢いよく振り向いた少女の顔に言葉が詰まって咳込む。
そこまで予測していたらしいヴォルデモートのにやにやとした顔をにらみそうになり、代わりに驚きと様々な感情が混じった少女を睨みつける。
「ホグワーツの生徒らしい。名前はハンナと。もっとも偽名の可能性があるがな。おそらくグリフィンドールの生徒だろう。」
「さようで…たしかにホグワーツのグリフィンドール生と見えますな。」
ヴォルデモートの楽しげな顔で危惧していた生徒であることはわかりきっている男…スネイプは顔を赤くしたり青くしたりと騒がしい元少年の顔をみて苦々しく頬がひきつる。
「何せ声が出ない上に口元を見ようにもすぐ顔をそむけてしまうので口の動きで見るわけにいかないのでな。」
あわあわとする姿にヴォルデモートは無意識に目を細めた。
顔を合わせないのもそうだが、そもそも唇の動きをみる前に何故だか体が動いてふさいでいる気がする、とヴォルデモートは大きな溜息を吐いているスネイプに目を移した。
「詳しい話は本人に聞け。俺様は用事を済ませてくる。」
面白い、とヴォルデモートは席を立ち、部屋に二人を残すと蛇の姿になって屋根裏へと隠れる。
隙間から下をのぞけば遠くでナギニが閉めた扉の音を、自分が立ち去った音と考えるスネイプは窺っていた様子で組んでいた腕をほどき、これ以上ないほど深い溜息を吐いた。
「それで?初めから説明してもらおうか?」
「“なっなんでスネイプ…先生がここに!?”」
辛うじて見えるハリーの唇の動きで目の前の男に驚いているのがよくわかる。
呆れるナギニをしりめに少し様子をみるか、と天井から様子をうかがう。
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